2014-01-09

水産庁 クロマグロの漁獲抑制要請へ”の解説みたいなもの

http://b.hatena.ne.jp/entry/www3.nhk.or.jp/news/html/20140109/k10014362801000.html

クロマグロの漁獲抑制要請についての何故この程度なのかざっくりと  

専門分野と言っても語弊がないですが,漁業管理に取り組んでいる人ではありません.  

さて,クロマグロを漁獲抑制水産庁がお願いしているわけで,それに対するはてなの人々の多くの意見が「法律で禁漁しないと意味ないという」意見でした.  

これは至極まっとうで,おそらく水産庁もそうしたいはず.ただ,実際に「禁漁+罰則」にするのは事実上不可能.一番大きな問題は混獲.例を出して考えてみよう.資源比較的余裕のあるカツオ漁をしていて,そのなかにクロマグロが混ざって採れた場合罰則規定があるとどうなるか.間違いなく,漁師クロマグロを海に捨てる.海に捨てても生き返らないし,弱っているクロマグロが生きていけるほど軟な環境ではないから,一度捕ったものを捨てるのは資源保護観点からほとんど意味が無い.なので罰則規定を作っても非常に効果は薄い.禁漁についてもほとんど一緒.クロマグロほとんど同期・同所的に採れるけど,資源量が多いメバチキハダマグロも捕れなくなるのは当然漁師からの抵抗が大きいし,費用効果が薄い.だから,これはの政策事実上不可能.これからも分かるように漁業管理システムの構築と維持は実に大変.漁業者にも高いモラルが求められる.  

じゃあ,水産庁はどうするのがいいのか? 
1,きちんと各都道府県漁協に説明する,  

水産業会はかなり特殊で,近代法の成立以前から慣例法が存在し,現状でも守られているから,末端まで水産庁管理が行き渡るわけではない,むしろ水産庁新参者.それに加えて,都道府県の力も結構大きい.例えば,各都道県に水産試験場があって,発言力はかなり大きい.ここで共通の理解が得られないと,浸透していかない.  

2,クロマグロの生態の解明を取り組む.  

水産資源管理は,クジラもそうだけど,守るだけではだめで,それをどうお金に変えていくかが目標.(究極的に言えば,守る役割水産庁仕事ではない).だから,捕れるところではきちんと捕るというのが極めて重要視されている.ただ,残念ながら,クロマグロはそこまで生態が分かっていない.いつどこで卵を産むかはわかっているけど,そいつらがどこでどう育つかは全然分かっていない.多産卵魚なので,初期減耗が大きいわけなのだが,その初期減耗がどういう要因かまで全然分かっていないから,ここのマグロは獲ったら致命的とか,そうではないとかという判断が全くできない状態にある.というわけで,ここはきちんとした管理体制を敷こうとするなら必要なところではないかと考えている.  

我々の消費者はどうしたらいいのか  

これはクロマグロはなるだけ食べないようにするしかない.メバチキハダも美味しい.あと,クロマグロを無闇矢鱈に重宝がらないような姿勢大事.その意味では,築地の初競りで大間クロマグロが…という報道は,個人的には資源保護観点ではよろしいとは思わない.

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