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はてなキーワード: ambientとは

2023-12-11

Ambient Kyoto坂本龍一の音と、ダムタイプの人の映像がすごく良かった。

次に何が来るかは予期できず、ピアノ・オンガン・シンセサイザー弦楽器ノイズなどが織り交ぜられた楽曲もしくは音が流れ続ける中、それに合わせた映像、とても横長な巨大画面に映される動画静止画ノイズの間のものが、徐々に変化しながら流れ続ける。

音も映像も、何らかの物語メッセージ存在するのか、それとも自然のようにただ単にそこにあるのかの中間恣意的に切り取られた自然の一部、箱庭のような趣で、ただそれを眺めたたがることで瞑想的な癒しを得られるような、同時に何か本質的な問いが投げかけられているような不思議気持ちになる。

アンビエント音楽の、瞑想的な雰囲気を生み出す機能的な側面と、音の冒険により未知の世界に踏み出す実験性が同時に感じられるということだ。

次回の開催にも期待したい。

2021-03-14

ネット音楽をdigる時に有用英語圏サイト,RateYourMusicの紹介

https://rateyourmusic.com/

簡単説明すると,音楽オタクたちが好きなアルバムシングル登録したりレビューを書いたりレーベルを整理したり曲のジャンル分類を投票で行ったりするサイトである

とにかく登録されている音楽の量が凄まじく,レビューの数も凄まじいところがこのサイトの良いところであるレビューオタク特有の長文付属だけでなく雑な5点満点の評価だけでもできるため,有名どころのアルバムでは4桁〜5桁数のレビューが付くこともザラであるとはいえ音楽オタクの集まりなのでここでの評価大衆の好みとはいくばくかかけ離れていることは多く,筆者の主観ではPitchforkのレビューよりもややオタクをこじらせたくらいの評点がついている印象.

今すぐできる使い方をいくつか紹介する.

ジャンルはなんでもいいのでいい音楽を聞きたい

例えばチャートで「2020年ベストアルバム」を調べる↓

https://rateyourmusic.com/charts/top/album/2020/

ここでのソート順はレビューの平均点とレビュー数に基づいている(具体的な数式は知らん).もちろん他の年のベストアルバムを調べることもできるし,ベストEPベストシングルについて調べることもできる.

・あるジャンルのいい音楽を聞きたい

例えば「2010年代日本語ロックベストアルバム」を調べるとこうなる↓

https://rateyourmusic.com/charts/top/album/2010s/g:rock/l:ja/

放課後ティータイムが一位になるあたりはさすが英語圏オタクサイトといった印象である.ちなみにこのサイトにおける音楽ジャンル気持ち悪いほどに細分化されている.

音楽ジャンルについて知りたい

このサイト音楽ジャンルwikipedia的にユーザーによって管理されており,階層的な親子関係構造になっている.親ジャンル一覧はここ↓

https://rateyourmusic.com/genres

このジャンルそれぞれの下に細分化されたジャンルがいろいろ並んでいる.

例えばRock選択すると,画面左にロックについての長々とした説明(例によってユーザーによってwiki的に管理されている),その右にRockの直接の子ジャンルがずらっと並んでいることが確認できる.

https://rateyourmusic.com/genre/Rock/

自分の好きな曲と似たような曲を探したい

ある程度有名な曲なら直接フォーラムオタクユーザーたちに直接聞くのが早いが,それは面倒なのでジャンル基準に探す.

偶然知ったBicepというアーティストのSakuという曲が気に入ったとする(https://www.youtube.com/watch?v=gjftPjEROSM ).このサイト内で検索してみると,運よくシングルとして登録されていることがわかる.

https://rateyourmusic.com/release/single/bicep/saku/

ユーザーによるジャンル分け投票の結果,Future GarageUK Bassというジャンルに分類されていることがわかる.Genresの横にでかく書いてあるのがその曲/アルバムが分類されるであろうジャンルで,その下に小さく書いてあるジャンル(今回の場合Alternative R&B, Ambient Techno, UK Funky)はこの曲が影響を受けている(とユーザー判断した)ジャンルである

というわけで,UK BassとFuture Garageを両方含むなんでもありのエントリー検索するとこうなる.

https://rateyourmusic.com/charts/top/release/all-time/g:all,future-garage,uk-bass/exc:live,archival/

もちろんジャンルが同じなら曲が必ずしも似ているとは限らないのだが,ある程度の参考にはなる.

ユーザー登録をするとレビュー投稿したり登録されてないアルバム登録したりジャンル投票に参加したりといろいろできる.その辺は気になったら自分で調べれ.

2019-11-02

カセットテープレコード専門店に行ってみたら、怒られた。

最近YouTubeなどで話題になっている某カセットテープアナログ専門店に行ってみた。

とりあえず面白そうなカセット平積みされていて、紹介されていたので、そのアーティスト音源をググりながら、

ネット試聴していたら、いきなり店長と思わしき人から声かけられた。

店長カセットプレイヤー持っているんですか」

自分「いえ、持ってないです」

店長「さっきからスマホメモってネット検索しているんですか?」

自分はい、そうですけれど」

店長「あのね、そういう事やるならウチに来ないで欲しいんですよ」

店長「店に来て、情報だけ取って帰る、こういうのを情報万引きというんですよ」

自分「え、あ、そうなんですね。すいません・・・

え、そんなのあるのか、と驚きつつ、まあとりあえずさっき聴いて気に入ったカセットを買って帰るか、

と思い、店長のいるレジに行ったら、

店長「無理して買って貰わないでいいんですよ」

自分「いや、そういうわけでなく、ただ気に入ったから買おうとしただけなんですけれど」

店長そもそもカセットプレイヤー無くてどうやって聴くんですか」

自分「これからうつもりだったんですけれど・・・

実際その店でカセットプレイヤー買って聴きながら帰ろうと思っていたのだが、

そこに置いてあるものは全てヴィンテージものっぽく2〜3万円ぐらいするのだった。

からネットにある3〜4000円ぐらいのものを買おうと思ったのだ。

そして店長は2〜3秒ぐらいレジの前にいる自分存在無視していたので、

自分「えっと、買えないんですか?」と聞いた。

店長・・・・どうしてもと言うのなら」

自分「あ、じゃあお願いしま・・・

店長「あのやっていた行為はね、情報万引きと言ってこの業界では問題視されているんですよ」

店長「そういうの他でもやらない方がいいですよ」

自分「あ、はい、すいません・・・

そこでやり取りは終わり、会計をさっさと済ませ、颯爽とその店から出た。

さて、本題に入ろう。このやり取りを経て、少しこの店の事を調べた上で、自分が思ったのは、

1.なぜこの店はオンライン商品を売っているのにも関わらず、直接店舗に行って、紹介されている音源ネットでチェックして試聴する行為禁止するのか

2.もし情報万引きとやらが一般的オフライン音源小売店禁止されているのならば、音源小売店にわざわざ足を運ぶ意義は何なのか

3.我々は日常的に情報万引きを行なっているのではないか

という事である


1について:店を出てから調べた所、この店はオンラインでも音源を紹介して売っている事を知った。つまり人々はその音源ネット検索し、試聴した上で気に入ったら購入する、気に入らなければ購入しない、あるいはその音源情報だけ得て、音楽ストリーミングサイト聴く、といった選択肢がある。ユーザーのそうした行為は、店長がどうのこうの言った所で、止められるものではない。つまり、よほど特殊システムサイトを埋め込まない限り、オンライン音源を売るという行為自体店長の言う所の情報万引きを、店長は許容している事になる。なのになぜオフラインではその情報万引きとやらを注意するのかが、自分には謎である

2について:オンライン上では1についてで述べたように、ユーザー試聴してから購入する、または購入せずに音楽ストリーミングサイト聴くという選択肢がある。では、もしオフライン店舗情報万引きとやらを禁止した場合オフライン店舗に訪れる理由は何なのだろう、と思う。そこには気になる音源試聴してから購入するという選択肢は無く、気になる音源があったら買って聴くという福袋を買うような購入方法、あるいは、その情報メモを使わず頭の中にインプットして、店から出て、ネット検索して試聴して購入の判断をするという極めて不便な選択肢しか取れない。だったらオフライン店舗に行く理由は何なのか?そこがすごくいい雰囲気の店であるのならば、そこに店を運ぶ理由は解らなくはないが、大体の場合合理的な買い物ができるオンラインの方がメリットは断然大きいのではないか

3について:もし自分のし行為情報万引きに類するものであるならば、自分は他の店でも情報万引きをしている事になる。家電量販店で気に入った家電メモし、ネット検索し、ネットで明らかに安いところであれば、ネットで買う、例えば保証などの点でリアル店舗で買うメリットが大きかったり、店員さんに案内してくれた感謝の意を示したいと思った時はその場で買う。自分は前者の行為をそれなりの頻度で行う。店長の言うところの「この業界」は「音源小売店業界なのだろうが、それが問題だというのならば、それは小売店業界全体の問題になるのではないだろうか。

なんかモヤモヤしたので、パッとタブレット端末に書き綴ってしまった。計画では今頃カセットテーププレイヤーを買って、ルンルンと散歩しながら帰っている予定だったのに、何だかモヤモヤとした半日になってしまったな。

追記:

気晴らしに、通りがかったイングリッシュパブラグビーワールドカップの決勝、南アフリカvsイングランドを人混みに紛れながら観た後、

一人でラーメン屋行って、タブレット開いたら、皆さんからの※が沢山来ていて驚いている。

自分にはこういうプライベートな事を喋る友達が一人もいないので、まあどんな米でも聞いてくれる人がいてくれて嬉しい。

せどり行為を疑われたという米が上位にあり、かつ、せどり行為なるものがよく解らないので、

せどり行為をググってみた。つまり転売のようなものだろうか。

ただそれは考えにくいかなと思う。

なぜなら店舗内で自分がいた場所の内訳は、新譜と思われるコーナー6割、新品と思われるコーナー3割、中古と思われるコーナー1割程度だったからだ。

そしてこれは自分主観だが自分がまだ中古のコーナーには行かず、

新譜のコーナーにいた段階から、何か店長視線から怒気のようなものを感じ取っていた。

まりはこれはせどりに対する怒気ではないのではと思う。

また確かに※で指摘されているようにあの動画内では、レポーター試聴機を使って試聴をしていたのを覚えている。

ただ僕はあの試聴機は番組のために特別に用意されていたものだと思っていたし、そもそもカセットテープCDデジタル音源と違って痛みやすい。

であるので、カセットテープ試聴するのは悪いから、ネット試聴しようと思い、そうしていたのだ。(そしたら怒られた)

つか、そんなに容易に特定可能なのか。ちょっとこのエントリーヤバいかな・・・

またカセットテープへの愛が感じられない、せどり行為を見破られた腹いせだ、という※も頂いた。

そもそもせどり行為が何なのかも知らなかったし、そんな事をするつもりもなかった。

そして確かにまだカセットテープへの愛は薄いかもしれない。ただし音楽への愛は強く、今まで多分1500枚ぐらいの音楽アルバムを聴いているし、

デジタルオーディオだが、◯十万のバカデカスピーカー音楽を聴き、それを使って防音マンションを借りて製作している。

特に金があるわけでもないのにだ。

音楽さえ愛していなければ、多分自分仕事自分資源をより注ぎ込めて、

社会的地位も今より高かったろうと思うし、より単純で、もしかしたらより幸せ人生を送れたかもしれない、とも思っている。

自分デジタル音源勉強をしていたのだが、デジタル音源の事を知れば知るほど、アナログレコードカセットテープが魅力的に思えた。

というのもデジタル音源の音の波形を拡大してみると、どうしてもその波形はカクカクとして階段状になる。

反対にアナログレコードカセットテープの波形は峠のカーブのように滑らかだ。その分、音に温もりがあり、柔らかである、と思っている。

アナログのこういう強みを知っているせいか自分の好きなアーティストテープを使った音作りをしたりしている。

代表的ものを挙げると、Boards of CanadaのThe Campfire Headphase、Aphex TwinのSelected Ambient Worksなどだ。

(他にももっと良いものがあるのだが、マイナー過ぎて特定が怖いので挙げるのをやめておく)

おまけに、自分が知る限りでは2010年代ぐらいに入ってからアメリカ音楽オタク達はカセット音楽を聴いているという。

アナログレコードの売れ行きも好調だ。

で、ここ5年ぐらいずっと憧れを持っていて、せめて、カセットテープデビューだけはしておこうと思い、

店を訪れたのだが、まあこんなデビューになってしまい、ちょい残念。

なんかキモいマニアアピールになってしまってすまない。

更に追記↓:

https://anond.hatelabo.jp/20191105004911

2016-03-15

Dota2のVideo→Rendering→Use basic settingsの設定について

Best Looking(最高設定)にすると、川とか木の傍に余計な虫のグラフィックambient creatures)が表示されてしまうから

最高から1段階落とした設定にした方が良さそう。

参考リンク

http://www.playdota.com/forums/showthread.php?t=1435432

追記:

1段階落とすとambient creaturesとhigh quality waterがOFFになることを確認

2015-05-03

http://anond.hatelabo.jp/20150502164612

1980〜1988: アニソン(3歳くらいに聴いたゴダイゴの999が意識的音楽聴くようになった起点)

→ 1988〜1990: 邦楽

→ 1990〜1991: ハードロック

→ 1991〜1993: ヘビメタ、クラッシック 

→ 1993〜1995: 洋楽ヒットチャート系(90年代Tokio hot 100) 、J-Wave経由で渋谷系HipHop

→ 1995〜1996: アシッドジャズ洋楽ヒットチャート系(90年代Tokio hot 100)

→ 1996〜1997: ボサノバジャズレゲエ

→ 1997〜2000: テクノブレイクビーツビッグビーツミニマルディスコソウルドラムンベース

→ 2000〜2005: ディープハウスドラムンベースジャズディスコトリップホップアニソン

→ 2005〜2009: chillout、ambientdeep-houseアニソンボカロ

→ 2009〜2014: EDM( dubstep、brostep、drumstep、drumbase、trap、glitch-hop、deep-house、Juke/Footwork、trip-hop、chillout、chiptune、electro、disco)、アニソンボカロ

→ 2015〜   : アニソンremix(ナードコア類,Jトランス類を除く)、EDM (ワブルベースonlydubstepを除く)、邦楽remix

 

ワブルベースは聴き過ぎると飽きるけど、ワブルベース+なんか だとまだ聴ける

アニソンEDMremix的な相性は凄く良い。ただしナードコアやJトランスユーロビート(!)の系譜remixが多いのは辟易とする。なんていうかインドネシア方面におけるFunkotを彷彿とさせる。だけどEDMシーンを下敷きにしてるremixは凄く良い。

あとiTunes is Dead.

soundcloud多様性は凄いし、みんなsoundcloud聴こう

 

https://soundcloud.com

2013-02-18

海賊FMラジオのこと

※この話は実話を元にしていますが、あくまフィクションです。

大阪1994年の春頃。俺は15歳で高校受験の年だった。

当時は、勉強しながらよくラジオを聞いていた。友人たちがよく聴いていたのはAM放送のほうだったのだが、音質も悪くて、トーク主体番組が多い気がしてどうも性に合わず、俺はもっぱらFM放送を聴いていた。

あの頃の大阪FM放送といえば、5年前に開局した80.2MHzFM802が斬新な放送スタイルで一大ムーブメント形成しており、FMが流れている店は大体FM802チューニングされているといった風潮だったが、洋楽主体とはいえ基本的チャートインするようなメジャー楽曲ばかりを流す802は俺には物足りなかった。

なにしろその頃の俺はYMOを経て電気グルーヴを聴き始めた頃で「テクノ」と名のつく音楽に飢えていたからだ。

ネットもない時代サブカルに半分足を突っ込んだ引っ込み思案の中学生には情報もないし、それを補う行動力もない。しょうがないのでCDレンタルで、とにかくそれっぽい音楽を、BUCK-TICKカシオペア姫神、ようするにシンセが使われている音楽ならなんでもいい、といったところまでストライクゾーンを広げて、片っ端から聴いて、なんか違うよなあ、と思いつつ、飢えをしのいでいた。


そんな時、周波数75MHz付近ラジオ放送欄に存在しない局が存在することに俺は気づいた。

音質はかなり悪く、兄から受け継いだ馬鹿かいラジカセアンテナ限界まで伸ばしてようやく視聴可能というその謎のラジオ局は、だいたい19時頃から受信可能になり、深夜3時頃にぶっつりと止まる、明らかに海賊ラジオなのだが、俺はすぐさまその局に夢中になった。

なにしろ、その局は、俺が全く聞いたことも無いようなレイブテクノばかりをCMトークも無しにノンストップで延々と再生しつづけるという、まさに狂気ラジオだったからだ。


それからというもの、家に帰って飯を食うと、勉強と称してそのラジオを聞くのが日課になった。

そのうち、音楽の合間に海賊ラジオの主とおもわれる若い男のコメントが一瞬はさまれる事に気づいた。

彼は「○○MHzバンブーラジオ」とだけボソリとつぶやくとすぐに次の曲をかけた。

バンブーラジオレイブテクノの垂れ流し(いわゆる今は中古CD屋で100円以下で叩き売られているジュリアナコンピのようなノリと思ってもらえば良い)は、それほど当時の俺の嗜好に合っていたわけではなかったが、TUTAYAで借りたチックコリアよりはよっぽどテクノっぽかったし、中には心の琴線に触れるような名曲もあったのだ。

その度に俺は、この曲は何という曲なのか、どこに行けばこの曲が入ったCDを買えるのか、切実に知りたかったが、なにしろ曲名を読み上げもしないバンブーラジオなのだ。それを知ることはできなかった。

そんなある日、いつものようにバンブーラジオをかけると、珍しく人の声がした。おそらく生放送で、バンブーラジオ局の主とその友人とおもわれる若い男が二人で楽しそうに会話している。

会話は主が友人に海賊ラジオを始めるよう勧誘する内容で、

FM放送なんて簡単だって日本橋でパーツ買ってきて、ちょっと改造したらええだけやん。3万もあればできるで」

みたいなことを言っていた。俺は、個人FMラジオを開局するという、そのとんでもない発想に興奮し、乗り気でない友人に替わって、自分にその方法を教えてもらえないものか、とすら思った。


ダベリ放送は延々と続いていたが、日付が変わった頃、主が

「そうだ、リクエスト受け付けてみるか」

と言い、おそらく主の自宅の電話であろう、電話番号を読み上げた。

俺の胸は高なった。「同じテクノ好きな人間と話すチャンスかもしれない!」

電話番号をメモしたものの、しかし、実際に電話をかけるとなると、躊躇した。俺は無知なただの中学生で、しかも主のかける曲名、ましてやそのジャンルが何というのかすらまったくわからなかったからだ。(当時はディスコでかかるような曲、という程度の認識だった)

リクエストしようもないし、そもそも俺が知りたいのは、いつもかかる曲の曲名のほうなのだ

そんな質問をするために自分電話していいものか…さらに言うと、携帯もない時代に、固定電話のある真っ暗な居間に降りていって、見知らぬ、それも違法めいた事をしている男に電話をかけるというのも、何かすごく悪いことをするような感覚があった。もし電話しているところを厳しい母親に見つかったら、と想像すると、俺の興奮は急速に冷めていった。


ラジオの向こうの電話は鳴らなかった。

正確には一回だけ鳴ったが無言電話だった。もちろん犯人は俺ではない。

そのうち、主とその友人も飽きてしまって、元のノンストップ放送に切り替えた。

残念な気もするが、まあ、また機会もあるだろう、俺はそう思って納得することにした


バンブーラジオはその後も放送を続けていたが、やがて、いつもの時間でも休止していることが多くなり、放送があっても、まったく関係ない、違う個人運営ラジオ放送素人くさい女DJJ-POPトークの合間にかけるといったもの)を中継していることが多くなった。

季節は冬になろうとしていて、受験本番の日が近づきつつあった。

ある時、習慣でバンブーラジオラジオを合わせると、聞き慣れたレイブテクノが聞こえた。

ああ復活したんだな、良かった。

と俺は思い、そのまま聴き続けたが、合間にいつも主がはさむ「○○MHzバンブーラジオ」の名乗りに変化があった。

「○○MHzバンブーラジオ。今夜が最後です。」

俺は驚愕して、眠い目をこすりながら放送を聴き続けた。深夜2:00頃だろうか、音楽ふいにフェードアウトし、主のボソボソ声に切り替わった

最近忙しくて、ちゃん放送ができなくて申し訳ない。この放送は、○○(大阪地名から放送してるんですが、なんかどうも電波岸和田あたりまで届いてたらしいですね。どれぐらいの人が聴いてくれていたかは知りませんが、今までありがとうございました。」

放送を辞めるのは、神戸に引っ越すからで、そこでも放送を続けるかは正直わかりません。やりたいとは思ってますけど、設備問題もあるので。」

「ではそろそろお別れです。スイッチを切ったら、屋根アンテナ外して、これでバンブーラジオは本当に終わりです。」

そして、数秒のブザーの後、放送は止まった。ヘッドフォンからホワイトノイズが流れていた。


あの時、電話しとけば良かったなあと俺は少しさびしくなったが、実は、その時にはそれほど感慨はなかった。

なぜなら、俺は既に電気グルーヴテクノ専門学校シリーズを手に入れて、自分好きな音楽クラブテクノミュージックというものであることを知ることができており、またテクノ専門学校セールスがそれなりに良かったのか、ソニーミュージック海外インディーズレーベルを中心としたリリースラッシュAphexTwinBlack Dogデトロイトテクノアーティストなど)もあって、大きなCDショップに行けば、簡単に好きなテクノミュージックが手に入るようになりつつあった。

なので、好みの合わないレイブ系のラジオが終わっても、わりとどうでも良かったのだ。

それから1ヶ月もしないうちに、1.17 阪神・淡路大震災が起こった。

俺の家の被害はガスが止まったぐらいで大したことはなかったが、尼崎に住んでいた叔父一家被災するなどして、大混乱だった。親戚全員の無事が確認された後、俺が真っ先に思い出したのは神戸引っ越しバンブーラジオのことだ。

ラジオで読み上げられる無数の被災者の名前を聞きながら、俺はバンブーラジオの主の無事を祈ったが、もちろんそれを確かめ方法はなかった。


その後、志望校合格し、春から始まる高校生活を前に、期待と不安で宙ぶらりんになっていた俺は夢を見た。

大阪電気の街、日本橋入学祝いお金を握りしめて、FM放送のための機材を買いにいく夢だった。

何故か、ピエール瀧バンブーラジオの主が同行してくれて、俺に色々とアドバイスをくれる。

棚に並べられた、無線機の列を眺めながら、俺はこれから始めるFM放送の構想にワクワクしている。


目が覚めた。そして、朝日の中、それが夢だとわかった時、本当の寂しさが襲ってきた。

俺の好きな音楽を一緒に楽しめる友人は、本当は一人もいないのだ。

中学友達AphexTwinAmbient Worksを聞かせても曖昧な笑みを浮かべるだけなのだ。そんなわけのわからん音楽よりこれ聴けよ、と渡されたカセットテープにはボンジョビミスターBIGが90分詰まっている。trfじゃないだけマシだけど、俺にはこの良さがさっぱりわからないのだ。

同じように、誰も、誰一人、AphexTwinの初期アンビエント空気感や、カールクレイグの無機質なマシンドラムの良さなどわからない。

俺はどうしようもなく一人だった。そしてそれは、春から始まる進学校での高校生活でも同じだろう。いやもっとひどいかもしれない。

夢で訪れた日本橋無線ショップに、俺は1週間前に実際に行っていた。自分FM放送を始めればあるいは、と思ったのだ。

膨大な機材に圧倒され、マヌケにも「FM放送をしたい」と馬鹿正直に店員に告げた俺は、表情を一変させた店員に「それは犯罪からね。帰ってくれる?」と追い出されたのだった。


幸いクラブミュージックはその後、ファッション文脈を得て一大ムーブメントを巻き起こした。送信機の代わりにシンセを買って宅録するようになっていた俺にもその手の友人が何人もできて、俺は一人ではなくなった。

ブームが終わって、俺が挫折して、シンセを全部売り払った今でも、彼らとの親交は続いている。

彼らとたまに昔話をする度に、俺はバンブーラジオを思い出す。向こうは俺のことなんて知らないだろうけど、今でも俺にとってバンブーラジオの主は、音楽を好きになって最初に出来た頼もしい先輩で、そして大切な友人だからだ。


皆がオフラインになった冬の夜、決してチューニングできないどこかの周波数で、あのアッパーでどうしようもなく頭の悪いレイブテクノが、あの時のままノンストップで流れ続けている。

俺は、まだそういう夢を見ている。


追記:海賊放送と書きましたが、バンブーラジオが本当に違法だったのか、実は知りません。でも電波が飛んでる範囲からして、当時のコミュニティFMに許された範囲は超えていたように思う。あと、念の為書いておきますが、この文章違法行為を助長する意図はありません。不正電波ダメゼッタイ。いい子は各種法律守ってネットでやりましょう。

 
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