私がカラオケに行くときはだいたい1人であるが、似たような活動をする人間は似たような時間に活動しているようで、同じような歌を歌う人が隣になることが多い。カラオケは曲の切り替えに十数秒程度の時間がかかるのであるが、そういう時に、隣から聞こえてくる曲に引きずられて自分の曲を決めることがたびたびある。だいたいの場合、隣から聞こえてくる曲とまったく同じ曲を選択することはなく、たとえば相手が1990年のヒットチャートランキングの曲を選択したら、同年のヒットチャートから選ぶような感じだ。そうすると稀に、相手側からも似たような感じで曲を選択されることがある。一種の勘違いなのかもしれないが、そういう時は一体感と微妙な対抗心とが混ざり合って、どこか戦いめいた雰囲気が出てくる。
カラオケは車のような競争と違って勝ち負けは明確ではないのだが、それでも曲と曲の間の数十秒の間に聞こえてきた曲で「うわ、こう来たか!」みたいな気持ちになることもある。勝敗を分ける(と言っても勝敗は自分の中だけの話だが)要素は、私が選択した曲に対する相手の曲の選択の妙だけでなく、相手の曲の選曲順、歌の上手さ(を曲の数十秒の間に感じる)など様々なパラメータがある。
やったことはないが、首都高で自動車の競争をするのはこういう感覚なのだろうか。(湾岸ミッドナイトを読んだ程度の知識しかないが)示し合わせたわけでもなく、直接的な対話もなくそれでもなんとなく通じているような感覚なのだろうか。あるいは2人のキリスト教信者(プロテスタントとカトリック)が聖書の引用だけで互いに異端者認定をするような。そんな、独りよがりで、くだらない遊びをしている。