昔の彼女との燃え尽きる思い出がリフレインして、びくびくしてしまう。
なあ、増田どうしたらいい?
昔の彼女と出会ったのは会社の有志の勉強会で、仲のよい先輩に呼ばれて加わった。
勉強会といっても、いるのは僕と先輩と彼女だけで、おもにメーリングリストで先輩の出すお題にあれこれ答えて議論するというもの。話題は最近の売れ筋とか、キャンペーンを打つならどうするかとか、実際に役に立つ内容で、話し合っていたこと充実していたように思う。
彼女は論理的な発想よりも、感覚的なセンスが鋭い人でそれを言葉足らずのなんとか書き表そうとする。それを先輩と2人でフォローをしながら聞き出してくと、けっこう面白い方面から物事を見ていたり、繊細な捉え方をしていて感心してしまう。
この人はすごいな、あんまり社内で目立たないのは、うまくその感じを伝えられないだけなんだと、そのときは思っていたし、実際にそうだった。
3人の議論はとても前向きで、着実に成果が出ていたので、楽しんでいた。
先輩の問題設定の仕方がよかったのか、刺激的な、よい勉強会だったと思う。
勉強会は会社のメールアドレスでやりとりしていたのだけど、急用ができて私用のメールアドレスを伝えた。そうしたら彼女から携帯番号を教えて欲しいというメールがすぐさま飛んできて、伝えたらすぐ電話がかかってきた。すがるようだった。
「あの、助けてくれますか?」
返事もあやふやなうちに話を聞くと、その先輩からあらゆる方法で付き合えという圧力がかかってきていて、どうしたらいいのか分からないという内容。聞けば聞くほどこれまでなんかおかしいなと思っていたことが氷解していき、ああ、そういうことだったのかと愕然とする。
結局の所、その先輩は彼女をむりやりにでも自分のものにしたくてあらゆる手を使っていて、この勉強会に僕が呼ばれたのも、彼女とのコミュニケーションがうまくできないので、僕にフォローさせようとしていたのだと分かる。
さすがに憤慨する。
何件かの証拠を集めて、それでメールで先輩を問い詰めはじめる。
ああ、これは確定的だという証拠が出て、絶縁のメールを送る。
いや、たしか先輩が返事を返せなくなって、そのままになったという形だったか。
彼女とはその後付き合うようになったのだけど、まさか社内でそんな犯罪的なパワハラ&セクハラが行われていたとは思ってもいなかったから、しかも自分がそれに利用されていたのだから、もう社内が信じられなくなる。
全社中でそんな犯罪まがいなことが起こっているのではないかと疑心暗鬼になるし、なによりも彼女を守らなければと必死なる。当然僕の周りの人間関係も悪くなる。
会社の中でそういうモラルハザードが発生するとまずいのは社内秩序がずたずたになるところにあると思う。とくにはれたほれたの話はメガトン級のパワーをあらゆるところにばらまいてしまうわけで、しかもそれが連鎖的に発生していくので、とてもまずい。
罪のない上司に噛みつくわ、僕もあんまり冷静ではない時期があった。
まるで社内中がドラゴンの巣窟に見えるナイトのようなもので、そんなモラルハザードはぜったいに許さないという剣幕で社内を仕事で回っていたような気がする。ふたつ上の上司の取り計らいだったのだろうと思うのだけど、結局のところ僕はなにがあったのかを一切語ることもなく、社内でも不問という空気で徐々に沈静化していった。
彼女は、ちいさい頃に片親を亡くした、典型的な幸薄い印象の女の子で、それでしっぽを振るように惚れられた。
白馬の騎士とでも思ったのかとても熱烈で、僕に合わせるのがうまかった。
僕も彼女と付き合うようになって気付いたことがあって、それは、僕は一種の母性本能みたいなものがとてつもなく強いのではないかということだった。
母性本能というと母親が我が子に献身的に尽くしてしまうことを言うと思うのだけど、男の子が困った女の子を見て、突然ドラゴンに立ち向かう気になってしまうという、そういう男の子の本能のひとつが僕はとても強いのだと思う。
生々しい話をされ、どう思うと言われればそれは、おれの女に手を出すな、で当然あるわけで、彼女にとって世界中がそういう危険に満ちているように思えてきて、いてもたってもいられなくなる。
毎日のように電話をして安全を確かめるし、その電話は何時間も何時間も続く長い電話になっていく。彼女もそうやって尽くしてくれる僕に惚れ込んでいくし、僕と話しているときだけが安全で満ち足りた時間だと思うようになっていく。
そうして、彼女との電話を切るとたちまち不安になり、朝早く同じ電車に乗ろうなんて、そんな話なって、朝に会うようになる。彼女が夜遅いとなると、あわてて1時間も向こうの駅まで迎えに行ってしまう(そして彼女の家に泊まってしまう)。
そうやって、べったりと彼女に貼り付くようになり、彼女はなんて優しいんだろうとますます惚れ込んでいく。あっという間にふたりだけの世界へ直行してしまう。
たしかに、その時期はまるでドラマのような熱愛に身を任せていた。
書き始めたら、そんな馬鹿なと笑われるような思い出がいくらでもあったし、それはたしかに楽しいことであったとは思う。その当時はそんな恋愛が終わるだなんてみじんも疑わなかったし、それぐらいに輝いていたとは思う。
「心配している暇なんてない、もっと今の出会いに感動しようよ」
そうやってふたりではしゃぎあって、つきあい始めてからを指折り数えていた。
でも、世の中にいうように、燃えさかる炎は燃え尽きるのも早いもので、結局のところ4年続いた関係も最後はさんざんな結末となった。
ふたりだけの世界というのは、結局どこかで立ちゆかなくなると、いまでは思う。
君と僕だけの世界の終焉は、それに没頭しすぎて、ほかに歪みをもたらしすぎて、終わっていくのだと思う。
転職をして、仕事が忙しくなり始めて、やはりその歪みが出てくる。
彼女も僕もお互いにずぶずぶに甘えあっていて、お互いがなにかをしてくれないと立ちゆかないところまで来てしまっていた。その頃は同棲をしていて、毎日話し合っていたのだけど、どちらかに余裕がなくなってしまうと、昔のような甘い甘い甘い甘いそんな時間が保てなくなる。
この甘さというのは一種のインフレーションをしていくもので、一度ある一定量の甘さを甘受してしまうと、それよりも甘くないことが我慢できなくなる。恋愛感情依存症とでも名付けるべきなのかも知れないけれど、より強い甘さを求めはじめてしまうのだ。
それでやはり不満が出てきてしまう。
あの頃はあんなにしてくれたのに、好きでなくなっちゃったの?
それは仕事で鬱になり始めていたときで、それでも必死になって彼女に尽くしていたように思う。それでも、やはりひとりの人間には限界があって、お互いにお互いの求めることが負荷になっていってしまう。
だったら、これぐらいしてくれよ。
これは燃えさかる恋愛の罠で、繰り返すようだけど恋愛感情依存症の副作用だと思う。
お互いが生活の中で、それまで以上の甘さを提供できなくなり始めると、それがどんどんと物足りなくなっていき、不満としてたまっていってしまう。ある程度までは無限に甘さをむさぼり合えるのだけど、どこかで限界が来て、負荷となってしまう。
そうやって、甘さだけでなんとか回っていた生活が崩れはじめると、崩壊していくのは早い。
そこまで無理に無理を重ねていて、盲目的に恋愛だけを見ていただけに、それを固めるはずのあわゆるものが足りなすぎているのだ。現実的な部分の帳尻はついておらず、新しく持ち込まれる問題を解決する余力はなくなってしまっている。
結局のところ、崩壊の崩壊までいって、彼女は別れを切り出した。
僕は当時しがみついたけれど、今となっては彼女の判断は正しかったと思う。
あのまま行っても駄目だし、いま戻ってもやはり駄目だろうと、そうは思う。
それはおそらく、燃えさかっていたときの思い出が鮮明すぎて、やはり不満に思うことが出てきてしまうだろうと思うからだ。あの頃はなんのためらいもなく、無謀な火遊びに邁進していた。
お互いの余力なんて気にすることなく、お金だっていくらでも使っていた。
でもそれじゃあ、持たないんだよね、ってそう思う。
こんな話をするのは、4年ぶりに彼女ができたから。
仕事を手伝って貰ううちになんとなく惚れあって、もう彼女のことしか考えることができそうにない。
それでも、同じような結末になるのではないかと思うと、彼女になにか言われたらどこまででも尽くしてしまうのではないかと思うと、その結末を知っているだけに怖い。それは優しいのかも知れないけれど、破滅へ向かってしまう優しさで、自分など全部犠牲にしてしまって愛する彼女のために捧げてしまう優しいであることが怖い。
彼女と出会ったとき、もう彼女のことばかり考えてしまう自分がいて、仕事中にあれ彼女は目の前にいないと思ったときがあった。それで首を横に向けてみると、となりで、ふふーんと笑っている。あーそうか、隣にいたんだ、そう思ってちょっとほっとする。
よく、夫婦は向き合うよりも横並びで同じ方向を見る方がいい、という。
そのときの彼女は横並びで、前を向いてわたしはひとりで歩けると言っていた。
夫婦というのは長続きする男女関係の意味だと思うのだけど、最近向き合いはじめて火遊びをはじめてしまいそうで怖い。
一生がいいんだよな。
そこまで、嫌だ、一生じゃなくちゃ嫌だと思っているんだよなと、ずっと側にいるんだと思っているのだよなと思った。一生僕と一緒であって欲しいって。
この罠、どうしたらいいのだろう。
夫婦って、背中合わせで外の世界と戦っているようなイメージもあると思うんだ。 一人で居たときよりも互いに自分の得意な方位に注力できて、以前より戦い易いのに、総合的に見ると...
ああ、そのイメージはよくわかる。 最近結婚したんだけど、「こいつになら背中を預けられるな」という感じ。 キーワードとしては「愛」とか「情」とかよりむしろ「信頼」。 お互い...
元増田は、どうして彼女に尽くしていないと不安になるのだろう。 多分「相手に好かれたい」が行動の中心になると上手くいかなくて、 お互いがお互いを「好き」だという事が共通認...
http://anond.hatelabo.jp/20100108225732 どんな恋も4年しかもたない。だから、昔の彼女のことは気にすんな。彼女から別れを切り出せたのだから、もう、一人でもやっていける強さを身につけた...