院に進んだ人、逃げた人。
濃すぎる面々。さすがDラン。
一同やっすーい飲み屋へ。
仕事がある人ない人が入り混じる飲み会は話題を慎重に選んでいたような感じ。
ただ、仕事がある人はすごい忙しく、どちらもネットでは比較的ホワイトだという評価のある企業にもかかわらず、サビ残上等有休は指定した日に取らされるという理不尽な環境。職場では自分をよく見せるためにそんな中でもやりがいがあると嘘を付き、そのたまったストレスを飲み会で晴らす悪循環。
それを聞いていた無職ニート一年目の男は「やっぱ働いたら負けだな」と強がってみせるが、「いやホント、あんなの苦行でしかないよ」と目をがんと開いておだてる総合職女。おまえら結婚しろ。
マクロ厨な僕は「女の残業分男に行けばいいのにネ」と軽く流そうとするが「ねー!政治家にでもなって何とかしてよ」と相槌をうたれる。しまった。
教授は同大学の院に逃げた、同じ院の男と結婚予定の女と研究テーマについてうだうだ話している。別な大学にロンダリングした男はタバコを吸いに外へ。
僕はそんなゼミのかつての面々が大好きだが、やはり将来を思うと不安である。こんな空間がいつまでもできるわけじゃないよな、と。
おそらくこのゼミの同窓はもってあと二三回が限度だろう。すでに格差社会を予見させるような人が数人いる。僕はどちらかというと格差の下だろう。
ひとりに必要以上の仕事を押し付け、ひとりは仕事すら与えられない。
押し付けられた人も、押し付けられた割には合わない給与で働かされ、ひとりは給与なんて存在しない。
結婚する男も、結婚した女も、子供は資金が足りなくて創るつもりはさらさらないという。実家に戻りたくもないけど家賃を一人で負担するには辛い。消極的な同棲からカタチだけでも結婚しようかというところのようである。
歪だ。
しかし、是正はされない。
政局の前には、僕らの一票なんて大した価値はない。議員だって、党にいる以上、上の空気を読んで行動してしまう。
負け戦だ。いや、不戦敗だ。
教授を見る。
目線を戻す。
ため息が出た。
タバコを吸ったデキる院生が俺の隣に。手にはカルピスサワー。Dランのくせにポスター発表しやがって。おめでとう、そして滅びろ。
そんな僕は先月自主都合で企業を退職した。嫌気が差したのだ。入社したとたん社内政治に巻き込まれ、新人教育などあってなかった。直感が告げた。この企業は早晩潰れる、できる限り早く逃げろと。そして脱出した。まだ企業は生きている。
「あのさ」
デキ院が話しかける。
「俺、彼女ができたんだ」
お前KIRINだったはずじゃ。
ニート一年目男が総合職女と話しながらこっちを見ている。器用な真似しやがって。
実はアッーだなんて消費されつくした話はやめてくれよ。勃起するだろ//
結局遅刻予定の男はラストオーダーだけ顔を出した。きっちり金は払ってもらうぞ。メシウマ。
教授は完全にできあがって夜の東京の雑踏に消えていった。僕らも解散した。
次に一同会することはできるのだろうか。