はてなキーワード: 調剤とは
監 視 指 導 ・ 麻 薬 対 策 課
向精神薬は、その乱用の危険性と治療上の有用性により、第1種向精神薬、第2種向精神薬、
第3種向精神薬の3種類に分類されています。第1種向精神薬にはメチルフェニデートなど、
第2種向精神薬にはフルニトラゼパム、 ペンタゾシンなど、第3種向精神薬にはトリアゾラム、
(1) 譲り受けた向精神薬は、次により保管しなければなりません。
② 保管する場所は、 業務従事者が実地に盗難の防止に必要な注意をしている場合以外は、
かぎをかけた設備内で行うこと。
〔例〕
a) 調剤室や薬品倉庫に保管する場合で、夜間、休日で保管場所を注意する者がいない
日中、 業務従事者が必要な注意をしている場合以外は、出入口にかぎをかけること。
b) ロッカーや引き出しに入れて保管する場合も、夜間、休日で必要な注意をする者が
いない場合には、同様に、ロッカーや引き出しあるいはその部屋の出入口のいずれか
にかぎをかけること。
知らねー
自分で調べてくれ
近年では、自動分包機の設定ミスでウブレチド錠を誤投薬しまったうえ、その事実を知ったにもかかわらず患者に服用中止の指示等をせず、患者が死亡してしまったという事件がありました。この事件で調剤に関わり、報告をしなかった管理薬剤師は、業務上過失致死罪で起訴され、禁錮1年執行猶予3年の判決がなされました。この他にも、ワーファリンの過量投与によって患者を死亡させたとして、調剤および監査をした薬剤師がそれぞれ業務上過失致死罪で略式命令により50万円の罰金刑に処せられた事例などがあります。
薬剤師には「薬剤師が医薬品のプロでありつつ、処方箋の内容に疑問を持たなかったことに対する過失」があり得るらしいんで、裁判されたら負けるな
生後4週間の乳児に対して医師が通常投与量の5倍以上のマレイン酸クロルフェニラミン、3倍以上のリン酸ジヒドロコデインを処方
出された医薬品を少なくとも2回服用させたことで乳児が呼吸困難・チアノーゼ状態になり、入院
上記裁判例では薬剤師が医薬品のプロでありつつ、処方箋の内容に疑問を持たなかったことに対する過失が指摘されました。結果として裁判所は医師の処方箋ミスの責任を薬剤師にも取らせ、共同不法行為として損害賠償を命じています。
熟語は中国語に由来してるから、基本的には漢語の語順(SVO)が適応されることになる。
ただ、和製漢語については日本語の語順で作られているものも存在する。
・酒造(OV):酒を(O)造る(V)だから「造酒」が正しい
・鬼滅(OV):鬼を(O)滅ぼす(V)だから「滅鬼」が正しい
「店休日」についてだけど「店を(O)休む(V)日」だから「休店日」が正しく、「定休日」は「定めて(副詞)休む(V)日」だから「定休日」が正しい。
※ここで「正しい」と書いたのは漢文構造に従っているという意味であり、漢文構造に従ってない漢語が「間違っている」というつもりはなく、日本語構造に従った漢語もまた中世から見られる伝統的なものであると補足しておきます
増田が覚える違和感は漢文構造に反していることが原因だと思う。
ただ、日本語の語順に従った熟語には「酒造」「人選」など定着しているものも多く、漢語の語順に従っていないという理由だけで誤用であるとは一概には言えない。
(ちなみに「調剤」は、「ととのえる、調合する」という意味を持つ「調」と、「薬を配合する」という意味を持つ「剤」を並べたVVの構造で、「進行」などと同じで似た動詞を並べた型みたいです。)
「店休」なんて日本語は存在しないんだから、これは間違った言葉だ。
せめて「休店日」だろうし、なんなら「休業日」でもいいのに。
「定休日」との混同、あるいは不定休における休業日を示したくて「定休日」につられて「店休日」という言葉が使われるようになったのだろう。
(「水曜定休」の店が水曜日に「店休日」と掲げているのは実に意味不明だが)
一昔前は頭の悪い店主が書いているんだろうと思ったが、今や割とどこでも見る表現になってしまった。街で見るたびに身が震え上がるほどの不快感に襲われる。
いくら広く使われるようになったとはいえ、間違った言葉には変わりない。
この「間違い」を上手く説明したいのだが、日本語的、言語学的に適当な説明が思い浮かばない。
誰か説明してくれ。
例えば「休館」「開店」「組閣」「調剤」みたいな、「店休」の反証になる言葉は思い浮かぶんだが、これは日本語学的に何て言うんだ?
近所に個人クリニックと調剤薬局(仮に〇〇薬局としよう)が約50mくらい離れて位置している。
特別な理由がない限りはクリニックで処方された薬は〇〇薬局で調剤してもらっており、事実上そのクリニックの専属薬局みたいなものだ。
しばらく前からクリニックの隣接地の空き地にて、何かが建てられる工事が行われていた。
最近、工事の内容を示す看板が出されたがその内容が「××薬局新規開業予定」というものだった。
薬局名称からも看板の内容からも〇〇薬局が移設するのではなく新規出店と推測される。
〇〇薬局の生命線はクリニックの処方箋調剤なのに、隣接地に薬局ができたらみんなそっちにいっちゃうじゃん。
〇〇薬局が潰れるの確定じゃん。
日本の中小薬局と手を組むことでAmazonは薬品の在庫などは持たず、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA179IU0X10C22A8000000/
しかし、今日ホッテントリ入りしている記事ではAmazonが直接調剤薬局事業に参入するかのように書かれている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/010db8d186a76d00da68bd383983a6e0531fecfc
その根拠がAmazonが薬剤師の求人を行っているからということらしいのだが……。
どちらにせよ調剤薬局への影響は少なくないの間違いないところである。
こういったネットによる処方薬の配送というのは政府としても推奨していく方針だと思う。
薬の調剤や薬品の在庫数量の管理などの実作業に忙殺されている。
これは果たして正しいあり方なのか?
本来、薬の調剤や薬品の在庫管理などは労働を集約して一箇所で行ったほうが効率がいいのは言うまでもない。
また、これから労働人口が減っていくのに今までのように調剤薬局が乱立する中、
一軒一軒に医薬品卸が薬を運んだうえで調剤薬局が処方して患者に渡すなどというビジネスモデルが成立していくとも考えにくい。
ネットを利用した処方薬の配送というECのプラットフォームを利用した業態へと変化していくのは自然な流れだ。
その上で薬剤師はネット対面を利用して、よりきめ細かく患者に対して交流していくほうが望ましいだろうことは言うまでもない。
Amazonがまたまた何かやらかすのか?と否定的に受け取る方々もいるだろうが必ずしも悪い話ではないことは知っていてもらいたい。
その薬を(花粉の季節に)随分長く飲んでた様だが、一番最初に飲んだ時に変な精神状態になったという感覚は無かったのだろうか?
それと気付かないほど「おかしく」なったということか?
家族が居るならば「なんか急に変になった!!」「耳鼻科行ってから!!!」とか気付かないものか?
あと、木の芽時に変になる人は元々おかしいのがパワーアップしちゃうわけだから、「春だけおかしい」ってのは怪しむべきだよね。
みんな処方薬も市販薬もあまり気にせず服用しているが、もっと神経質になった方が良いと思う。
うちの親はパブロン常用してて「完全に中毒です」と思ってるんだけど、諌めてもやめようとしない。
こういうイカレぽんちが居るから、売薬だからとて安心は出来ない(あと、パブロンは販売禁止にしてほしい。パブロンが無くなっても他に山程風邪薬はある)
「病院 特別室」でググっても事例があまりないので、体験談を書いてみようかなと思いました。
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ある疾患を抱えていて、入院して手術しないと死ぬよと主治医に言われ、都内屈指の大学病院に2週間ほど入院することになった。もちろん保険適用で差額ベッド代ゼロ円の部屋もあったが、他人のいびきなんぞ聞きたくもないし、クチャラーにあたった日には最悪なので、個室を希望した。
個室の差額ベッド代はミニマム3.5万円スタートで、この時点で「高くね?」と思っていた。それでも貯金を切り崩してまでも個室にしたかったので、個室の種別がいくつかある中で、第1希望から第3希望まで選んで入院受付に提出した。
入院3日前までの新型コロナウィルスの陰性証明、つまりPCR検査必須と言われ、渋々有給を取ってPCR検査を受けに行った。最近のPCR検査はすごく、鼻に長い綿棒をぶっこむやつではなくて、唾液から検体の検査ができるらしい。
後日、PCR検査の結果報告が来る前に第1希望〜第3希望の個室の空きがなく、大部屋しかないと言われて愕然とした。そもそもPCR検査で陽性だったらどうしていたんだろうという疑問はありつつも「あれ、個室の上に特別室っていう項目あったよな」と思い出し、「特別室の一番安いやつは空いてないですか」(安いやつでもミニマム6万円)とダメ元で聞いてみたところ「確認してまた折り返します」とのことで連絡を待つことに。
空いてなかったら、大部屋かぁ鬱だな手術キャンセルしようかなと思い至るくらいには大部屋が嫌だったわけだが、数時間後「今特別室の10万円のお部屋しか空いていないのですが、6万円の金額で構わないのでこちらでご入院いただけますか」と連絡が来た。目を疑う…いや耳を疑ったのだけど、6万円で10万円の特別室か…いったいどんな部屋なのかワクワクだったのと、入院に対する不安と支払うお金に対する無の感情が入り乱れてきたが、医師看護師完備の高級ホテルに泊まるんだと自分に言い聞かせ、なるほど、これが病院の経営で利益を上げる手法なんだな、学びになるなと思いながら6万円の部屋で渋々承諾した。ちなみにPCR検査の結果は陰性だった。
入院当日、そもそも特別室と個室の違いが、電気ケトルと大きいテレビ置いてるか置いてないかくらいにしかわかっていなかったのだが、入院受付に受付をしに行った。
特別室の驚きは、まずこの入院受付から始まるわけだが、アドオンで1日あたり2,000円出すと一般病棟とは異なった食事が提供されるらしい。怖いもの見たさでとりあえず申し込んでみた。
次に特別病棟に案内された。特別病棟は最上階にあり、直行エレベーターに乗り最上階まで行ったのだが、エレベーターのドアが空いた瞬間、また驚いた。
床がタイルではなく淡いレッド色のカーペットが全面に敷かれており、エレベーターホールにはいかにも王室で使われているような高級そうなイスがずらりと並べてあった。
そして病棟とエレベーターホールには硬い扉での隔たりがあり、扉はALSOKのカードでタッチするか、インターホンでナースステーションから開けてもらわないと開かない仕様になっていた。
「は?ここ病院だよね?」と二度見三度見、そして降りる階を実は間違えたんじゃないかと思い、エレベーターに再度乗るも、入院する病棟の階に間違いはなかった。
昔、別の疾患で別の大学病院の大部屋に入院したことがあるのだが、その記憶が嘘のように思え、エレベーターホールで頭を深く抱えていたところナースステーションから固く閉ざされた扉を開けて、看護師が来た。
「ご入院でございますね。ご連絡承っております」…「承っております…?」何かの聞き間違いかと思った。看護師と言えば忙しさのあまり、悪気がないにせよ患者に冷たくあしらった対応をしてしまうような方もいる中で、「○○様の看護を務める山田(仮名)でございます」と開口一番に言われ、高級ホテルだと比喩したのはあながち間違いではなかったのだなと思った。
病室へ案内され、病室の説明を受けた。病室自体にツッコミたいことが山程あるが、「看護のリーダーをしております。何かありましたら、お気軽にナースコールでお呼び出しくださいませ」と言われ、頭を下げて病室から看護師が立ち去っていった。
「お気軽にナースコール…?」ナースコールって気軽に押していいものなのか、これは押すなよというフリなのか、と頭の中で葛藤をしていたが結局押さなかった。手術が終わるまでは。
そして病室自体のツッコミだが、病室自体もそうだが、病室までの廊下にはコケシ(?)が置かれていたり、吹き抜けがあったり、病室の扉も内鍵が付いていない以外は、さながら高級ホテルのようだった。なお、外側からは鍵をかけられる仕様になっているため、コンビニへ行くときは病室に誰も入れない。鍵はナースステーションで預けるようなシステムだった。
なお、病室にはクローゼットもあるし、収納もたくさんある。いや、こんな収納使わないけど…。そして部屋の奥に佇む1つのべッド。広い部屋の中にポツンとあるベッド。
さぞかしふわふわで柔らかいんだろうなと腰をかけたら、やはり病院のベッドは堅く、しばらくの間首が痛かった。部屋はゴージャスなのに、なぜ病院のベッドは…
ところで、今回10万の部屋になってしまったわけだが、これよりも上のグレードもあり、そのグレードの部屋はALSOKを使わないと入れない仕様になっていて、その部屋の目の前はナースステーションになっていたので、
緊急事態でもすぐに対応できるような造りになっているのだろう。そして、こういう部屋を使うのはおそらく要人とかなんだろう。永遠にご縁はないだろうが。
有名政治家、芸能人やどこか有名上場企業の社長が一般病棟ですれ違わないのは、こういった特別室という概念があるからなのかと腑に落ちた。
申し込んだ特別室専用の食事だが、デザートにパイナップルが出たり、キウイが出たり、ハーゲンダッツが出たり病院食とは思えないほど豪華で美味しかった。なんなら不摂生な毎日の食事よりも健康的で美味しく食べられる。
手術当日、担当看護師がオペ室まで案内してくれた。そういえば大部屋って案内されないで、自分で行って勝手に受けてねだったような気がしたが…。特別室だからなのか、それともこの大学病院の方針なのか定かではない。
全身麻酔だったということもあり手術を終えた当日の記憶が若干曖昧ではあるが、痛すぎて鎮痛剤をもらうためにナースコールめっちゃした。ごめんなさい。
点滴を交換する際に、看護師が部屋を訪れるわけだが入る時にノック3回して「今よろしいでしょうか?」と確認してくれる。すごい。ちなみに消灯時間を超えたあとはノックなしに勝手に入ってくるので、めちゃくちゃビックリする。ちなみに、部屋の電気をすべて消したあとは、携帯ライトで点滴を交換しているようだった。
主治医が来たり、当直医が来たり、看護師がバイタルを測りに来たりと、あんまり気は休まらなかったが、大部屋よりかはのんびりできたのかもしれない。
結局ゲームを持っていったのに痛くてゲームどころじゃなく、スマホで朝から晩までずっとTikTok見て過ごしてた。
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そんなこんなで退院日になり、退院の準備を進めていた。手術代よりも病室の差額ベッド代のほうがもちろん高くて目ン玉が飛び出た。
そして特別室の患者は特別らしく、専用の紙を受付に渡すとどんなに並んでいても割り込みで支払いができるシステムになっている。
他の待ってる人に申し訳ない気持ちが込み上げてくるが、上級国民はこういったのが日常茶飯事なのかと思うと本当に格差ってあるんだなとしみじみ思いながら、割り込みしつつも、大人のクレジットカード分割払いで会計して家に帰った。
会計料金はお察しください。
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まさかここまで反響があるとは思ってませんでした。退院祝いに大量飲酒しながら書いたので稚拙な文章ですが、こういう世界もあるというのが伝わってよかったです。
ちなみに、特別室に泊まるともれなく大学病院のアメニティが無償で付いてきます。入院時の持参物でティッシュやシャンプー、トリートメントなど書かれていたので持っていったのですが、アメニティや特別室そのものに付属されていて、持ってく必要なかったなと若干後悔しました。
あと、面白かったのは、特別室の患者のみ新聞を取ることが許可されていたり、今でこそ不要ですが、はてブにも書かれていた方がいるように外部との連絡手段としてホテルにあるような電話機が設置されていたりしてました。
部屋のイメージは、はてブで既に比喩されている方もいらっしゃいますが、私が泊まった部屋は、ドクターXに出てくるいわゆる特患向けの部屋が広さと見栄えがイメージとして近いです。私自身も入院するまではドラマの世界だけだと思っていたのですが、そうではなかったようです。
ただ、ドクターXのように大門未知子先生が唐突に入ってくるような構造にはなっていないので、これは現実とはかけ離れているなとは思いました。おそらくエレベーターホールのALSOKで医師・看護師の入退室は管理されていると思います。
書くのを失念していましたが、もちろんトイレと浴室付き、独立洗面台付きの特別室でした。特別室によっては前室やキッチン付きの部屋、またはてブに書いている方もいらっしゃいましたが、病院によっては執務室や会議室が備え付けのところもあるようです。
ちなみに、浴室・トイレに鍵をかけられないのと、浴室やトイレのあちこちにナースコールボタンが設置されているのは、やはり病院だなと思いました。
入院中あまりにも暇で調べていたのですが、予約診療っていう概念があって、お金を払うことで(しかもワンショット2万円前後)一般患者と一切顔を合わせないで決められた枠内の時間での診察から調剤まで一気通貫して行うサービスを提供している病院もあるようです。こういうサービスの恩恵を受けるのは、まさしく要人といったところでしょうか。
医師からのサービスの質に関しては、一般患者も特別患者もあまり変わらないのかなというところです。当直医の方はすごい無愛想でしたし、主治医は毎度丁寧な喋り方です。ここは医師によるのでしょう。
看護師からのサービスについては、一般病棟よりも優れているなとは感じました。ただ、医療明細書を見ると「特別看護点数」が取られていたので、この点数から看護師たちの教育は一般病棟とは異なっているのかもしれないです。ちなみにホテルマンの如く、キャリーケースは看護師が率先して運んでくれたりしてくれました。
静かな夜だった。
幼い娘が電気を消して欲しいと言うから、わたしは寝室の常夜灯を消して、ベッドに横たわる彼女の隣に寄り添った。
「ママ、苦しくない?」
娘はそう言うと、チューブを自分の鼻から外して差し出した。わたしはそれを受け取らず、代わりに小さな手を握り返した。
「お母さんは大丈夫、もう少し吸っていなさい」
そう言うや否や、自分の肺の底から咳が込み上げてきた。身体を反転させ、娘に背を向けて咳き込んだ。
同じ病気にかかっているから、こうすることにたいした意味はないのに。
わたしは枕元のチェストに置いたティッシュペーパーをとって痰を吐き出した。
薄闇の中で、それはどす黒い血のようにも見えたが、さすがに気のせいだろう。
娘は健気にわたしの背中をさすり続けた。その柔らかな皮膚と荒いスウェットの生地が擦れる音は、世界で一番優しい音だと思った。
幼な子の咳は軽やかで愛らしいけれど、自分が重たい咳を吐き出すときよりもよほど強くわたしの胸をしめつけた。
......あのとき帰省しなければこんなことにはなっていなかったかもしれない。ワクチンだってまだ打ってなかった。
そのことを娘に詫びると、彼女はこう言ったのだ。
「そうだね、流れ星も見れたね」
あの夜、星が天球の上を一筋に流れたとき、とっさに願ったのはこの子の幸せだった。
「ねえ、ママ、お水が飲みたい」
「待ってて」と言って、わたしは橙色のルームランプをつけ、スリッパを履き、ベッドから立ち上がった。
足元には、フローリングを埋め尽くすほどたくさんの観葉植物が並べられていた。
わたしたちの感染がクリニックの外来で証明されて、だけれども入院できる施設がどこにもないと知ったとき、帰りに立ち寄ったドラッグストアで買ったものだ。
髪の薄い男性店員が、眉を八の字にして申し訳なさそうに宣告した。
だったらどうしたらいいのよ! といつものわたしだったら食い下がっていた場面だろう。
もうそんな元気がなかったのもあるし、何より社会全体が何かを諦めてしまったかのようなムードに包まれていたから、わたしは何も言えなかった。
調剤室の前のベンチにはたくさんの人が座っていた。
みんな、まるで負けることを知った試合を消化するチームメイトのように、うつむいて、冴えない顔つきをしていた。
結局、わたしたちは酸素ボンベの代わりに、たくさんの鉢植えを買ってきた。
植物が光合成をしてくれたら、部屋の酸素濃度が上がるかもしれないという、浅はかな考えだった。
ドラッグストアからの帰路、緑を満載した赤いコンパクトカーの後部座席で娘は咳き込みながら笑った。
「また行きたい、フラワーパーク」
「うん、行こうね、必ず連れていくよ」
返事はなかった。
白いマスクと、冷えピタシートに挟まれた可愛い目を細めて、彼女はそのまま寝てしまったのだ。すーすーと穏やかな寝息を立てながら。
わたしは安堵して、赤信号が青に変わったのにしばらく気がつかなかった。発進を急かすクラクションがやけに遠くから聞こえた。
あれからまだ三日しか経っていない。いや、二日だったか? すでに、寝室とダイニングキッチンを往復するだけでも身体が重く、息苦しい。
洗っていないコップに水を注いで、一口飲む。
水はもとより味がないから助かる。
昼間に食べた卵がゆは、まるで湿地帯から採取した粘土のようだった。まだ喉の奥にひっかかっている気がする。
味が濃いはずのものを口にして、その風味を感じられないことがあんなに不愉快なこととは知らなかった。
昼間に洗って水切りかごに伏せておいた子ども用のプラスチックのコップに水を注いで、寝室に戻った。
ルームランプに照らされた黄色いコップには、アニメのキャラクターがプリントされていて、屈託のない笑顔を永久に固定していた。
娘はマットレスに手をついて起き上がると、壁にもたれかかって、コップの水をゆっくり飲んだ。
枕元に転がっている酸素ボンベをちらりと見る。これが最後のボンベだった。
フリマアプリで、とんでもない高額で取引されていたものだ(たぶん違法だ)。だから何本も買えなかった。
配送を待っていられなかったから、車で片道二時間かけて取りに行った。古い戸建てに住む、中年の男性だった。
まいどあり、と言ったあの笑顔が、がたがたした歯が、家の臭いが、忘れられない。
......彼は一体どうやってあんなにたくさんのボンベを手に入れたのだろう……どうだっていい!
帰りの高速では意識が朦朧として、事故を起こしそうになったっけ。
黒光りする筒の頭の部分におもちゃみたいなメーターが付けられていた。針は、かなり傾いていた。
パルスオキシメーターで測定したわたしたちの酸素飽和度は、故郷の山の、空気の薄い山頂にいるくらい低い。
どうりで頭がぼおっとするわけだ。
N-95マスクをつけた医師に、少なくとも一分間に五リットル以上の酸素は必要と言われたが、もったいないからもっと絞って使っている。
酸素に味はないけれど、吸えば少し楽になるのがわかる。
「美味しかった」
娘がコップを差し出した。まだ水は半分も残っていた。
もういいの? うん、もういい。
チェストにコップを置くと、ランプを消して二人で横になった。それから娘の体を抱きしめて、小さくて丸い頭を撫でた。
髪の毛は柔らかく、少し湿っていて、甘い匂いがするような気がした。
「ママ、それ、ほっとする」
腕の中で彼女はそう言った。子守唄を歌ってあげたかったが、もう声を出すのもしんどくなっていた。
確かに、わたしの身体は震えていた。でもそれは寒さから来るものではなかった。
「大丈夫、咳を、こらえて、いる、だけ」
声がなるべく震えないように、切れ切れに言って(あるいは本当に息が続かなかったのかもしれない)、わたしは頬を伝う一筋の涙が彼女に落ちないように頭を上の方に向けた。
それにつられて、娘も顔を上げた。
ベッドサイドのチェストの上に窓があった。正方形の小さな窓だ。
ただ今が真っ暗な夜ということだけがわかる。
娘が、ママ、とささやいた。
どうしたの? と尋ねると、彼女は目をつむってこう答えた。
「星が、きれいだね」
わたしは頷いて、
「ねえ、あのとき、流れ星を見て、何をお願いした?」と聞いてみた。
返事はなかった。