2013-09-14

世界数字でできている

テレビ番組世界は言葉でできている」が大好きだった。深夜のころに偶然見ただけだったんだけど、とても面白かった。句会のような番組で、下の句を作るように名言を作っていって、誰かが方向性を決めると「ああ、そっちなのね」と言って皆さらにかぶせてくる様が圧巻でとにかく面白かった。オードリー若林さんとバナナマン設楽さんはとりわけ(失礼だけど)カンがよかった。若林さんの場合読書経験から裏打ちされた言葉の山からい組み合わせを選んでくる才能で、設楽さんの場合は、意外な言葉を結び付けることで雰囲気を作り上げてくる才能があったように思う。前述の方向性を作る、というのは若林さんの力で、かぶせてくるのは設楽さんの力だった。大喜利勘違いした出演者が見ていて哀れだったのも印象的だった。そうじゃない、もっとキザに言葉を作り合わせるゲームなんだと気付いてほしかった。

そんな番組ゴールデンに進出した。正直言って不安しかなかった。「24時間残念営業」の店長が言うところの時間帯によって売れる商品が違うのに、深夜の商品をゴールデンに持ってきただけだった。変に変えなかったのは作り手側の矜持だろうか。もう敗戦処理だったんだと想像する。

いい名言には超ニーチェ人形がもらえるのだけれど、ゴールデンで初めて見る人たちには、どうして超ニーチェ君なのか意味が解らなかったと思う。深夜ならその人形はくだらないながらも、仲間内だけでわかるこじゃれた嫌がらせみたいに見えていたのに、ゴールデンだと単に雑な人形しか見えなかった。

やはりそこには先の店長のいう「うちらの世界」があったんだと今になって思い至った。どんな番組も中身が変わっていく。ほこたてだってお試しかだってゴールデンで生き残るというのは、そういうことなんだろう。全然しらない世界だけど気の毒だ。

決して自身を変えることなく、5回で、しかも明確に終わりを示さず終わってしまった「世界は言葉でできている」。番組本は丁寧な編集で、通して読むにはページごとに雰囲気が変わりすぎて辛いのだけれど、ちょっとしたときに手にして、適当に開いたページを読むには最適にデザインされている。名言というのは居合切りのような芸で、続けてみるには向いていないのだと判る。番組も2時間見るにはつらい。好きでも辛かったのだから、まったく新規の人には同じことの繰り返し、しかも笑いなしとどう楽しめばいいのかわからなかっただろう。ゴールデンじゃどう楽しめばいいのかわかっている番組じゃないとだめなんだ。繰り返すけど、それでも番組を変えなかったスタッフには敬意を感じる。

深夜で半年に一回くらいでほそぼそとやっていれば僕はいまだにこの番組を見られていたのかもしれない。いまのフジテレビ凋落というのはこういうところからきているんじゃないかな。

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