夢は一人で見るもんじゃない!! みんなで見るものなんだー!!
夢が~!!仲間が~!!
・・・と若者が絶叫するさまは一般的な感覚を持つ人からすると明らかに異様なあの光景、批判的な意見が集まるのも無理はない。
どうして居酒屋甲子園に出場する店であのようなマネージメントが行われるのかを同業者として、同じ経営者側として少し考察してみた。
まずはじめに、外食産業で働く人がどういった人達なのかを知る必要がある。
これは実際私が飲食店を起業してみて驚いた事だが、求人を出して面接を行ってみると応募して来る人材は両耳にピアスの穴だらけ、手の甲には根性焼の痕をつけて敬語もろくにつかえないなんてザラ。20代で離婚や自己破産を経験している物も少なくはない。
いままで何十人と面接をしてきたが一番驚かされた事例だと履歴書にひらがなすらまともに書けない応募者もいた。
識字率100%と言われる日本では信じられない話だがこれは事実だ。
外食産業というのは社会のふるいから落とされたいわゆる能力の低い人材が集まる場所なのだった。
1店舗2店舗ならまだ自分の目の届く範囲で運営できるので問題はないが店舗を増やしチェーン化するに従いどうしても店長という役職を作り店舗の運営を人に任せる必要が出てくる。しかし上記のような読み書きもろくに出来ない人材に『あなたの自由な発想で店舗管理をお願いします!』なんて言った所でとんでもないアイデアが飛び出すだけで、現状の運営すらままならず事業として展開出来るはずもない。
もちろん優秀な人材だけで事業を行えればそのようなやり方でも問題ないが外食産業の場合そうはいかない。
ではポエムを唱える居酒屋ではいかにして効率よく人材を管理しているのか?
まず全従業員に対し朝礼で夢、絆、仲間、本気の・・・などという言葉を呪文のように大声で絶叫させる。みんなで大声を出して絶叫していると次第に熱が入り仲間同士抱き合い涙を流す。そしてその熱が入ったまま16時間という長時間労働を強いる。
精神的、体力的にも異常な状態で毎日を過ごす結果、従業員たちは自然と自分で考えるという事をしなくなる。
こうなると恐ろしい事に16時間働こうが休みもろくになかろうが年収250万だろうがもう何をやっても楽しくなってくる。
自分では自発的に夢に向かって邁進しているつもりなのかもしれないが経営者の放つ前向きなポエムに心酔するだけで何に対しても疑問を持たず完全に思考を停止してしまっているのだ。
経営者としては当然その方が都合がいい。事業を拡大させるような戦略を練る、運営の仕組みを作るといったクリエイティブな仕事は経営者もしくは経営幹部だけで行い、現場で働くスタッフはいわば将棋の駒のように自分の思う通りに動いてくれればいい。
能力の低い人材に対して余計な事は考えさせないようにしているのだ。
飲食店を運営し拡大する為には人によるブレは極力なくさなければならない、しかし優秀な人材がなかなか集まらない。
このジレンマがある外食業界であのように一般の人から見るとドン引きするようなユメガー、キズナガー、ナカマガーと絶叫させる手法は実に理に適っている。
社会のふるいから落とされた人材が集まる外食産業にとってこれ以上素晴らしいマネージメント法はないと言えるだろう。
私は起業して以来人材について常に頭を悩まされ、マネージメントの方法を日々模索している。しかしいくら理に適っていようがあのようなポエムを唱えようとは思わない。