2007-01-11

ナマナマしい話をしようか、

オルトンという薬を飲んだ。家族にばれないように、処方箋は小さくたたんでごみ箱に捨てた。なぜならそれは、いわゆるモーニングアフターピルと呼ばれるものだからである。

なりゆきまかせの避妊に失敗したような気がして、婦人科に走った。休日診療の医者は無愛想で、何を言っているのかよく聞こえなくて何度も聞きなおした。結果的に「最後のセックスはいつしましたか」と3回言わせてしまった。72時間以内に2錠、その12時間後に2錠。吐き気止めはいりますか。

強制的に卵子を流してしまう薬だから、身体に良いわけがない。気分が悪くなるのを感じつつ、着床しないことを祈って薬を飲んだ。自分を、どうしようもなく傲慢だ、と思う。何年かしたら、たぶんまるで逆のことを祈るんだ。結婚して、子どもはまだ?なんて言われて、なかなかできなくてあせって、排卵日に合わせて旦那とセックスをする。今度はおなかの中で卵子精子が出会うのを何度も何度も夢想するのだろう。出来たら困る、出来なけりゃ困る、人生のシーンに合わせて都合が良いように生まれてくればいい。周りもそれを望む。

ただ、私の身体だけが取り残される。自分に残っている唯一の自然摂理が、わずかに抵抗しているのが感じられるのだ。下腹部は鈍く痛み、それですら人工的に誘発されていることを知りながら、ごめんよ、と子宮に向かって謝った。もうどうにもならないけれど、この痛みはずっと抱えていく。女であるということは、矛盾を引き受けて生きていくということなのかもしれない。

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