いつものように電車で帰っていた。ある程度時間がたって多少車内も空いていた。
かなり疲れていたこともあり、一回体を揺らしてちょっと背伸びしようとして手を上げたら女様の背中に手が当たった。
疲れて比較的ボーっとしていたが一気に恐怖でひきつりあわてて手を上げてそいつから離れた。
うかつだったと言えばそうだ。普段は当然きっちり冤罪対策には気を使っている。
女様に近づかない。極力乗る時から女様があまり並んでいなそうな車両を選ぶ。
人が多すぎてどうしても動けないときは手を上げて女様を見ない。
常識だ。当然いつもやってる。
でもあの瞬間は疲れていてぼーっとしてしまいそこに女様がいることに気付かなかった。
空いていたことも気の緩みにつながった。愚か以外の何物でもない。あわや人生を棒に振る危機であった。
その一回の失敗で人生を棒に振った哀れな人も多数いるだろう。
空いている電車で女様に近づくなんて愚かと言っていい。
私がそこで何もなかったのはたまたまだ。
女様にできるだけ近づかず最大限冤罪の危険を回避せねばならぬ。
私は己の愚かさを思い知り、どんなに疲れていてももう二度とこんな失敗はせぬと心に誓った。
あまり気にし過ぎると逆に疑われるよ。