■古ーション
昔暮らしてた寮には、なんとも豪快且つ陰湿な伝統行事がいくつかあった。新入生歓迎行事でカルチャーショックを受けた新入生が毎年数名、間もなく退寮していた。
色んな行事があるけど、一番インパクトのあった行事の流れが大体こんな感じ。
- 同じ階に住んでる人みんなでどんちゃか酒を飲む。
- 宵になり酔いも回ってきた頃にみんなで外に出て、併設されたもうひとつの寮(男子なら女子寮、女子なら男子寮)の庭へ赴く。
- その庭で一人ずつ三十秒ほどの口上シャウト。その後日本酒を一気飲み。口上は入寮日から連日、夜八時頃に合同練習タイムを設けてみっちり仕込まれる。
- 日本酒を飲み終わったら、建物のすぐそばまで行って「おねがいしまーす!」とシャウト。
- 窓から見ている寮生達がその新入生に水をかける。水の量は一階(一回)あたりゴミバケツに四分の一から半分くらい。それを各階順番にこなしていく。
- 最後に「ありがとうございましたー!」とシャウト。おひねりとしてお菓子だのカップめんだの米だのが各階の窓から飛んでくる。
- それを新入生の人数分繰り返す。先に終わった人は濡れた体のままタオルにくるまれながら震えて待つ。
- 全員終わったら、階のみんなで肩組んで寮歌と階歌をアカペラで熱唱。
- 新入生は芯まで冷え切った体を共同浴場で温め、上級生のおひねり集め係がおひねりを収集、分類して各部屋に届けて終了。
- 水をかけられるときの格好は、男子は半裸、女子はティーシャツにハーフパンツ。
- まだ雪もちらほら降る早春にやるので、毎年何人かが風邪を引く。近年になってお湯入りペットボトルを新入生に持たせるという生活の知恵が浸透したので、数は減ったらしい。
- 水をかける過程は数人まとめて行う(水圧が和らぐため)、湯沸かし器のある階はバケツの水にお湯を混ぜる、等、女子は男子より多少甘めの進行になっている。
- 女子寮では体質とか法律とかでお酒が駄目だという自己申告さえすれば、こっそり水に替えてもらうこともできた。男子寮は不明。
- おひねりは泥まみれになるので、あらかじめビニール袋にくるんで宛先を油性マジックで書いておく。
- 新入生のシャウト以外にも随所で合いの手的な掛け声がそこここから繰り出される。
- かなり騒がしいので、行事の時期が近づくと、近隣の住民に「これから数日後迷惑をおかけします」というチラシをあらかじめ発行していたらしい。
- 寮歌は合同練習の際に口上とともに仕込まれる。曲調も歌詞もかなり暗い。
毎年春になって入学の話題とかちらほら見かける度に寮のことを思い出す。行事のショック感とは別の理由で退寮して久しいけど、今でもやってるのかなあ。怒った親とかそういう外部からの圧力が存在してなければ、今年も誰かが今頃ヘークションってしてるんだろうなあ。
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