2015-12-18

夫婦同姓にかかるコストを誰も取り上げない。なので書く。

まず同姓を強制されるおかしさについて。

自分は既婚、女。結婚したのは十数年前のことだけど、一番イヤなことが今まで慣れ親しんできた名前を変えなければならないことだった。

私があまりにも嫌がっているので、夫は自分が改姓しようか?と言ってくれたが、問題はそこじゃない。そもそも名前を変えるという行いが、社会に合わなくなっている。

考えてみてほしい。学校職場などオフィシャル場所では、個人は姓名によって特定される。これは当たり前のことだ。これに伴って、個人のアイデンティティーも醸成されていく。だから姓名は人生の土台と言ってもいい。それが突然、結婚という特定イベント選択すると、夫婦のどちらかが変更を強いられるのだ。

自分場合は、社会に出て日が浅かったこともあり仕事上の実務的デメリットを考えると、夫ではなく自分が変更するしかなかった。「違う人になる」ことに対する強烈な違和感は今でも忘れていない。「彼を愛してるから何でも受け入れちゃう(はーと)」なんてお花畑寝言ごまかせる話ではない。オーバー表現すると、人格侵害と言ってもいい。学生時代から続いている友達はいまだに昔のまま、旧姓を使ったあだ名で私を呼ぶ。旧姓の私は、夫よりずっと古い付き合いの友達の中に、いまだに息づいている。

さてここからが本題。改姓=「違う人になる」手続きを取り扱うコストについてだ。

姓名という個人特定キーが変わるため、役所個人情報を預けている企業に対して変更手続を行わなくてはならない。これが実に馬鹿にならないコストになる。

まず役所関連でも縦割り行政のせいで、様々な窓口に赴かなければならない。住民票戸籍関連は市区町村役所免許証公安委員会なので警察署パスポート外務省旅券窓口。この3つを1日中に回りきれるかは微妙ラインだ。印鑑登録していれば姓名の変更に伴い実印も作り直す必要があるので、その手続プラス

その次は勤務先関連。通称として旧姓を使える会社にいたけど、その場合は届出が増えるらしい。またうちの業界全体で見ると派遣法とかの絡みで、実名でなければいけない等あるようで、通称を使いたくても難しいのかもしれない。だって書類上と職場呼び方を分けるなんて、周りの人が面倒じゃん。自分は、旧姓を使いたい人は旧姓で呼んでるけどね。

次は銀行とか金融機関関連。メールオーダーでも氏名変更できるところが増えた。しか取引先の数の分だけ書類を書きまくり、新しい届出印を押しまくらなければならない。あ、新しい氏名が記載された公的証明書の取得も忘れずに。(足りない場合役所に戻る)

そして公共料金の類。電気ガス水道電話、あとケーブルテレビとか光回線とかその他通信サービス配偶者が使っていたものを使って契約リストラできたりするが、自分のを使う場合はやらなければならない。契約の変更だけでなく自動引落もやっている場合はそれもセット。ここでも銀行届出印の出番。

…と、これでだいたい生活していけるだろうか。

自分経験ではここまでたどり着く頃にはだいぶやさぐれており、「日本では結婚した女は財産を持つなっていう嫌がらせ?!」とか思い始めていた。ざっと3日はかかった。

なお、警察免許証の氏名変更をした際、裏面に職員おっちゃんが手書きしてくれるが、おっちゃんが新姓を書き間違えるという信じがたい事態が起き、次の更新まで1日に2回改名したことになっていたのも付け加えておく。

当人負担もさることながら、届出を受けつけた側も対応しなければならない。日々結婚するカップルの数だけ(および、離婚する夫婦とその子もの数を足しただけ)発生するそれらの届出を、各企業はそれなりのコストをかけて対応している。

これって壮大な無駄ではないか

夫婦別姓を認めてくれさえすれば、名前を変更する申請が減り、社会全体から無駄コストが減る。何よりも、慣れ親しんだ名前を無理矢理捨てる必要がなくなる。

望んで「違う人になる」人を責めたりしない。そうしたい人はすればいい。それにもともと現行の運用においても養子縁組とか、改名だとか、名前を変える届出は存在する。ただ、社会全体で見たときに、氏名変更が今よりずっとレア手続きに変わる可能性があるのだ。結婚した夫婦すべてに必須手続きではなく。

また、どうしても言っておきたいのは、「別姓を認めると家族の一体感が損なわれ、家庭の崩壊につながる」とかい論調について。

すでにあちこちで言及されているように、世界的に見て夫婦同姓を強制する国はごく少ない。そもそも姓という概念のない社会も珍しくない。そういうケースも含め、人類の多くは夫婦同姓を強制されない社会で生まれ育ち、次の家族を作っている。そういった他国の人々に対して、「夫婦別姓の家庭には一体感がない」と言い放てるのだろうか?何様のつもりだ。

結局、「日本では違う」と謎の日本特別論を持ち出してくるしか正当化手段がないのだ。

他の国でできることがなぜ日本ではできないのか。この問いに対するまともな回答を、夫婦同姓維持論者からは聞いたことがない。ぜひ教えてほしい。

夫婦同姓の強制にかかってくる数字的なデメリットを列挙してみた。日経新聞あたりが拾って記事にしてくれないかな。

この不都合理解していただけない人は、

他人の大変さに思いを致す配慮に欠ける

か、

・「決まりから」の一言で片付け、自分で考える能力に欠けている

のどちらかに当てはまる、頑迷な爺婆かその予備軍だと思っている。

2016/6/21

id:bell_chime_ring238です。

このエントリと似た思いの増田を見かけ、同じようなこと書いたなとブコメしたんだけど、

半年ぶりに見たらトラバブコメがついてたので追記を。

まず、自分結婚するのがイヤだったわけではない。いまだ人生パートナーとして大事に思っているし、一緒に暮らせるのは素晴らしいことだ。書いてて恥ずかしいぞちきしょーめ。

ただ、それと「違う人になる」のとは全然別の話だと言いたかった。

また、現行の運用でも改名がありえる(キラキラネーム改名とか増えるだろうし)ので、名前を変える行為を全廃しろと言ってるわけでもない。同じことは本文にも書いてるけど。

結婚したらその夫婦の数だけ氏名変更届が発生するより、氏名変更したい夫婦だけ届け出れば絶対数は減るだろう、というのが趣旨だ。

ブコメのとおり、社会的コストを言うなら選択できる方が別のコストを生むという指摘も認める。

要は結婚するカップルはすべて、どちらかがこういう負担をしなければならないってなんか無理があるでしょ?という話なんだ。

  • 同姓が強制でなくなったとしても、同姓が多数のままだったら結局「無駄」じゃないの? コスト削減が目的なんだったら、やるべきことは、同姓を選んでも別姓を選んでも手続きしなく...

  • そんなに文句言うなら、結婚しなければ良かったのに。 離婚なんて、その三倍以上は大変だよ。

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