2012-10-16

読売新聞誤報について一言

山中教授よりも名前が有名になったあのM氏の件についてである

世間の評価は、嘘がバレてから嘘の上塗りをし続け、ただの虚言癖の変な人になってしまった、というところであろうか。

一本釣りされた読売新聞はといえば、「ハーバード大に確認していなかった」とか「肩書きを疑うべきだった」とか、言っているが、少々生物学をかじった人間からすると、最初から相当に怪しい。

しか新聞の内容は要約すると

細胞から独自の方法iPS細胞を作り、心筋細胞分化させ虚血性心筋症の治療した

という話。

おや?っと思う点はいくつかある。

細胞から独自の方法iPS細胞が作れるのか?

山中教授を含め、iPS細胞のもとになっているのは、今までの報告は線維芽細胞や滑膜細胞、どれも結合組織細胞

細胞は内胚葉由来だし、なんで肝臓?という感じが否めない。

しかも、独自の方法

虚血性心筋症の治療

虚血性ってのは、つまり血管が詰まるかなにかで、血が回ってないのが原因でってのが意味なので、治療にねぇ、わからんでもないけど、心筋細胞移植して治るってもんじゃなさそうじゃん。

心筋そのものが原因じゃないんだから

バイパス手術をした上に、それもやった意味なのかな?

しかし、怪しい。

新聞社科学部はなに仕事してるの?

とまあ、素人でも疑問がわいてくる怪しいニュースだった。

誤報反省材料として「ハーバード大に問い合わせなかった」とか「肩書きを疑わなかった」ってのは、科学的な無知晒してるようにしか思えない。

例えば、ハーバード大が「地球は平らだ!」と言えば、信じちゃうのか?

情報の出処、発信者の肩書き以外で、情報の確からしさを精査できないなら、科学部の人間素人となにが違うの?

「そうは言っても、あれはしょうがないよ。怪しかったとしても、絶対に無理という話じゃないだろうし、ハーバード大だったら信じちゃっても無理はない」

と言う人もいるかもしれない。

じゃあ、「iPSでジュラシックパークも」とか書いた新聞社はどうなのよ?

朝ズバ経由の情報だが、北海道新聞にそう書かれていたそうな。

恐竜が栄えた白亜紀は約7000万年前。ジュラ紀は1億5000万年以上前である

DNA永久不滅なら、あんなにまどろっこしく形態学的な分類で鳥類恐竜から進化したことの議論にあんなに時間がかかったりはしなかった。

DNA塩基配列の相同性をみればいいのだから

実際のところ、7000万年というのはDNA化合物としての寿命をとうに超えている。

白亜紀後期の6800万年前くらいの地層から化石化していない組織がみつかり、タンパク質DNA存在するかが期待されている程度である

DNAが残っている可能性といっても、本当に残っているデオキシリボ核酸存在している可能性というだけで、それが鎖場に長くつながっている可能性は限りなくゼロである

断片的につながっている部分もあり、遺伝子配列が読める部分があれば、宝くじがあたる確率以上の奇跡だ。

まして、iPS細胞をつくるとなれば、無傷の細胞がいる。

DNAの並びさえ全て読み解けば細胞がつくれるかもしれないが、そういう試みはバクテリアですら成功していない。

ウイルスでは成功しているがウイルス細胞とは言わないと思う。

そして、前述のとおり、全DNAの並びどころか、断片的な並びすら調べられたら奇跡である

まり新聞社科学部は、アホである

追記

ジュラシックパークの無理さ加減について追記すると

http://japan.cnet.com/news/offtopic/35023012/

マイナス5度でも680万年で消滅する物質を、7000万年も前の地層からどうやって調べるというのか。

この研究だって細胞の中のDNAとして調べた結果が最新の研究なだけであって、DNA化合物としての寿命がそんなもんであるということはずーっと前からみんな知ってた。

  • http://anond.hatelabo.jp/20121016235228 まず、肝臓由来iPS細胞作成が可能であること、山中先生が報告されています。 Generation of Pluripotent Stem Cells from Adult Mouse Liver and Stomach Cells http://www.sciencemag.org/c...

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