大毅はオレら兄弟の中でも一番ボクシングが下手やった。
オレと和毅が才能があるとは言わんけど、大毅には才能がなかった。
その大毅がおやじとの努力でここまで来た。
ちっちゃいときからいっつも一緒に練習してきたけど、大毅が一番練習した。
オレらについてこられへんかったからな。
兄貴やからええとしても、弟の和毅が出来ることを、自分にはできへんっていうのが屈辱やったと思う。
大毅はそんなことは絶対に口にせえへんかったけど、つらかったと思う。そやからボクシングが好きちゃうかったと思う。
大毅が絵を描くようになったんも、オレらにできへんことをやりかったんやと思う。
最初は絵も下手やった。でもオレがうまいって言うまで何回も描き直すねん。
練習の合間にずっと画用紙に向かってた。それでいつの間にかめっちゃうまくなってた。
おやじはいつも大毅につらくあたってた。オレと和毅の練習が終わってもずっと大毅に付きっきりやった。
おやじが教えたことができへんかったら大毅はどつかれてた。
たぶんおやじも必死やったと思う。3兄弟の中で1人でも脱落者を出したくなかったんやと思う。
大毅がオレと和毅と同じレベルに来るまで毎日毎日一生懸命教えてた。
今日負けて引退することになったら、彼は自分の価値をどこに見つけられるだろうか。
今思えばカラオケもピアノも、>オレらにできへんことをやりかったんやと思う。
に尽きるんじゃないだろうか。だがさすがにプロにはなれないだろう。一番得意なボクシングでさえダメだったように、他のプロ世界も甘くない。
でも中2病全開で育った彼は、みんなが中坊のとき軽々しくアーティストや小説家やマンガ家を目指したのと同じような全能感を、未だに持ってる気がする。
テレビにすら映らなくなる自分に耐えられるだろうか。世の中が自分主役でない状態に。
俺もITのでかい仕事やってた頃は、良くも悪くも何かするたびにネットニュースに掲載され、するとすぐにライバル会社が対抗サービスを発表したり、
またその新聞を元に緊急対策会議が開かれたり、隣の部屋のチームが情報漏えい起こして会社の株価下げまくったり、
知ってる顧客の一人が雑誌のインタビューでかっこつけて嘘ばっか言ってるのを職場のみんなで笑ったり、
それを接待で本人を前にネタにしたり。今日からテレビCM始まるからHPのアクセス数気をつけろって言われたり。
たとえ幻想でも自分が日本社会と絡んでる感があってとてもやりがいを感じたものだったが、会社を辞めた途端にまるで関係なくなって、
俺ってなんだろうって悩んだことがあった。
もっと身近なイメージだと、東京から田舎に帰ると、テレビでやってる事が全て自分と関係ないものになったりしない?
銀座の店がオープンとか、うまいラーメン屋特集とか 東京に住んでれば「おっあそこか!今度行ってみるか」ってなるけど、実家だとまるで
別の国の話のようになってしまう。自分が世界から置いていかれる。
そのときの、なんともいえないむなしさみたいなものに、彼は打ち勝てるだろうか?
しかし、人生で一度も社会と絡んだ記憶のない自分には、一度でもそういう経験ができたというのは羨ましい限りだ
http://anond.hatelabo.jp/20071011135055 まだ負けたわけじゃねーし、負けたからといって辞めるとも限らないし ただ、あの年で希望を絶たれるのは悲しいな、じっくり何年もかけて育てれば成功...
むしろ逆だろ。こいつは自分に才能がないこと知ってるから、日々劣等感にさいなまれる日々だよ。 そして今日の試合で、努力や根性だけでは超えられない壁があることも知ってしまっ...