総選挙の投開票日(12月16日)の夜にTBSラジオで放送された選挙特番(津田大介さん司会)を録音しておいて、1日後に聞いてみたら、社会学者の鈴木謙介さんが「ネット選挙解禁」論に関して興味深い話を、とてもわかりやすく語っていたので、それをテキストにしてみた。以下の文章は、「この国を動かすには?」というテーマに対して、鈴木さんが答えた収録メッセージを書き起こしたもの。
今回の選挙でも「ネット選挙解禁」の話題が取り沙汰されましたよね。「ネットで選挙活動をすることは公示後にできない」というのを解禁しようということで、いろんな動きがあったんですけど、今回も解禁はされなかったということですよね。
これについて思うことなんですけど、そもそも必要なのは、「公示後」にかぎらず日常的に政治の話をする環境作りじゃないか、と僕は思っているんですよね。要するに、もっと政治の話をしたり、もっと政治のことを考えたりする「足し算」の発想で政治を考えていくということが、重要だと思っているんです。
ところが、現状の選挙の規制というのは「引き算」の発想、つまり、「これはしてはいけない」とか、「ここまでやっていい」というような形で「引き算」で考えていくんですよね。
「これ、なんでなんだろう?」と考えると、背景にあるのは、情報が増えすぎてしまうと有権者が選挙や政治のことを判断できなくなるから、適当に間引いて情報を提供していかないといけない、という考え方があるんじゃないかと思うんですね。
でも、たとえば、TPPにせよ、財政にせよ、社会保障にせよ、もはや間引いた情報では判断できないくらい、複雑なものになってしまっている。だから、難しいからできるかぎり情報をシンプルにしてわかりやすくしよう、ということではなくて、逆に、ふだんから政治のことを考える、その情報を「足し算、足し算」していって考えるということが、大事なんだろうと思うんです。
具体的には、たとえば、オンラインで演説したり、政策討論をおこなったり、あるいは、政策解説をする人がふだんからたくさんネットの中にいる、というような状況を作っていくことのほうが、実は「公示後」にネットの選挙活動を解禁するだとか、それを見て有権者が判断するだとか、ということよりも重要なんじゃないかな、ということを感じました。