2008-01-16

ヘンリー・ダーガーをまるで異質な人間の様に扱うことは間違い

だからそういう扱いは今すぐやめろ。

まず彼はどこにでも居るような平凡な人間です。強いて言えば、ほとんど一生くだらない仕事をし、くだらない安アパートで過ごした非常に可哀相な人です。周りの対応は彼に対してもう少し何とかならなかったのでしょうか。非常に残念です。

勿論そういう貧相な生活だったので、つまらない仕事の後は独りで部屋に引きこもって安い紙に自分の空想に基づいた絵を描いたり写真をポトペタしたりしてました。それくらいしか術がなかったんです。

で、重要なのは貧相な下に置かれて、自分の趣味だと胸を張って言える様なまともな生産的活動を見出す事が誰にでもできるかどうかです。普通はできませんよね(そういう意味では、ヘンリー・ダーガーは非常に優れた手段模索才能を持っていたと考える事ができます)。

彼の作品は、彼の晩年学校美術を教えている人間が部屋を引き取るまで知られる事はありませんでしたが、彼はどうやらそのまま自身の生涯が消えうせると共に自分の残した作品も誰にも知られる事なく消滅してしまう事を望んでいたようです。

部屋を引き取った教師が彼の作品を評価した事について、彼は非常に残念がっていました。そりゃそうです、人並みの生活ができればこんな人様に見せられない様な自己満足の塊に時間を費やしたりはせず、もっと他人に認められる様なものを作ったに違いありませんから。

つまり彼の作った異質(といわれている)世界観や作風の裏には常に貧相で平坦で人間味のない苦の側面があったに違いないんです。誰でも苦の原動力から何かをつくろうと思えば何らかの形で倒錯したものが表現されて然るべきです。だから彼はこんな自分専用のまともでない作品を他人の目に晒される事を恐れたんです。恥ずかしいですからね。至極当然の事です。

量的に多少違っても、これは誰にでもあることなんです。彼だけを特別扱いしては彼が可哀相です。

  • あなたは彼が好きだからそういうの? 彼については全然知らないけど、本人はとても満足して生を終えたような気がするけどなあ。あなたの説明を読む限り。 プロなら他人に認められる...

    • 好きかどうかなんて関係ありません。彼の、自身の中に秘められた『見られたくないもの』が世間へと晒された事が残念に思えてならないだけです。

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