遠くから眺める何か考え事をしている顔を見ているのが好きだ。最近少しやせたな、と思いながら見ている。
かっこいいと言われるタイプではない。たぶんもてない人なんだろう。でも私は好きだ。
確固たる信念をもって自分の考えた案を話すときのその口調が好きだ。淡々とあまり知識のない私にもわかるように話すときの、ちょっと困った顔が好きだ。そのわかりやすい話の内容が好きだ。
人をからかうときの笑顔が好きだ。太い指を器用に狭い隙間に突っ込んで作業している横顔が好きだ。おなかにうきわが付いていると同僚にからかわれて何も言えなくなってる時の顔が好きだ。
痩せようとあれやこれや努力してでもうまくいかないとぶつぶつ言っているところが好きだ。
遠くから見ている。時々話をすることもある。でも多くは遠くから見ている。背中を向けたままその会話を聴いている。窓ガラスにうつりこむぼやけた輪郭を確認して、まだそこにいることを知る。
どうやったら、たった一言、一言だけでもいいから言葉を交わせるだろう。忙しさにかまけて言い訳してばかりで、いつも遠くから眺めている。
好きだということをただ伝えるだけのことを私はいくつになってもできない。