文豪の作品を読んでいると、どんなに教訓めいた深い意味を持つ言葉でも文章構成力がないと価値のないものだと分かる。
訴えたい主張がその時の場面にどう関係しているかはもちろんの事、その瞬間の登場人物の立場と感情、更には彼らの口調や読者がどのように受け取れる余地があるのか(一通りではない!)を全て考慮し、不必要なものを見極め捨ててから話を絞らなければならない。
これらは本来文字として一度だけ書き出され何度も反芻される書物ではなく、口頭を媒体として聞き手と話し手で交互に伝え合うべきものであるが、一番適切でない文書という形で巧く表現する文豪達の能力には凄まじいものがある。
そして書き方にとっては正解なんてないが、その様な傾向が恐らく文体と言われている特徴なのだろう。歴史に名を残している物書きのそのパターンはかなり広く読んでいる者に違和感を与えない。