2007-02-22

"One of the biggest cities in Japan"をどう訳すべきか

  「日本で最も大きな都市のうちのひとつ」。日本語として、まったく矛盾した文章である。「最も」とは、"一"番程度が上であることを言うのに、複数ありそうな訳になってしまう。「『ベスト10』というのと同じようなものだからいいのだ」と説明を受けたが、腑に落ちなかった。

二葉亭四迷は「I LOVE YOU」を「あなたとなら死んでもいい。」と訳した。という文章を読んで奥歯がガタガタ言うくらいのショックを受けた。と同時に胸が苦しくなってドキドキがしばらく止まらなくなった。http://crash-log.cocolog-nifty.com/blog/2006/01/post_c727.html

  "I love you."は、逐語訳すれば、言うまでもなく「私はあなたを愛している」となる。しかしそれを、かの二葉亭四迷は「あなたとなら死んでもいい」と訳したという。つまり、日本人はそのような文脈では「私はあなたを愛している」などとは言わないということ。

  自分も昔からそういうことは考えていて、例えば、"Take it easy!"は、日本人の感覚では、このような励ますシーンでは、「気楽にな!」というよりも「がんばれ!」の方がしっくり来る気がする。しかし、四迷のすごいのは、「愛を伝える表現」からは想像もつかない、「死んでもいい」という、日本人の情緒にしっくりくるような表現を見つけ、当てはめたところにある。自分じゃあ「大好き!」くらいが限界である。訳すということは、このように、文化的なバックグラウンドを含めて行うべきであって、四迷のセンスには敬意を表する。高校時代の英語教師も言っていた、「英語勉強するということは日本語勉強することだ」、逐語訳ではなく、逐語訳の意味から本当に言いたいことを日本語の文脈で紡ぎ出しなさい、と。

  日本英語教育は、中学校から始まる。その主眼はコミュニケーションに置いているようだ(http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301c/990301i.htm)。高校でも同様だ。しかしながら、全入時代の到来した大学入試で問われる英語は、コミュニケーションとは掛け離れた、読解能力や文法の記憶を試すものである。いきおい、受験対策としてはコミュニケーションおざなりになる。

  だが、そんな対立軸ではなく、どうせどちらも両立することなぞ不可能なのであるから、日本語の文脈として捉えることの重要性を、もっと認識すべきだ。「日本で最も大きな都市のうちのひとつ」ではなく、「日本でも指折りの規模の都市」と訳せる能力を身に付けさせるべきだ。そうすれば、日本語の、という意味での「コミュニケーション力」(文章力)が高まるのではないだろうか。

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