2010-05-07

ゴル子13シリーズ  「道玄坂は愛のうめき」

ゴル子13は特定の店に所属しないフリーランス風俗嬢である。どの店に出勤するかはゴル子本人が決める。出勤しても出勤表には載らない。出勤しているサインは、店のサイトのどこかにG13型トラクターバナーが張ってあって、店に電話して「G13型トラクターを買いたいのですが」といって初めて取り次いでもらえる。なぜか一般料金の倍の料金がかかると説明され、予約当日までに指定の口座に金を振り込むように指示される。

2010年 東京 渋谷 百軒店のとある雑居ビルB1F

風景な部屋椅子とテーブルとノートPCをおいただけの受付を訪れた客は、ひどくおびえた感じの従業員から大量の注意事項を聞かされる。

「偽名で結構ですのでお名前頂戴できますか?サトウ様、はい、ありがとうございます。これからいう注意事項は絶対に守ってください」

「絶対に女の子プライベートを聞かないでください」

「基本的にお客様は受け限定です」

「何事も女の子の指示に従ってください」

「本番行為は禁止です。本当にしようとしないでください。店もお客様もものすごく恐ろしい目にあうんです。本当にお願いします」

ホテルを指定して部屋を決め、受付に電話すると15分くらいでつくといわれる。15分たって遅いなあと思って時計を見ていると、いつの間にか壁際の暗がりに人影が。かみそりのような冷たい目つきと、並の男よりも高い身長で、通常の倍額を取るのも納得させられるような完璧スタイルを誇るスーパーモデルのような嬢があらわれる。なぜか上等なスーツを着てタバコをくゆらしている。

「お前がサトウだな」

「え?あ、あれ?あの、もしかしてゴル子さんですか?」

「・・・用件を聞こうか」

「あのお、60分コースで、恋人コースでお願いします」

「・・・私は責め専門だ、恋人コースはしない。・・・その程度の調査で、私を指名したのか?」

「い、いえ、違います、申し訳ございません。ぜひあなたの責めを堪能させてください」

「・・・わかった。やってみよう」

「おお、ありがとうございます!」

明らかに地雷嬢との会話なのだが、その威厳に圧倒されてかえって感謝言葉を述べる客。

「ところで、店から私の名前とコース時間を書いた紙をもらっているはずだが・・・」

「はい、こちらに・・・」

急いでポケットに手を入れる客。瞬間、ゴル子の鋭い目がギラリと光る。

ゆっくりだ・・・、ゆっくり取り出せ」

「・・・はあ、申し訳ございません」

意味が良くわからないまま言うとおりにする客。客に紙を持たせて内容を読むゴル子。

「・・・よし、燃やせ

「え?どういうことですか?」

「依頼内容は記憶した。・・・その資料は必要ない。ライター燃やせ

完全に気を飲まれ、縮み上がりながら紙を燃やす客。

以後全く会話もなく、目配せでシャワーを促される客。服を脱ぐ段階でゴル子がまた口をひらく。

「ここで私が服を脱げば、お前が私のことを気に入らなくても料金は返せなくなる。今ならお前が嫌だといえば指定の口座に料金を返金するが、どうする?」

「嫌など思いもよりません。よろしくお願いします」

「・・・わかった。まずお前から先に入れ」

服を脱ぐと想像以上の完璧プロモーション勃起するどころかかえって萎縮する客。かゆいところに手が届く完璧なシャワータイムを堪能する。

「シャワーは終わった・・・。お前から先に出ろ、ゆっくりだ」

バスタオルで体を拭くと、ベッドに仰向けに寝るように指示される。

そしてゴル子によるテクを尽くした愛撫が始まる。客は蛇に睨まれたかえるのような死への予感を感じながら押し寄せる性の快感に飲み込まれ、わけのわからない状態で忘我の境地に陥る。あっという間に逝かされるのかと思いきや、絶妙の力加減で射精を引き伸ばされる。死と性の快感、その二つの狭間でもみくしゃにされる快感は、客が今まで味わったどの快感より勝った。そして射精したときには二度目のタイマーが鳴っていた。

呆然と寝転がる客にゴル子が声をかける。

「さあシャワーだ。・・・まずお前が先に入れ」

シャワーが終わり客がタバコを吸おうと震える手でタバコを探していると、ゴル子のしなやかな手がのびてきて客の口にタバコをくわえさせ、ライターの火をつけた。ゴル子の目には初めてかすかな感情のようなものが見て取れた。己の欲望に打ち克ち、本番要求や嬢の嫌がる行為を一切せずに、きれいに遊んだ客に対するある種の敬意が、その瞳の奥に宿っていた。

客はその瞳の真意を悟って思わず言った。

「あの、次は本指名で入りたいです。こんなすばらしい時間は初めてでした」

「・・・私は本指名はとらない。・・・二度味わいたいと思える男は、そうざらにはいない」

タバコをふかしてつぶやくようにはき捨てるゴル子。その瞳にはもはや何の感情も宿してはいなかった。

そして先に部屋を出るように指示され、ドアのところで振り返るとすでにゴル子の姿はなかった。

客はその場に立ち尽くし、心からの感謝の気持ちをこめてつぶやく

「ありがとう、ありがとうゴル子13!」

ゴル子13 「道玄坂は愛のうめき」 完

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