先生。何歳だろう。たぶん45歳くらいかな?自分より年上の男の人って歳ぜんぜんわかんない。
すごくいい匂いがする。近くに来た時だけわかる。洗剤の匂いだろうか。
先生に相談していたら、「どうしようかなぁ」と言いながら先生がポケットからタバコの箱を取り出し、慣れた手つきで包装フィルムを外した。私もぼんやりと緑のマークを見つめながら話し続けた。前の上司がタバコ臭かったのは許せないが、先生が外から戻ってきて匂うタバコは妙に心がざわついた。
出入り口のゴミ箱に緑のマークの空箱を見つけたときも、ここに来たんだと、思った。
見学した先生のガイダンスで内容に飽きたので、明日の授業の内職をしていた。時間がかなり押し、何度か腕時計で確認した。説明が丁寧で長い。窓に目をやり、いかにも学校の先生って感じ、と思った。
そのあと先生が私に、僕の話くどかったかな?みんなに伝わったかな?と聞いてきた。そんなことを聞かれるとは想定外で困った。私は余り聞いていなかった。生徒の様子も見ていなかった。分かりやすかったと思います、と答えた。先生は無言で微笑んだ。
先生は怖い。先生はどんなことがあってもうろたえることなく微笑んでいた。私に対しても、いつも微笑んでいた。計算してきっかり10%だけ、他の人より微笑んでいた。緊張を解かせるモードで運転中と言わんばかりだった。
先生は、手作りの品を持ってきたことがあった。今度作るよと生徒と話していたのだが、ある日本当に持ってきて私にもくれた。可愛らしい包装だったので、奥さんに作らせたのかなあと思った。後日美味しかったです、と言うと、作った時の様子をにこにこと話してくれた。本当に自分で作ったみたいだった。色々謎に思ったが、結局触れなかった。
不思議だった。私には彼氏がいて、先生には家族がいて、私と先生は20歳くらい歳が離れていて、それでも、この慕わしい気持ちはなんだろう。