2012-06-16

高い知能は生存と繁殖に不利: Satoshi Kanazawa へのインタビュー

2012年6月14日、A.B.筆Prospero, The Economist

Satoshi Kanazawa は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス経営学准教授 (Reader)、

ロンドン大学 Birkbeck College 心理学科の名誉研究フェローを務めている。

80編を数える論文は、心理学社会学政治学経済学人類学生物学などに及ぶ。

Why Liberals and Atheists Are More Intelligent”「自由主義者無神論者はなぜ知能が高いか」 (2010) は、

彼の論文のうち広く読まれたものひとつである

近刊書に “The Intelligence Paradox: Why the Intelligent Choice Isn’t Always the Smart One”『知能のパラドクス:知能的な選択が的確とはかぎらない理由』(2012) がある。

——知能が進化で有利に働くことがあるとすれば、どんなことについてでしょうか?

実は、ほとんどの物事は、知能の低い人々のほうがうまくこなすことができる。

我々の祖先が生きてきた環境において一般知能が役に立つのは、少数の進化的に新しい問題についてのみだ。

  • 文献案内: “The Bell Curve: Intelligence and Class Structure in American Lifeby Herrnstein, Richard J. and Charles Murray (1994)


——我々の祖先には推論をする必要がなかったと?

進化によって、人類は生存と繁殖にかかわる広い範囲の問題を解決できるようになった。

人間がやらなければならないのは、進化によって組み込まれた通りに行動することだけだ。

まり、おいしい食べ物を食べ、魅力的な異性とセックスをすることだ。

一方、少数の進化的に新しい問題については、進化は、一般知能をもたらした。

これによって我々は推論して問題を解くことができるようになった。

進化的に新しい問題は、数が非常に少なく、互いにまったく似ていない。

基本的には、一般知能が必要なのは、頻度の少ないあらゆる大規模自然災害対処するときだ。

  • 文献案内: “Evolutionary Psychology and Intelligence Research” by Satoshi Kanazawa, in American Psychologist; 65: 279-289 (2010)


——現代生活で知能が重視されるのはなぜでしょう?

現代生活では一般知能はきわめて重要だ。

ほとんどすべての環境進化的に新しくなってしまたからだ。

今日我々が解くべき問題、たとえば学校で優秀な成績をおさめること、

仕事採用されること、コンピュータを使ってやることのすべて……どれもが進化的に新しい。

このため、知能の高い人々は現代生活ほとんどすべての側面で卓越する。

ただし、異性を射止めること、子どもを育てること、友人を作ることといった、ある種のもっと重要なことは例外だ。

我々の祖先が頻繁に遭遇した、進化的に見慣れた問題については、知能は優位性をもたらさない。

知能の高い人々は、結婚相手を見つけるのに優れてはいないし、多くの場合劣っている。

  • 文献案内: Gottfredson, Linda S. (Editor.) 1997. “Special Issue on Intelligence and Social Policy” by Linda S. Gottfredson in Intelligence; Volume 24, Issue 1 (January-February 1997).


——問題解決能力に優れていると、通常の本能的行動に関して劣るのはなぜでしょうか?

一般知能は、進化的に新しい問題を解けるように進化させられた。

知能の高い人々は、低い人々よりも、進化的に新しい好みと価値観を獲得することが多い。

10万年前に我々の祖先経験しなかった物事に価値見出し、好むことが多い。

たとえば、知能の高い人々は低い人々よりも左翼であることが多い。

我々の祖先は、現代アメリカ意味において「保守的」、つまり友人と家族の安寧だけを考えていたからだ。

知能の高い人々は低い人々よりも無神論者であることが多い。

進化心理学定説によれば、人類は神を信じるように組み込まれているからだ。

——そうなんですか?

人類は、自然現象の背後に意図を持った何者かがいると考える。

このように人類には、妄想癖が組み込まれているように思われる。

自然現象の背後で何者かが画策していると誤認するほうが、

「危うく誰かに殺されそうになった」など意図的に起こされた出来事が偶然によるものだと誤認するよりも、代償が小さいからだ。

妄想癖のある人は頓着しない人よりも長生きする。

神を信じることはこの傾向からくる帰結ではないだろうか。

知能の高い人々は低い人々よりも夜型であることが多い。

人類太陽がのぼると起き、沈むと眠るように組み込まれているからだ。

知能の高い人々は低い人々よりも同性愛であることが多い。

人類異性愛繁殖するように進化的に組み込まれているからだ。

知能の高い人々は低い人々よりも楽器音楽を好むことが多い。

音楽進化的には声からきているからだ。

知能の高い人々は低い人々よりもアルコールタバコドラッグ摂取することが多い。

どれも進化的に新しい物質からだ。

——薬物中毒は考えの足りなさによるものですよね? ドラッグアルコール中毒は、知能の低い人々に蔓延しているのでは?

知能の高い人々は考えすぎる傾向にあるため、考えを中断するのにアルコール必要だと推測している人もいる。

ただ、ここで言いたいのは、人類アルコールタバコ精神活性作用のある薬を摂取するようになったのは、比較的新しい現象だということだ。

アメリカイギリスでの調査(それぞれの国内の標本調査)によると、知能の高い人々はより多くのアルコールをより高い頻度で摂取している。

——知能の高い人々が、知能の低い人々よりもうまく行動できるとは限らないわけですね?

そのとおりだ。

知能の高い人々はときに愚かな行動をする。

知能の高い人々が好むのは、良いことでも悪いことでもなく、進化的に新しいことだ。

知能の高い男子は(女子はそうではないが)、セックスを厳格に捉えるようになりやすい。

人類は本来、一夫多妻からだ。

セックスを厳格に捉えるのは、男にとっては新しいことだが女にとってはそうではない。

他には、知能の高い人々は低い人々よりも菜食主義になりやすいことが示されている。

人類進化的に雑食が組み込まれているからだ。

犯罪者法律を守る市民よりも平均的に知能が低い。

第一に、犯罪として位置づけられている行動のほとんどは、人類進化史上遭遇した競争における自然な行動だ。

第二に、CCDカメラ警察裁判牢獄といった犯罪コントロールする組織技術は、どれも進化的に新しい。

から、知能の低い人々は、このような事物を深く理解することができにくい。

  • 文献案内: “The Singing Neanderthals: The Origins of Music, Language, Mind and Bodyby Steven Mithen (2005); and “Why Night Owls Are More Intelligent” by Satoshi Kanazawa and Kaja Perina in Personality and Individual Difference; 47: 685-690 (2008)


——知能の低い人々はある種の重要なことに関して優れているとおっしゃいましたね。それはなんですか?

腕のいい脳外科医か、よい父親になるか、選ぶとしたらどちらがいい?

よい会社役員か、よい友人かでは?

知能の高い人々はよい親や友人になるとは限らない。

知能の高い女性は、そもそも母親になることが少ないので、最悪の種類の母親になる。

知能の高い女性の子どもは健康と行動に問題を抱えることが多いということも示されている。

これはおそらく、子をもうけるのが遅いためだ。

——なぜですか?

繁殖成功することは、すべての生物にとって究極の目標からだ。

知能の高い女性は、この進化組み込みに逆らおうとすることが多い。

私の理論では、知能の高い男性もよい父親になりにくいはずだが、データでは検証されていない。

女性は知能の高い男性を好むという推測もあるが、データによるとそうではない。

男性収入教育は、親になる確率に影響しない。

進化で組み込まれた行動について、知能は有利に働かない。

サンテグジュペリが書いた通りだ。

“Voici mon secret. Il est très simple: on ne voit bien qu’avec leur. L’essential est invisible pour les yeux.”

「教えてあげるよ。すごく簡単なことなんだ。心でないと見えないんだ。ものの中身は目では見えない」

訳注大久保ゆう『あのときの王子くん』を参考にした)



訳注:Satoshi Kanazawa 氏の戦歴については 科学の地雷原を走る男:サトシ・カナザワ Satoshi Kanazawa, http://rationalwiki.org/wiki/Satoshi_Kanazawa などをどうぞ)

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