2013-01-28

溢れんばかりの愛を

友人らしい友人はいない。恋人もいない。今まで友人らしい友人ができたこともないし、恋人ができたこともない。ぜんぶぜんぶ、俺自身に責任というか、原因がある。でもそれを深く追究したことはないし、これからもするつもりはない。そんな、恐いことはしない。ただただこうして、逃げるように友人も恋人もいない人生を歩いていく。

ももちろん、それで満足なわけがなくて、やっぱり友人も欲しいし、恋人だって欲しい。家族はいるけど、それじゃ物足りない、満たされない。

小学生だった頃、よく二人で話していた女の子がいた。友人と呼べる関係ではなかったと、今では思う。あの頃の俺はきっと、その女の子に淡い恋心みたいなものを抱いていた。だってその女の子くらいだったから。俺とそんなにたくさん話してくれるのは。本が好きな娘だった。もう顔はよく思い出せないけど、名前ははっきり憶えている。その娘と交わした会話も、いくつか憶えている。毎日毎日学校に行って、その女の子と話すのが楽しみだった。そこに愛なんてない。だけど寂しさを紛らすくらいの小さな温もりはあった。

その娘は、程なくして遠くへ転校してしまった。俺はまた、ひとりになった。いや、ひとりではないのだろうけれど、でもやっぱり、自分はひとりぼっちなのだ、と、そんな気がした。小さいけれど大切なものを、失ってしまった。

俺には、勇気も魅力もない。ただでさえなんの魅力もない心も薄汚いような人間なのに、自分から人を避けている。それはなぜなのか、分からないけれど、気付いたらそんな生き方をしていた。

今、俺が一番欲しいのは、遠い昔に一度しか手にしたことのない、寂しさを紛らすくらいの小さな温もりで、もうそれ以上は、たぶんいらない。とりあえず、それだけでいいから、手に入れたい。そうしないと、もう俺は耐えられない。そんな気がする。

最近、街に出て、女の子を見かけたりすると、たまに、そのまま後ろから抱きついてしまいそうになる瞬間がある。そうしてしまったら俺はもう立派な犯罪者なので、そんなことはしないが、でもいつかそんな理性もふとした瞬間になくなってしまうのではないかと思うくらいに寂しい。寂しい。俺は寂しい。さっき、小さな温もりだけで充分みたいなことを書いたけど、それはやっぱり、嘘だ。俺は恋人が欲しいよ。それで思い切り恋人を抱き締めて、人肌の温もりを感じて、それから思いっ切り恋人に甘えたい。俺が落ち込んでいたら、慰めてほしい。嫌なことがあったら、愚痴を聞いてほしい。失敗したら、君は悪くないよと言ってほしい。俺を、俺のことを、溢れんばかりの愛で包んでほしい。

まったく、気持ち悪いし、自分勝手な考えだ。自分に100%都合のいい彼女がほしいだけなのか、と、自分突っ込みたくなる。そうなのかもしれない。きっとそうなんだろう。俺ってたぶん、そういう屑な人間から。でも気持ち悪くても自分勝手でも、それでも俺は恋人に、溢れんばかりの愛で包んでほしい。よく分からないけど、とにかく寂しい。寂しすぎる。それに最近は、寒いし。隣りに恋人でもいれば、幾分かは暖まると思う。まあそれはヒーターでもつければいいんだけど。

ある日突然、可愛い天使でも俺の目の前に現れてはくれないだろうかと、そんな妄想巡らせて、日々をやり過ごしている。

昨日、恋人デートする夢を見た。何故か二人でクレープを注文していた。財布を取り出そうとしたところあたりで、それが夢だと気付いた。でもなんとか財布をポケットから取り出して、中身を見た。お金全然なくて、これじゃクレープ一つ買えない。どうしようどうしよう、そこで完全に目が醒めた。終わり方はともかく、過去最高レベル幸せな夢だった。なんだか泣きたくなってきて、でも全然泣けなかった。ただ俺には永遠に恋人なんてできない気がした。このままひとりで死んでいく気がした。それしかないんなら、それでもいいけど。いいけどさ。でも。でもやっぱり。恋人、欲しいよ。寂しいよ。せめて1日だけでもいいから、恋人がほしい。思い切り甘えたい。1日、恋人役をしてくれるだけで、もう充分なんだ。本音を言えばずっと恋人でいてほしいけど、でも1日だけでもいい。せめて1日、誰か俺の恋人役をしてくれたなら、俺はその日の思い出を胸に抱いて、生きていくから。その日の記憶を、いつまでも、気持ち悪いくらいに、いつまでも、心にしまって生きていくから。だから、せめて1日、誰か、俺に、溢れんばかりの愛を。

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