2009-12-16

信じる

年末進行でクソ忙しかったがようやく目処が立ち、久々に定時帰りできた。

ビールもどきを飲みつつ、テレビを見てたたら、チャイムの音が鳴った。

時刻は七時三十過ぎ。

宅急便かなと思い、ドアを開けると若い男の二人組が立っていた。

俺に近い方の男がエホバの証人佐藤だと名乗り、宇宙が誰の為に作られたのかという事を話しにきたと言った。

馬鹿馬鹿しい。

宗教には興味ありません。俺は空飛ぶスパゲッティ・モンスター信者ですから」

「えっ?」

「だから、空飛ぶスパゲッティモスンター教だよ」

冗談のつもりでそう言ったら、後ろにいた男が口を開いた。

増田さんはインテリジェント・デザインを信じてるのですか」

「え、ええ、まぁ」

びっくりした。まさか宗教まっしぐらの奴らからインテリジェント・デザインという単語が出てくるとは思わなかった。

それから、後ろにいた男はべらべらと喋りだして、地球人間が住む為に設計されたとか、人は神を求めてるとかそんな事をしゃべった。

あまりにも熱く語るもんだから、なかなかドアを閉じれない。

数分ほど話して、俺からの険悪な空気を読み取ったのか、そいつはしゃべりすぎましたと言って丁重に謝った。

気づくのおせえ。

それでは失礼しますと言って、そいつらは出て行った。

ドアを閉めてしばらくしてから、あの男が言っていた言葉がふと思い浮かんだ。

「何を信じるのかというのはとても重要だと思いませんか」

その時は適当に答えたが、俺は一体何を信じてるのだろうかと考えたとき、思考が詰まった。

あくまで俺は自分学習してきた事を本当の事だと思って来たが、その根拠はなんだったのだろう。

経験と勘だけだ。

それが恐ろしいほど脆弱な根拠である事に気づく。

三十年弱の経験と勘。弱い。弱すぎる。

鏡を見ると、疲れ切った俺の顔。

あいつらの晴れ晴れとした表情が煩わしい。

何て対照的なんだ。

盲信であろうとも、きちんと自分が信じてると言い張れるあいつらを、ほんの少しだけ羨ましいと思った。

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