2014-07-23

一人の友人の話。

彼女は私が高校入学してからできた友達だ。

きっかけはもう覚えていないが、私たちは知り合ってすぐに意気投合した。

他の友人はもちろん、家族にさえ言えない秘密も二人でたくさん共有した。

 

私はあまり人に気を許す性格ではない。

だが、彼女のことは心から大切な友人だと思えた。数少ない親友だとも。

しかし、彼女の私に対する感情は私のそれと少し違っていた。

 

少し遡るが、それまで私には恋愛経験というものが無かった。

恋という感情のものがよく分からなかった。

それに加え、恋をして思いを告げたその先にある関係が苦手だった。

周りの友人の話を聞くと、恋人になった相手とは頻繁に連絡を取り、キスや、セックスをするらしい。

私は他人に触れられることがおそらく苦手だった。

友人同士で手を繋いだり、抱き合ったりするのは嫌いではない。家族ともよくスキンシップをする方だ。

だが、自分が相手からそういった類の感情を向けられ性行為に及ぶ想像をすると気持ちが悪いと感じる。

そしてそれ以前に、一人の人間にそうも執着すること自体不思議だと感じていた。

だが、そんな感情に反して、私は嫉妬深いタイプでもあった。

誰に対しても、自分が心を許した相手が他人と仲良くしていることが嫌だった。

幼い頃、家に遊びに来た自分よりも年下の親戚にお気に入りぬいぐるみを触られただけでわんわんと泣いたこともあった。

まり私は独占欲の強い人間なのだと思う。

 

ある日、いつものように二人で話をしている最中彼女告白をされた。

彼女は私のことが好きだと言った。

 

突然のことで多少は驚いたが、納得している自分がいた。

彼女の気持ちに薄々気づいていたからだ。

例え自身恋愛経験がなくとも雰囲気で察することはできる。

彼女自分のことを時折熱のこもったような目で見ていることは知っていた。

私はそれに気づかないふりをし続けていた。

 

私はどう答えてよいものか迷った。

私の中に彼女に対する恋愛感情はなかったように思うが、私は彼女となら交際をしてもいいと思っていた。

しか彼女とも、キスや、セックスは出来ないだろうという思いがあった。

彼女がそういった行為自分に求めてきたとき、どうすればよいのだろうと不安になった。

そしてもう一つ、私と彼女の思いのずれが彼女を傷つけてしまうのではないかということを恐れていた。

いくら自分が思おうと相手から同じだけの感情が返ってこないというのはつらいことだと思う。

その結果交際を解消することになった場合、私と彼女親友に戻れるだろうか。

私は無理だろうと思った。

彼女は繊細な人だからきっとすべてが元通りというわけにはいかないだろう。

私は彼女を失うのが怖かった。

から、その場では当たり障りのない表面的な返事をした。

また後日、心の準備をしてから改めて話をしようと思っていた。

彼女は何も言わなかった。

 

しかし、日が経ってしまうと私はどう話を切り出したらよいのかわからなくなってしまった。

彼女からは何も言ってこない。私は自分たちがどのような関係にいるのかも曖昧に感じ始めた。

あの日の話を蒸し返して彼女不快に思わないだろうか、もしかしたら既に自分に対する感情は冷めてしまっているのではないか。

色々なことを考えてしまって、私は結局彼女に何も言えなかった。

 

それから少しして彼女恋人ができた。

お互いを大切にし、大切にされ、充実して幸せそうな彼女を見て嬉しいと思った。

 

だが同時に、私は激しい嫉妬に苛まれるのを感じた。

女性同士に限らず、恋愛というのは友情の延長線上にある場合も多いそうだ。

からこそだろうか、私は彼女自分から離れていく生々しい寂しさに襲われた。

自分はもう彼女の一番の友達ではない。

もちろん彼女は私のことを良き友人だと言ってはくれるだろうが、彼女の中の私の存在がちっぽけなものに成り果てたように感じた。

 

そして、私は自分の過ちに気づいた。

私は徹頭徹尾自分のことしか考えてはいなかったのだ。

彼女を失いたくないなどと詭弁を並べ、彼女勇気を振り絞ったであろう告白に心無い返事をしたこと。

きっと私に告白を断られたと思ったであろう彼女は、どんな思いで私への感情を振り切ろうとしたのだろうか。

どんな思いで、私に対してこれまでと変わらない振る舞いを心がけようとしたのだろうか。

私は彼女のことを一つも思いやってはいなかった。

それなのに、彼女恋人ができたことを妬み、まだ自分彼女に好かれているとでも思っていたのか。

彼女いつまでも自分のことを好きでいてくれるなんて、そんな都合のいい話がどこにあるというのか!

 

私は彼女が新たな恋をして初めて自分の醜さを思い知った。

あれほどまでに優しい彼女自分がしてきたことのすべてを謝りたかった。

謝ったところでかつて傷ついた気持ちはどうにもならないだろうが、それでも謝りたかった。

そんなことを思うのと同時に、いまだ消えない自分の中の嫉妬心にひどく吐き気がする。

私はどこまで愚かな人間なのだろう。

 

あれから私は毎日彼女のことを考えている。

彼女に対するこの嫉妬と羨望が恋なのだろうか。

 

このような場所名前も明かさずあなたの思いを記してしまって、ごめんなさい。

あなたの目を見て直接謝れなくて、ごめんなさい。

いつかあなたにすべてを打ち明けたいけど、そうすればあなたともう二度と話をすることも叶わなくなるかもしれないと思うととても怖い。

この期に及んで、まだこんなことを考えてしまう私で、ごめんなさい。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん