2007-03-15

厳しさと酷薄と 突き刺すやうな言霊

凍えるように翻る うすべつたりとした鋭ひやひば

つるりとさして 知らぬ顔

  それはいつか見た夢のやうに 手ごたへもなく

沈鬱と それにしたがふ黒ひ影

昼なお暗き 樹海の奥に

誰の形見か 手鞠 ひとつ

  そのむかふには まつくらな洞窟

  しづかなままに あるでせう

  そぞろ歩きも ときにはするが

  誰かに会へば 笑ひもするが

  空はいつでも 薄青く

  池の氷は ゆるむこともなし

  窓のうちからさざめく冷気を眺め

  あたたかな机の上にうつふして

  なにも言はずに 冷たい笑顔

  吸つては吐きのくりかへし

  それだけで生きてゆける痛々しい世界のために

  杯を ああ杯をかかげやう

  やさしくて ほがらかで

  きつと皆から好かれるはずの

そんなあなたがゐる この世のどこかに

置き去られた 手鞠 ひとつ

薄くらく 苔むした樹海のなかで

鮮やかな彩りを わけもなくふりまいてゐる

薄くひらめく 刃は言霊

つるりと刺して しらぬ顔

手ごたへもなく 心になにも残すことなく

屋根からくだる 氷柱を喉奥深くさしこんで

その流れ落つる血潮は さて誰がために?

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