2008-03-11

父殺し

カラマーゾフの兄弟』を、ついに読んだ。

さいきん噂の、光文社文庫の新訳版。

誤訳を喋々する向きもあるけれども、

これは本当に素晴らしい仕事だ。

訳者亀山先生には、心から感謝したい。

テーマのひとつは、「父殺し」だ。

実際の血を分けた父親。国家の父としてのロシア皇帝。それに父なる神。

ドストエフスキーが急死したので、書かれなかった続編では、

ロシア的な「調和」がひとつの結論として描かれるはずだったろう、と訳者は推測している。

だが、これは、聖が俗にまみれて、父親と殺す殺されるの相克があって、

はじめて得られる「調和」だった。

わが身にひきかえると、自分は父親的なものに、あまりにも唯々諾々としていたのじゃないか。

親父も、教師も、ついでにいえば国家を象徴する天皇も、

誰もフョードル・カラマーゾフのような悪人じゃなかったから、

ぬるま湯のような関係にいたが、本来、父は殺されるべきものではなかったか。

俺は殺すつもりで向かっていかなければ、生きたことにならないのじゃないか。

「調和」に到達するのかは分からないけれども、明日からは戦いをはじめたい。

でないと俺は、自分の息子にとって、「殺しがいの無い腑抜け」になってしまう。

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