嫌なことを書こうと思う。読んでいる人にとってではない。自分にとってだ。
僕の職場は、正社員とパートの区別はしっかりしているのだが、仕事の内容によっては、ほとんど変らないところもある。まぁ、僕の同業者の方なら何となく判るかもしれない。というか、そういう人には読んでほしくはないのが正直なところだ。
匿名が一応保たれているから書ける話でもある。前置きが長すぎだ。読まれることを前提にしていないが、何処かで吐き出したくなったからここで吐き出すこととする、。日本社会は匿名でなければ吐き出すものも吐き出せない。だから2チャンネルなんてものが繁盛するんだろう。ああ、僕は2chが好きで仕方がない30男だ。
で、最初の段落に戻るが、僕はパートに属している。30でかよと思うだろう。そう、僕はフリータだ。それも、ごくごく限られたこの業界でなら僕の能力は通用するが、それ以外の業界だとまるで使い物にならない。この業界を離れればもう僕は死ぬしかない。大げさかもしれないが真実だ。この業界から追い出されれば、僕はのたれ死にだ。樹海行きという奴だ。・・・全く、ここは2chの株板かよ。
さて、僕には少し悪い癖がある。職場にいる人を好きになってしまうのだ。それだけなら誰でもあるだろうが、僕の場合は最終的にその人との人間関係は破綻することになる。それをもう何度も経験した。仕事に関することなら僕はいくらでも失敗を克服することができるが、こういうことに関しては、全く出来ない。おそらく僕はまともな人生は歩めまい。他の場所で作ることを考えても良いのだが、仕事に一生懸命になっている女の人くらい、綺麗に見えるものはない。
職場の顔ぶれが変ることとなった。いつもこの時期はそうだ。年にもよるが、顔ぶれは大きくも、微妙にも変わる。結局、紆余曲折の末に、僕はパート契約がさらに1年、更新となった。重大な失敗がない限り、僕はまた1年をここで過ごすことになる。重大な失敗をして、冬に消えてしまった人がいるのを知っているから、気をつけないとなぁと思う。で、そんな中で「その人」はいなくなることになった。
「その人」は違う会社に行くらしい。その人との関係は2つ上の段落の通りに破綻していた。昨年初夏の頃だ。酷く面倒なことが僕とその人の間に起こり、解決に失敗した。その結果、口も聞かない関係になった。誰が悪いのかと言えば、僕に決まっている。いつもそうだ。経験から学ばないし、学べない。困ったことだ。その人がいなくなることを知ったのは2日前。驚いた。その人は明るく社交的である。だから職場では人気があった。その人と口をきかなくなることで、職場の空気を若干読めなくなり困ったし、同じ空間にいることが苦痛でたまらなかった。
その人がいなくなる。僕は居続ける。その人の最後の勤務の日。僕もいた。普通に仕事をしていた。僕もだ。その人は周りににこやかに挨拶をしている。僕のところには当然ながら来ない。僕は何度か挨拶に行こうかと考えた。でも行けなかった。僕もその人と話したいとは思わなかったから。普段の挨拶すらもまともに交わしてない。ドラマと実際は違う。その人との和解など、あり得るはずはない。その人は静かに職場を去った。本当に静かにだ。忙しくて挨拶が出来なかったという人もいた。悔しそうな人が何人かいた。僕は悔しがる人に同情するふりをした。演劇部に幽霊ながら在籍していて良かったと思っている。
僕はそのとき。そのとき、僕の心の中は。狂喜乱舞していた。フラメンコでも何でもいい。ちゃんちきおけさでも、阿波踊りでも、本当に踊りたくて仕方がなかった。ガッツポーズを人に見られないところでやったのは認めるよ。ただただうれしくて仕方がなかった。嫌な奴がいなくなった。あの、憎んでも憎みきれないほどのに嫌な奴が。これがうれしくなくて、何をうれしいというのだろう。今年が始まって3カ月。最もうれしい出来事だ。2日前に知ったときの感動はしばらく忘れない。これで苦痛の種がなくなる。自分は思うとおりに振る舞える。
素直じゃないねと、ここまで我慢強く読んだあなたは思うかもしれない。違うんだ。本当にうれしいんだ。だからタイトルにも最初にも書いただろう。「嫌なこと」を書くと。僕はそいつが帰った2時間後に仕事を終えた。タイムカードがある場所は、誰もいなかった。もう大体の人が帰宅していたし、可能な限り帰宅時間が重ならないように努力したつもりだ。タイムカードを押す。タイムカードを所定の位置に戻す。ホッと息をつく。
そいつのタイムカードはまだある。そいつの名前のところ。そこを思い切り、指ではじいてやった。あの音、しばらく耳から離れない。そして、僕は外に出た。世界が違って見える。軽く伸びをした。僕は、これからも仕事を頑張ろうという決意が沸いてきた。久しぶりにいい週末を送れそうだ。空には星が輝いていた。オリオン座が見えた。
最後に、タイムカードをはじいたときの、音のこと。
ぱーんと、いい音がしたんだ。想定の範囲外だった。ものすごいいい音だった。しばらく忘れられないと思う。だからその人に、この場を借りてお礼が言いたい。いなくなってくれてありがとうって。もう二度と会いたくないし、見たくもない。街中でバッタリなんて真っ平ごめんだ。ここまで読んでくれてありがとう。唾棄すべき嫌な奴だと思ったはずだ。それは正しい。だって、僕自身がそう思うのだから。
このエントリーをブクマして「これはすごい」タグを付けると、あなたに幸せが訪れます。 本当です。 逆に言うと「こんなの釣りに決まってる」なんて言ってブクマするのを拒むような...