2014-04-04

政府発表の政策目標には「画餅」が平気で紛れている。

4月1日に「2020年迄に都内木造密集エリアを解消」なんて見出し記事が流れてた。

荒川区町屋世田谷区太子堂など。大震災時に大規模火災危険性・消火活動が困難)

見出しだけしか読まない人は、2020年に木造密集エリアが「解消される」と解釈してしまうだろうが、

関係者である自分に言わせれば、完全な「見出し詐欺」としか言いようがない。

正しくは「解消するように努力する」、いや「解消できればラッキー」程度のシロモノでしかない。

タテマエは政策目標として「2020迄に解消」と国土交通省は発表するだろう。

しかし、実際に2020迄に木造密集エリアが解消するとは、当の国土交通省が思ってないだろう。

内心、「半分、いや3割が解消すれば御の字」程度の認識じゃないか?

そもそも阪神大震災の時に、散々「木造密集地の早期解消を!!」が叫ばれた。

あれから19年。19年間解消しなかった課題が、急にあと6年で解消する訳がない。

強制収用でもするのか?

いわゆる木密エリアの解消政策に、何か新たな特効薬でも用意したのか?と調べてみたが、

固定資産税減免」という焼け石に水な政策しかない。

本気でやるなら「木密特区には、ドーンと1世帯辺り2000万円の全額補助金を付けます」位の

予算の大盤振る舞いをしないと2020年の木密解消は不可能

また役所の悪い癖で、

「建て替え費用の全額を役所補助金負担する」という思い切ったことはせず、

役所は半額負担するからあなたも半額負担してね」的補助金で、木密解消が進むと思い込んでる。

そういう手法が通用するのは、太陽光発電補助金みたく、「本人がやりたい意欲マンマンな場合」のみ。

太陽光補助金などは、自ら「太陽光を付けたい」という「水を飲む気がマンマンな馬」が相手だから

自己負担数割の補助金効果がある。

一方、木密エリア建て替えは、「水を飲む気がさらさらない馬」に水を飲ませる作業。

自己負担ゼロ」じゃないと、住民は誰もやりたがらない

木密エリア問題点というのは、「不燃化されてない」ということ以上に

「前面道路が4メートル未満で、建替え時にセットバック必須敷地の一部が削られる)」な点。

敷地の一部が削られることで、建物も従前面積が建たない、狭くなる可能性もある。

まり自分土地財産の毀損を伴う訳で、「仮に全額補助金がついても、やりたがらない人が多い」。

「どうしても」となると、「建替え費用全額公費負担」に加え、

セットバック分の補償」まで与えないと動かない。

それこそ

町屋尾久243ヘクタールの不燃化に、総額1兆円を投入する」のような大盤振る舞いをしないと、

2020での100%不燃化という「政策目標」達成は不可能だろう。1兆円掛けても可能かどうかわからないが。

また、木密エリア事情として、権利関係が錯綜してる点がある。

土地底地権者、建物所有権者、借家権者がバラバラ、というのがザラ。

しかも借地上の建物だと、取り壊したら借地権が消滅したりするので、絶対建替えに応じない、というケースもありえる。

2020年迄に解消させるには「このエリアに関しては借地借家法特別法を作る」くらいの荒業が必須になるが、

そういう話は聞こえてこない。

更に、木密エリア住人は相対的年収も低く手元資金も少ない。そして高齢化している。

自分が生きてる間に大地震が来る訳ないから、対策しない」「地震死ぬなら天命」と諦めてる高齢者も多い。

まり木密エリア解消には

1.「カネが掛かる」以外に

2.「自分土地建物が狭くなる」

3.「底地人借地人借家人全員同意必要

4.「住民側がカネがなく、しか高齢化

という4つのハードルクリアしなきゃならない。無理ゲー

先日から木密エリア解消ニュースツイートチェックしてるが、100はあろうか、というツイートの中で、

「これは難しい」というツイートは1つしかなかった。

殆どツイートは、単純に国交省発表の大本営発表を、そのままツイートしてるだけ。

都市防災専門家不動産関係者なら「2020迄の解消は不可能」と気付く筈なのに、誰も指摘ツイートしない。

社会的役割放棄している。

マスコミ国土交通省の画餅の政策目標を無批判に垂れ流し報道し、防災関係者不動産関係者が誰も突っ込みを入れない。

事情を知らない一般人

「おっ、国土交通省が2020迄に木密解消か、国土交通省もなかなかやるなあ」と勘違いして感心するのでは、と心配してしまう。

ただ、今回の木密解消ニュースは、自分業界関係者だったから「こんなの画餅だろ?」と嘘を見抜けたが、

仮に「農水省が2020迄に●●を達成する」「厚生労働省が2020迄に●●を達成する」というニュースがあっても、

農業・厚生畑は素人である自分には画餅を見抜く能力はない。大本営発表を盲信するだけ。

そう考えると、日経辺りの役所表記事は、相当程度「画餅」が混ざっていたんだろうなあ。

関係者以外のトーシローは画餅を盲信しちゃう

本来の日経役割は、役所大本営発表に対して「それは画餅だ」と突っ込みを入れることではないのか?

で、木密解消特区の「切り札」が、「固定資産税減免(笑)

しかし多分、国交省内部では「固定資産税減免が木密解消の切り札になる」と「大真面目」で議論してるんだろうなあ。

議論に参加させられる若手官僚は「こんなの焼け石に水にもならない」と内心思ってるが、正論を吐くKYなことは出来ない

課長だか課長補佐辺りのキャリアが、「固定資産税減免で、オリンピックまでに木密解消ですよ!!」と絵空事言っているのを、

ノンキャリアが空しく聞いている、その光景がよ~くわかる。

というか、言いだしっぺの課長辺りも、本心では

「2020年までに、固定資産税減免程度で、木密解消なんて無理じゃん」と思っているんだろうが、

内心と発言は、キャリアだと往々にして齟齬する。

※でも、実は「国土交通省が2020年という目標を自ら設定」したんじゃなくて、

 「官邸安倍政権側が2020年の目標設定を国土交通省側に押し付けた」気もする。

 国土交通省はむしろ被害者」なのかもしれない。

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