2015-03-15

眼球

僕の彼女眼鏡っ娘だ。ちょうど映画『私の男』二階堂ふみ氏みたいに。

僕はそういうところが好みなのだけれど、彼女は分かってくれない。

眼鏡なんてカッコ悪いじゃない」というのが彼女の言い分だ。

「そんなことないよ。とっても可愛いよ」と言うと彼女は言う。

「それは外面から見た場合の話でしょう? 眼鏡はとても不便なのよ」


ある日、そのことで言い争いになった時に「じゃ、眼球を交換してみる?」

と言って、彼女は僕のコメカミを押さえた。途端に視界が揺らぐ。

彼女自分コメカミを押して目玉を取り出した。そしてそれを

僕の目の中に入れる。接続には何とか成功したのだけれど

僕の視界は何ひとつとしてくっきりと見えない。


「どう? 近視と乱視現実が分かったでしょう?」

そう言って彼女は持っていた眼鏡を僕に手渡す。「これで世界を見なさいな」

僕は眼鏡を着用する。サイズが合っていないのでいささかきついけれど、

観てみると視界がくっきりと見える。部屋の片隅に置かれていた

アナログ時計の針の動きまではっきりと見える。


そんな彼女が言うんだ。「あら、眼鏡を掛けた貴方って結構イケてるわね」

そう言われたので、僕は彼女の眼球をそのまま装着したままで

暮らしている。「メガネ男子って今トレンドなのよ」と言われたので

僕は自分用の眼鏡を作ることになってしまった。やれやれ、と僕は思った。

彼女は僕の眼球で思う存分世界を堪能しているんだろうな、なんて。

  • 「そんなことないよ。とっても可愛いよ」と言うと彼女は言う。「それは外面から見た場合の話でしょう? 長い髪はとても不便なのよ」 「じゃ、髪の毛を交換してみる?」とは言わ...

  • メガネが格好悪いと思ってる人はコンタクトにするよね…

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん