幼い頃の虐待によって心に闇を抱える者に接する。
さまざまな人格障害、子供では稀な統合失調症、解離性同一性障害、何時間も手を洗い続けている強迫性障害なる者もみたことがある。
その多くが15歳未満の子供だった。
その中で性教育は重要な課題であった。性的虐待を経験している子供達の多くは、
・二度とまともな性交渉ができない
・あるいは見捨てられたくないという過度の不安から、やりたくもないセックスを、
などがある。要するにまともじゃないわけだ。
普通に育ててもらっていれば、普通と変らぬ大人になったであろう被害者達。
10代の少女が妊娠したとき、関係者はそろって「人工中絶」をすすめた。
その少女は性的虐待により精神を病み10歳の頃から施設で暮らしていた。
13歳の夏、吐き気と貧血を訴え診察を受けた結果、妊娠5週であると診断された。
彼女は泣いた。父親が分からないことを泣いていたのではない。手術が怖いからでもない。
こんなに無知で幼稚で避妊もできない子供が、なんと命の大切さは理解していたらしい。
彼女が泣きながら腹部をさすっている姿を見た。
「手術」を頑なに拒否し、周りの説得も耳に入れず「産む!」の一点張りだったが、現実は彼女の希望通りになるはずはなく、
手術の日を迎えた。
もともと重度の鬱病も発症していた彼女が、より一層失望感に溢れているのは誰が見ても明らかだった。
「もう二度と、私のような子を増やしちゃいけないよね・・・。ごめん・・・・」
なにも言えない私。
「でも、この子はきっと良い子だから、いつか他のお母さんから生まれてくることになるよね?その時この子は、幸せになれるよね?」
もちろん、そう答えるのが精一杯な私。
いつだって犠牲になるのは弱いもの。だからこのように身をもって知る前に、自分で自分を守る術を学ばせないとならないはずだった。
気にしなくていいと思う。たぶんいつもの荒らしだから。