「そして唐突におっぱい5.0について語りたい是非とも語りたい」ってボクは言って、
「は?お前、なに言ってんの?」ってキミは笑った。よし。
「おっぱいは最初は敵なのだが、適度に乳首をしばくことによって乳首が起き上がって仲間にして欲しそうにこちらを見る」
「うん」
「つまりボクは彼女が欲しい」
「おう、オレも欲しい」
「ボクはキングおっぱいが苦手だ。最初からそこそこ強いのだが、最高レベルが低い。そもそも見た目が下品だ」
「そうだな。並のおっぱいは最高レベルにすると瞑想とか灼熱とか使えるんだよな」
「そう。そしてなにより、冒険の最初から共に歩いていってくれるタイプの良いおっぱいだ」
「まぁな。でも、オレはどっちかというとホイミおっぱいだな。癒し系なの。馬車に入れておきたいタイプ」
「それはまた古風な考え方だな」
「おう、オレは古風だ」
へへへ。とボクが笑って。
ははは。とキミが笑って。
キミもボクも中学校が不登校で、そういう子供たちが入る高校で出会った。
くだらない話で笑って、くだらないことをして楽しんだ。
それから卒業して、キミは飲食店に就職して、ボクは大学へ進学した。
キミとボクはときどき会い、しこたま飲む。
酒が回っているから、とても楽しい。
キミといるから、とても楽しい。
だけど、キミはとても酒癖が悪い。もうそろそろ危ないな、とボクは思った。
酔った勢いで入ったカラオケでも、キミはたらふく呑んで、目つきが変わる。
そして、泣き出す。
「どうせオレは」とキミが泣く。
「オレの父親は、○○大学に出て、オレの兄弟は××大学を出ている。なのに、オレは、高卒で」
「オレは、親から愛されてないんだ。誰からも愛されてないんだ。オレはオレの家の恥だ。オレはクソだ」
「どうせ、オレは。どうせ、オレは。どうせ、オレは。」
ボクは言う。
「そんなことない」って。
キミの親は、一人暮らしをするキミが心配で、月に何度もキミの顔を見に店にくるじゃないか。
そんな親の相手もせずに、顔もみせないのは、キミじゃないか。キミは愛されてるんだ。
キミは言う。
「お前には分からない」って。
なんで?なんでボクには分からないの?とはボクはもう聞けない。
キミはそれ以上何も言わない。
ボクもそれ以上何も言えない。
きっとボクが何を言ったって、キミは「大学なんかに行ったお前に上から目線で見下されている」って言うんだろうし、
きっとキミに何度そう言われたって、ボクは「そうじゃないよ、そんなの下らないよ」って言うしかないんだろうし、
だから、ボクもキミも何も言わない。
閉店です。
店員が内線で告げたから、ボクは酔って眠っているキミを起こす。
「もうちょっとだけ」キミは寝ぼけていて、起きない。
「駄目だよ、さ、とりあえず、店を出よう」
「・・・」
「な?ほら。立って」
「っるっせえ!!!」
ボクのメガネがふきとんだ。
分かってる、アルコールのせいなんだって。
分かってる、寝ぼけてるだけなんだって。
でも、でも、でも。ボクが何をしたって言うんだ。
ボクは悲しい。悔しい。こんなの、多分アルコールのせいなんだ。
酔いが醒めたキミは、きっと覚えてないだろう。
きっと、なにくわぬ顔で、ボクとたわいのない話をするんだろう。
でも。酒が入るたびにキミがボクに言うのは、いつもいつも、その話なんだ。
「どうせオレは。オレはクソだ。オレは誰からも愛されてない。お前には分からない」
なぁ、クソなキミを友達だと思うボクは、頭がどうかしてるのだろうか。
なぁ、キミを愛おしいと思うボクの気持ちは考慮してもらえないのだろうか。
なぁ、上から目線だなんて、ボクの目線の位置を勝手決められるなんて、偉くなったもんじゃないか。
分かってる、アルコールのせいなんだって。
分かってる、寝ぼけてるだけなんだって。
もうすぐ夏休みで、ボクは多分キミに会いに行く。
なぁ、好きな人、できたんだぜ。
ボクは大切なキミに真っ先に、教えてやりたいんだけれど、
「どうせオレは」とキミが泣くかもしれないから、
そしたらきっとボクはそれで泣くから、
たわいの無い話をして終わらしてしまうかもしれない。
なんでキミとボクはこんなになってしまったんだろう。
いつから楽しいことや幸せなことを素直に共有できなくなってしまったんだろう。
そんなつまらない違和感なんて無視してしまえばいいだけなのに、できなくなってしまったんだろう。
それでもどうしてボクはこんなにキミに会いたいと思うのだろう。
なんでなんだろう。なんでなんだろう。なんでなんだろう。
「なんでボクは」とボクは泣く。
よしよし。 あなたの大事な人が、 先の見えない辛いトンネルを いつか抜ける日が来ることを 祈ります。
ありがとう。
非常に切ない関係だが、数年経てば自然と道は分かれていくだろうな。 大手企業の社員と、飲食店店員。やがて家庭を持ち、仕事に追われながらも出世していく君と、「どうせボクは」...