2010-11-16

非常に情けなく、恥ずかしい話。

ネットで、学生時代の友人が結婚していたことを知る。

素直に喜びたいのだが、とってもモヤモヤするのだ。

不幸になれ、とまでは思わないけど、幸せになってほしくない、そんな漠然とした気持ち。

我ながら、人として最低だと思う。が、モヤモヤしてしまっているのは紛れもない事実

いたたまれないので、この場を借りてそっと告白させていただきたい。

 

友人、とするからいけないのかもしれない。

中学時代から大学卒業まで、濃密に付き合っていた相手、というべきか。

同性なのだが、あまりに好きすぎて、多感でデタラメ中学時代などはそれを恋愛感情とまで自分で誤解してしまったくらいだ。

大学卒業間際、あることをきっかけに喧嘩になり、それっきり、会わなくなってしまった。

 

そもそも、友達、だったのかどうか。

ヤツはずっと成績優秀で、オタクで、マイペースで、頑固。

絵がうまい小説うまい、と当時の私は思っていた。事実中学生としては上手だったと思う。

「見せてほしい」とお願いすると、同じものを同じ枚数かいてもってこい、と言う。

だから私は小説なんか書き始めたのだし、当時は下手なイラストも必死で描いた。ほんとうに下手だった。

友人複数と交換でリレー小説をやったりもした。いつも私がキャラを殺すと怒られた。

楽しかったのは間違いない。けれど私は、メンバーの中では、いじられキャラ微妙に超越したいじめられキャラだった。

 

ボケ突っ込み、の体裁をとりながら、私が何か言えばいきなり手が飛んでくる。

はじめのうちはちょっと突く程度だったものがエスカレート

こちらが笑っているうちはいじめにならないから、と、私も痛いのを我慢していたけど、

ついに、脳味噌ずれるのが分かるほどの平手打ちをもらったときは、意志に関係なく涙が出てしまった。

さすがにどうかと、ヤツに手紙を書いて渡した。

なんて返ってきたと思う?

自分には、対等な付き合い方というのが分からない。見下すか、敬うかしかできない」だと。

 

要は、ペルソナが強すぎるのだ。

自分キャラ」みたいなものから一切逸脱できず、ただそれを演じることに徹している。

そこを理解してくれと言うのだ。

事実、二人でいるときは手をあげることはない。

他のメンバーが混ざると、見せしめのように叩くのだ。

 

それでもやっぱり、好きだったのかねぇ。

強くたたきすぎるのはナシ、みたいな密約のもと、謝られるわけでもなく同じ関係は続き。

オタク仲間、というのが少なかったからかもしれない。

別の高校に行っても、長電話したり遊びに行ったり来たり。

でも、この頃になると、学校が違うから明確な学力の差が見えにくくなってくる。

視野も広がるし、友人も増える。

私も小説を書くのが好きになって、素人ながら作品と呼べそうなものも作れるようになってきた。

そうなってくると、力関係は変化し始める。

コテコテのドオタクでいるより、好きなものを適度に取り入れたい私と、

中学生のままの精神状態のヤツ。

なりふり構わぬ服装や態度を、こちらがやんわり諭すような場面も出てきた。

 

そして受験

お互い一浪し、ヤツは有名大学の文学部二部、私は芸術系学部の文章創作コース。

こっちは大学課題小説を課され、プロ小説家添削を受けているんだから上達は早い。

ヤツの書いた、あいかわらず中学クオリティの作品の粗もよく分かるようになった。

でも、こき下ろすようなことはしなかった。

こっちはプロを目指そうとしているのであって、趣味で書き続けている人の楽しみを奪ってはいけない、と。

 

この頃になると、家族に次いで親しい大親友と言っていいくらいには気心を許していたと思う。

・・・少なくとも、こちらからは。

あくまで「自分キャラ」のなかでしか行動しないヤツに、私はだんだんいらだってきていた。

とにかく、成長がない。他者から学ぼうとしない。影響されない。

だから、迫ったのだ。本音で付き合え、と。

 

ヤツのペルソナをすべて論破して、丸裸にしてやった。

そうやって逃げるのは怖いからだろう? ほらまた自己弁護に走った、

それは本心じゃないだろう、なぜそう言いきれる?

などとひとつひとつ、ヤツの言葉意味を暴いてやったのだ。

 

思えば私も若かったし、性急だったと思う。

自分はこんなにお前のことを知っているぞ、とひけらかしたかっただけなのかもしれない。

いわば、言葉ずくでヤツの精神強姦したわけだ。

10年付き合っていてはじめて、ヤツは涙をみせた。

初めて本音に触れた、と思った。漠然と、勝ったと思った。

そんな風に思う時点で、私も薄っぺらだったわけだ。

 

それっきり、会っていない。

ただ、私はそのとき予言した。

「そんな風に自分の殻に閉じこもった付き合い方をしていると、幸せになんかなれないぜ」と。

 

それから、約10年。ヤツをネット上で見つけたのは、ほんの数年前だ。

中学時代から書いている小説の続きをHPにUPしていて、

ブログには、仕事をやめて加療が必要なほど激太りし、

精神安定剤オーバードーズしていることが自慢げに書かれていた。

複雑な気持ちになった。不幸自慢は気持ちのいいものではない。

でもどこかで、ほら言ったとおりだ、という思いもあった。

 

一方私は、小説家とはいかないまでもライターとして仕事で文章を書くようになっていた。

信頼も得ていたし、役職をもらって後輩を育てるまでになっていた。

大した成功ではないが、ヤツと比べてしまえば雲泥の差。

HPに設置された掲示板に声をかけるか迷ったが、やめておくことにした。

何を書いても、自慢になってしまう気がした。

 

それからさらに数年。

私は結婚を機に仕事をやめ、家事に専念することにした。

一定の自己実現欲も満たせたし、第二の人生といった感覚の引退。悔いはひとつもない。

ふと、ヤツを思い出した。

正直、自殺しているかも、とさえ思った。なぜか、それだけはやめてほしいと思った。

安否確認のつもりで昔見つけたHPを開くと、ブログが変わっていて、

そこに結婚相手が登場していた。ヤツも主婦になっていたのだ。

 

私が拙い文章力で記事を書き飛ばし、小銭を稼いでいた間に、

ヤツが何を思い、どう変化していったかは知る由もない。

真に心を開ける相手を見つけたのか、

心を開かないことを許してくれる相手を見つけたのか、それすらわからない。

ただ、相変わらず昔の小説の続きを掲載し続けているヤツと、

今の私が社会的に同じところにいるということが、妙にモヤっとするのだ。

 

愛情憎悪も憐憫も、感情という意味では等しいと聞く。

もしかすると、私こそがヤツに対して、一定の強い思いを抱えたままなのかもしれない。

これが片思いなのか両思いなのか、確認する術はないけれど。

  • 親友、夢、笑い、涙。 かつて元増田に息づき、溢れていたもの。 それらは、ある日別れて、ひとりのセミプロ作家となった。 セミプロ作家は小銭を稼ぎ、やがて結婚して専業主婦とな...

  • 何故女性オタクの付き合いはこういう感じになるのかなあといつも考える 性差はあるよねはっきりと 原因がわからないけど

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん