2015-03-29

人生初めての民宿は、 大叔母さんの家の匂いがした。土間の懐かしい匂いだ。部屋数は普通の家にしたらはるかに大きいし、給食室のエレベーターっぽいもの廊下にあるけど、ここは他所の人のお家なのだ旅館ではないのだと民家の匂いが教えてくれる。

家の人に案内されて、二階の部屋へ。

案内してくれる人の話が、半分くらい聞き取れない。行く前に一方を入れた時は電話口だからと思ったが、ここまでくると俺でも気づく。訛りなのか早口からなのか。電車バスを乗り継いで6時間バスのあんちゃんとテレビアナウンサー標準語だったのだが。。

温泉で旅の埃を落とし、畳部屋から襖続きになっている窓側の洋間の椅子うつらうつらとしていると扉の向こうから声を掛けられた。夕食の時間になっていた。

田舎料理ですから

しきりに断る女将さんの料理は美味しくて、そして食べきれないほどの量があった。

おひつに入ったご飯がどう見ても四合をより多いのはご愛嬌

どれから食べようか迷って、少しづつ口をつけるうちに、レンコンの歯応えからふと祖母の手料理を思い出した。

ここの人はハレの日をどう思っているのだろう。

料理を次の三つに分けてみた。

昔の人にとってのご馳走。

カニ、刺身携帯燃料で温める蒸餃子。

日常で食べるもの

天草の酢の物やネギたっぷり入ったお味噌汁おひつに入ったご飯。

郷土料理

赤目鯛の煮付け。めちゃくちゃ甘い。頬っぺたが落ちそうなほど甘い。

あ、これもご馳走だわ。

和食を作れる人間が周りにいないので、週一で大江戸屋の魚の煮付け定食外食して舌が慣れた身としては、この甘さが顔が綻ぶくらい懐かしい。いや、本でしか知らない懐かしさだから、これは疑似体験なのだろうけど、2015年の今体験できると思わなくてひどく可笑しい。

食事の後、温泉に浸かって部屋に戻ると、下げられた配膳の代わりに甘い煮付けの匂いがまだ畳部屋を漂っていた。

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