ホームの向こう側で、室内の明かりを全て消して止まっている回送電車が怖かった。
シルクスクリーンを貼ったように中を見通せないところも、グリーン車の廊下の非常灯のみが点々としているところも。
そう遠くはない昔、不意に消えた室内灯の影で友達の手を握って
ホームに入ったところでほどいたことを思い出した。
手袋のごわごわした感じに、マフラーのしまい場所を思い出しながら歩いていたらいつの間にか家へ。
玄関の鍵を開けて中廊下の明かりをつけると、中扉の曇りガラスごしに
ルーターが赤く明滅するのが見えた。
誰かが奥にいたら、逆に怖い。さっきの電車みたいに。
明かりは人のいるところにしか灯らない。
けれども、自分には久しく忘れていた理だった。
朝は人いきれに疲れて、夜は人がいないことに身をすくめる。
ただただ疲れた。