とても面白い。なるほど。
確かに、俺の働いてる会社でも「ITのスキルは研修でカバーするので不要です」とか言ってるな。「プログラミングの経験と実績がない人や、数学の基本的な知識がない人はお断りです」と言ったら、逆に優秀な人がどっと押し寄せるかもしれん。
それはさておき。
俺が思うに、問題はすでにIT業界(というかいわゆるSI業界)はリンク先やそのリンク先でも語られているようにすでにコモディティ化しつつあるにもかかわらず、ホワイトカラーとブルーカラーが明確に分離されてないことだと思う。
俺の意見として「そうした方がいい」と言っているわけじゃなくて、「そうなってないから問題が発生しているんだ」と思うだけの話です。
ほとんどの産業では、黎明期には職人が設計から製造までやっていた(んだと思う)。
SIだってそう。昔は、つまり討論会に出てるようなご老体たちが現役の頃は、一人で設計もコーディングも運用もやっていた。だから彼らにはプライドもある。努力もしたんだろう。
でももう今はそういう時代じゃない。分業が進み、レベルが低い労働者でもできる仕事が増えた。それは、単純に昔のSEのほうがすごかったというわけではもちろんない。昔のITは単純だったから、それができたということろが大きいと思う。感覚的にだけど、この10年でだって、システム構築全体で必要となるスキルの量は、5倍くらいに増えてる気がする。30年前と比べたら、30倍くらいになってるんじゃないかと思う。
だから、今システム全体を設計する人には、昔のSEよりももっと高度な知識が求められる。設計者には開発の知識も求められる。でも、そういう人はほんの少しでいい。残りの人は、単純労働者でいい。
自動車産業でも一緒。昔は、少人数の技術者が、設計して製造をしていた。でも、どんどん産業が成熟すると、役割の分担が進み、製造に求められるスキルが低下してくる。逆に、設計全体に必要なスキルは増えてくる。設計者と開発者の
今のSI業界は、設計者と単純開発者を一緒くたに採用している。「SE」という一つの呼称で。
だから、優秀な設計者が単純開発者のメンタリティやスキルしか持たない人と一緒くたにあつかわれて、ダルイ環境に「やってられるか」と嫌気を指し、優秀な人と一緒に設計も開発もやれるベンチャーに流れたりする。
一方、単純開発者はほんとは単なる単純作業しかできないのに、過剰に高度なスキルを要求されたりして、疲れ果てたり、燃え尽きたりする。そして、単純開発者なのに給料だけは高いから、インド人や中国人に職を脅かされたりしてしまう。
もちろん、実際に業界で働いてみると、大手のSEと下請け・孫請けのSEには待遇や業務の内容や求められるスキルに大きな差があることがわかる。でも、それは外からはとてもわかりにくいし、内部的にも明確に定義されたものじゃなくて、結果としてそうなっているだけなものだと思う。
また自動車産業の話になるけど、自動車産業はそうじゃない。大手自動車メーカーの設計者とライン労働者は、全く別の職種。自動車メーカーの設計職になろうと思う人は、大学である程度機械工学(や関連した分野)を学んだ人がほとんどだとおもう。ライン労働者の人の苦労話はよく目にするし、それは社会的に保障してあげる仕組みをつくらないといけないとおもうけど、それはまた別の話としてここでは置いておいて。設計者とライン労働者を、一つの職種として採用したほうがいいと思う人は、あまりいないんじゃないかと思う。
話が長くなったけど、SI業界の問題はそこなんじゃないかと。
今後、今以上に開発のコンポーネント化は進み、同時に全体として必要となる知識の総量は増えてくるはず。そこで、現在「SE」として扱われている採用および人材管理を、一部の高度な設計者と、多数のさほど高度なスキルを必要としない単純開発者に分離する、というのが、これから不可避な流れになってくるんじゃないかな。
あまり「優しい」流れだとは思いませんが。