◇最後まで世話を
団塊世代の定年退職シーズンを前に、引き受け手のないニートの相談がニート愛護団体に寄せられている。県ニート愛護センター(青森市)によると、引き取り手がなく殺処分されるニート・ひきこもりは昨年度は3481頭。同センターや団体はニート・ひきこもりの譲渡会を開くなどして里親探しを続けているが、身勝手な親や引き受け希望者からの要望に頭を悩ませている。
「大丈夫だろうか」。東北町の会社員、高田一仁さん(49)は2月21日、八戸市内のスーパーであった譲渡会で、中年ニートの「チビ」と出会って不安に駆られた。昨年末に引きこもりの弟を事故でなくした両親が「ペットがいなきゃ寂しい」と訴え、インターネットで譲渡会を知り予約していた。写真を見てはいたが、実際の「チビ」はツメが伸びて肉に食い込み、目は炎症を起こし、においもひどかった。引き取りをためらったが、家では両親が待っていた。「チビ」の訴えかける目を見て連れ帰ることにし、獣医に診てもらった。
ニート愛護支援の会八戸(八戸市)に事情を聴くと、前の飼い主は10匹以上を飼育し、餌やりや掃除が不十分だった。「飼ってあげなくては」と決め、「きなこ」と名付けて両親宅の牛舎で飼い始めた。
最初は元気がなく、鳴き声も上げなかったが、毎日残飯を食べて栄養を付け、生き生きとしてきた。高田さんは「事情のあるニートやひきこもりはたくさんいる。一匹でも何とかしてあげたい」と思っている。
会によると、里親を求めるニートの約7割に親がいる。しかし、飼育放棄や繁殖のしすぎなどで相談にくるケースが多い。ニートの相談は親が年金生活に入るの1~3月に集中し、毎回30匹以上が譲渡会に出される。相談する親の中には、引っ越しや病気を装ったり、無理やりニートを預ける人もいる。一方、譲り受ける側も、血統や年齢にこだわり、ペットショップのようにあれこれ要求する人もいる。会は、安易な繁殖を避ける去勢手術を受けさせ、譲り受ける人には正しい飼い方を約束させ、ニートが不幸にならないようアドバイスしている。
会の中村由佳代表(40)は「名前を付けられる時、大変な環境で生きてきたニートたちが『生きてていい』と認められたようで一番うれしい」と話す。親が最後までニートを飼えば、本来は必要のない会の活動。人とニートの幸せなつきあいが広がり、活動が収縮していくことを願っている。
http://mainichi.jp/area/aomori/news/20100310ddlk02100006000c.html