2012-06-08

近代工業部門と半封建的零細耕作との対比,生産水準と生活水準との離反,あるいは伝統文化西洋文明との融合せざる共存,等の指摘の中に,二重構造の発想はすでに存在していたといってよい。しかし,二重階層構造という用語をはじめて用い,人々の関心をこの方面に向けた最初の人は,有沢広巳であるといわれている。雑誌世界》(1957年3月号)に掲載された論文の中で有沢は,神武以来の好況にもかかわらず,低賃金低所得層がますます増えている事実を強調した。そのため,彼の議論全体には,二重構造の解消をきわめて困難とみる悲観的展望の色彩が濃厚である。だが,第2次大戦後の高度成長過程を通じて,規模間賃金格差が急速に縮小し,低所得者層が減少に向かったことは,今ではよく知られている事実である

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