2014-10-04

従軍慰安婦”の給料を同時期の公務員比較する理由

強制連行だったのかどうかという話はここでは置いておくが、強制連行だったにせよ自由意志での志願だったにせよ『無給ではなく、給料が出ていた』という事実については衆目一致するところである

ではその給料はどの程度のものだったのか、という比較についてよく用いられるのは小学校教師か巡査初任給である

「なぜ公務員とばかり比較するのか不明である」と某所で書かれていた(そして実は、その『某所』がどこか忘れた)ので、その理由を書こう。

1.当時の日本で最も多いのは農民自営業者である、が……

 農民自営業者収入というのは天候や景気による変動が相当に多い上、必要経費などについて家内で処理される部分が多く、実態が把握しづらい。これは現在でも同じである

そういう理由で、『当時の一般的農民収入比較』というのは難しいのだ。出来れば、『毎月決まった給料を受け取る人』が良い。

2.”大卒”の価値が違う

 じゃあ大卒サラリーマン比較すればいいか、と言うとそれも違う。いやまあ、現在経済情勢で大卒正社員になれる人は少数で非正規雇用の方が多いだろう、という話は抜きにしてもだ。

人口の5割弱が大学に進学する現在と、人口の5%しか高等教育機関に進学していない戦前(旧制高校[現在大学前半の2年間]、実業専門学校などを含む)では

大卒サラリーマン価値比較にならない。戦前大卒というのは多くが公務員(現在の一種に相当するあたり)への就職が中心で、残りも三井三菱などの財閥本社に勤務するような、本当のエリートだった。

3.『定額の給料で働く人』『戦前でも戦後でも、相当の人数が必要だった職』は何か?

 となると、事務方ではなく現業公務員適当になってくる。それも、福祉国家化に伴って増えたような職ではなく、本当に近代国家ならある程度の人数を必要とするような職は何か?

となると……。結論としてはやはり、「小学校教師」もしくは「巡査」になる。何せ全国にたくさんの人数が必要なので『エリートしか採用しません』では人数不足になるから

社会でも『平均よりは若干上かもしれないが、エリートとまでは行かない』位置づけになるという点で戦前でも戦後でもおおむね共通している。なお、戦前日本小学校進学率は日露戦争後の1907年には99%となっている。

(ちなみに戦前小学校教師になる方法制度に多少の変遷はあるが、おおむね尋常小学校→高等小学校師範学校という進学ルートになる)

まあ、軍票で払われていて戦後紙くずになったとかそういう部分は別として、『額面を比較する上では』公務員比較するのはある程度妥当だ。

4.実際に換算してみた

http://chigasakiws.web.fc2.com/ima-ikura.html

http://www.geocities.jp/wiz_emerald/bukka.top.htm

上記リンクの上によると、昭和6年には小学校教員初任給50円であったという。現在だと地方による差もあるがおおむね22万円だろうから、とりあえず昭和初期の1円=現在の5000円として換算してみると

[サービス関係]

散髪代:40銭(2000円) 週刊朝日12銭(600円) 山手線の初乗り:5銭(250円) 地下鉄上野浅草10銭(500円) ハガキ:1銭5厘(75円) 新聞定期購読一月:1円(5000円) 上野動物園:大人10銭(500円)、子供5銭(250円)

[食品]

三等米を一斗(≒15kg):45銭(2250円) 盛りそば1杯:10銭(500円) 二等酒を一升(1.8L):1円80銭(9000円) 小麦粉100匁(375g):7銭(350円) 赤味噌100匁:7銭(350円)

[家賃宿泊]

東京での4畳半一間+2食付きの下宿代:16円50銭(82,500円)  東京府による簡易住宅(6畳間+4.5畳間の2間)の家賃:6円~9円50銭(30,000~47,500円)  湘南旅館宿泊料・1泊2食:5円~10円(25,000円~50,000円)

宿泊費と酒は高いが家賃は安い目。あとは現代の我々と比べても、数割はともかく桁が違うような誤差にはなっていないと思う。

  • 「比較対象として公務員を選ぶことについて、誰かも覚えていない人が批判していた」から、その点だけは反論するけど、慰安婦の収入自体についてはなにも述べず、換算もせず、リン...

  • 現在の経済情勢で大卒で正社員になれる人は少数で非正規雇用の方が多いだろう いや、正社員の方がずっと多いだろ…と思ってぐぐったがとりあえず http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07056_X...

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