電車では打ち合わせに間に合わずたまたま拾ったタクシーが、ぺらぺらとよく喋る運転手で、
天気悪いですねーとかそういう他愛もない会話をしてたのだが、いつのまにか、なぜか運転手が自分語りをし始めた
現役時代は信用金庫に勤めてたんです。都心部の某支店に配属されてねぇ。お客さん知ってますか?昔はね全部そろばんで計算してたんですよ?
女の子は8時までしか働いちゃだめだったんだよ、だから男ばっかりで遅くまで仕事してねぇ。
初任給は2万円だったんですけどね、いま思うとすごい安いね、でもねぇ毎年の昇給で倍になっていった、ボーナスは15カ月ぐらいあった。
今は年金をもらっているけれど、月の収入が年金と合わせて40何万円になると損になるから、週に2回だけタクシーの運転手で小遣い稼ぎをしてるんですよ。
お客さん、バブルの頃はそりゃーすごかったですよ、毎日会社のおごりで上司に誘われて飲みに行ってねぇ
いや、お前の身の上話にはこれっぽっちも興味ねーよ、と思って、適当にうってた相槌をストップしてもべらべらと喋り続ける。途中から腹が立ってきて言い返したくなってきちゃって
毎年2倍ずつ昇給という話のところでは
「へぇインフレ率凄かったんですね。奥様やりくり大変だったでしょうねぇ」
ボーナスのくだりでは
「私が社会に出た時はすでにバブルがはじけてたんで、全く想像できないですねー」
月の収入が40何万円のくだりでは
「今どきの若い子なんて本当にやりくりが大変そうで、後輩の話を聞いてても可哀想になっちゃうんですよね」
「私たちの世代なんて年金貰えるか分からないですからねぇ…。上司もバブルの恩恵は大して受けてない世代だし、会社で年金の話出たりしますけど、暗くなっちゃうばっかりですよー」
「そんなにたくさんあるんだからどんどん使って景気回復させてくださいねー」
先輩にさそわれて飲みに行くくだりでは
「私なんて後輩の愚痴を聞いてたらついついお昼おごらなきゃってなりますよー」「今はいつでもどこでもタクシー捕まえられるのが楽ですわー」
だんだん口数が少なくなってきたので
「私、超氷河期で会社に入るのにも苦労した口ですからねぇ…昔だったら「ただ真面目」なら務まった仕事は、今は全部機械がやっちゃうんで、昔は良い仕事に付けたような人でも今だったら無理でしょうね…」
最後に「いやー私、新入社員になって最初の仕事が、不良債権になった不動産の情報を集めるって仕事だったんで、
銀行さんとか小さい信用金庫とか回りましたよ。担保価値の20倍の借入残とかありましたよ、笑っちゃうばっかじゃないのって」
さすがにそこまで言ったら、ようやく黙ったわ。
自分の身の回りは、家族や教師、職場の上司先輩も含めて「老害」ライクな人がいなかったもんで、心底びっくりした&腹が立ったわ。