2014-10-15

ホームレス時代の思い出


最近台風騒ぎで思い出したことを書く。

昔、ドヤ街のようなところで、半ホームレス生活をしていたことがある。

雨風しのぐのも一苦労だった。雨の時は大抵、橋の下段ボールハウスうずくまっていたもんだ。

ある台風とき、俺がいつものように橋の下段ボールのなかから空を睨んでいると、真っ赤な服の女が橋の下に飛び込んできた。

ほぼ、有り得ないことだ。

当時は今程治安は良くなかったし、そもそもドヤ街にああいうすっごく目立つ真紅の服に包まれ若い女なんていないものだった。

いつもの俺なら無視するところだったが、スケベ心が出たのかも知れない、段ボールに寝転がったまま声をかけた。

「そんな格好では、襲われっぞ」

赤いコートの女は、怪訝そうにこちらを眺めた。

俺は、アル中で震える手で、拾いたての75Lゴミ袋を差し出した。

「これでもかぶって、ここらから出た方が良いんと違うか」

たっぷり数秒はたったと思う。女はゴミ袋をもぎ取ると、

あなたアルコール依存症ね』

と言った。

俺は曖昧に笑ったと思う。そのままひっくり返って寝てしまった。図星をつかれたのが恥ずかしかったのかも知れない。

空が晴れてから、目を覚ますと、女はとっくに消えていて、俺の枕元にドブロクがおいてあった。

あの女が置いていったのだろうと、当時は思った。

だが今は、あの女がドブロクを置いていったのでは無かったに違いないと考えを変えた。

当時は気づかなかったが、今にして思えば、あの赤いコートWHO螺旋監察官の赤コートだ。

人類健康を守る螺旋監察官が、ドブロクなんて違法嗜好品を持っている筈が無い。

ひょっとすると白昼夢だったのかも知れない。当時はアル中だったからな。

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