ある朝起きて仕事を片付ける。終わらない。ふと振り返ると恋人はいつのまにか目覚めていて、布団の中で携帯をいじっている。
「コーヒー飲もうか?」と言うと「うん」と言う。顔は上げない。私が淹れる。恋人は「ありがとう」と言う。
ある日の昼、「ちょっと疲れちゃったから、ごはん作るの面倒だな」と呟いてみると、「じゃあ外で食べてくるよ」と出て行く。私は一人分を作って食べる。
別の日、夕方に帰宅し、疲労からうたた寝してしまう。起きるともう宵の口もいいところ。遅れて帰宅したらしい恋人は布団の横でネットをしていて、私が起きたと知ると「食事、どうしようか? 作ってもいいよ?」と言う。
お金は恋人の方が持っている。食材は買ってくれるし、たまの外食は奢ってくれる。
家賃は六分の一を一度払ってくれた。
重大なイベントの前日、私は準備で書類とにらめっこになっていた。
「夕飯はお願いしてもいい?」と言ってみたら「怒ってる?」と言われた。
ある日には掃除をお願いしてみた。
「散らかしてごめんね。出てくよ」と言われた。
私の恋人はとても優しい人で、いつも穏やかでいる。