大学時代の友達といまだに仲がいい人を見るとうらやましいと思う。
私の大学時代はあまりいい思い出がない。受験生の頃は二歳上の兄を見て「私も大学生になれば楽しめるぞ」と思っていたが、正直高校時代が天国なら大学は地獄だった。
最大の苦い思い出は、所属していたサークルで流行っていた「スルー」。
その頃、大学に最も近いスーパーのレジでは、そのサークルにいる一年生の女の子がバイトをしていた。
サークルの部員は皆そこのレジに並んで精算する。すると彼女はわざと一部の品物を通さないのだ。
まあ万引きである。彼女の性格から察するに、彼女が率先して始めたわけではなく先輩に強要されたのだろう。
「今日も"スルー"で千円儲けた!」とかそんな言葉が口から飛び出す。私はそれを聞く度嫌で仕方なかった。
万引き集団に自分も属しているのかと思うとうんざりして、そのスーパーでは絶対に買い物しなかった。
ある日、自分の家で酒を飲みながら、二人きりになって彼女に聞いてみた。
「ねえ、きみはああやってレジを通しているけど本当は嫌なんじゃないの?」
彼女は泣き出した。
「嫌です……もしばれたらバイトをクビになるだけじゃないし、大学も……
でも先輩方が喜ぶと思うと辞められなくって……」
泣き出した彼女を見ながら私はため息をついた。でも私だって所詮偽善者に過ぎない。
私のしたことは、万引きを強要する部員を止めることではなく、サークルを辞めただけだったのだ。
まあそんなこんなで、大学時代を思い出すとこの手の思い出ばかりで吐き気がしてくる。
ああいうバカな感覚は大学生特有か、といっちゃ学生に失礼なんだが、大学ならではの無礼講ってあった気がするな。
そんだけ。