はてなキーワード: 水飲み場とは
その相手、仮にXとしよう。彼は生白い肌にのっぺりとした顔立ち、常に乏しい表情で、たまにくぐもった不明瞭な発声で片言を発する以外にはぼんやりと席に座り、教室移動や下校の時間になるとのっそりと動き出して上肢を揺らしながらふらふらと歩いていくのだった。鼻の下には鼻水の垂れた跡、口元には涎の跡が常にこびりついており、服には食べこぼしの染みが点々と付いていた。
彼とは何故か、何度席替えがあってもいつも隣の席になるのだった。私はその度に彼とは机を数センチ離しておいた。彼と同じクラスになる前は、いつも私がそうされていたように。しかし、その度に周りのクラスメート達は「なにやってんだよ、増田、Xが可哀想だろ」「そうだよ、仲良くしてあげなきゃ」とか言っては、机をくっつけ直すのだった。私がまた机を離しても、いつも元通りになっていた。
彼は、授業中、たまにぼそりと話しかけてくることがあった。「教科書、貸してよ」「消しゴム貸して」私は無視することに決めていた。一度、彼に鉛筆を貸したらその口に咥えられ、唾液でびしょびしょにされて返されたことがあったからだ。「貸してやれよー、増田」「そうだよ、Xくんが困ってるじゃん」「助けてあげなよ、ひどいねー」クラスメートから口々に非難されても、私は拒んだ。「増田さん、どうして貸してあげないの? 冷たいのね」教師から問い詰められても、言うとおりにするわけにはいかなかった。
やがて、クラスメート達からは空き時間の度にこう囃されるようになった。「X、増田のことが好きなんだってー」「そういえば、いつも席隣同士になるからね」「増田もXの事、好きなんじゃね」「付き合っちゃえよー、変な奴同士、お似合いだもんな!」私は「違う! やめてよ! 私はXくんなんか好きじゃないのに!」と怒鳴っていたが、その度に「照れんなよー、ほんとは好きなくせに」「そうだよ、結婚しちゃえよ!」「面白れー、変態同士のカップルじゃん!」などますます盛り上がって騒ぎ立てるので、諦めて黙っていることにした。ただ、黒板や机の上に私とXの名前付きの相合い傘をでかでかと落書きされる度に消して回るだけだった。
ある日の休み時間、図書室に行こうとして廊下へ出た私を男子達が取り囲んできた。また、いつもの「からかいタイム」かと思って黙って身構えていると、「増田ー、お前、Xのこと、好きなんだろ!」「だったら、結婚しろよ、好きなんだろ!」「そうだよ、キスしちゃえよ、キス! 好きなんだろ!」言うなり彼らは私の腕と服を掴んだ。そして、別の男子の一団がXを教室から引っ張ってきていた。彼は相変わらずぼんやりとした表情のまま、だまって引きずられていた。そしてXは藻掻いている私の前に引き据えられた。私を捕まえた男子達は「嫌だー! やめて! やめて! 嫌だってばー!」と喚く私の頭を押さえつけ、Xの顔に近づけた。「キスしろよー、X!」男子達はXの顔を私の顔に押し当てた。Xは少し戸惑ったような表情をしていたが、「言うとおりにしろよ! X! 増田にキスするんだよ! 口同士をくっつけろ!」そう言われると、無表情で、しかし懸命に私の頬に唇をくっつけた。べちゃっ、と唾液のかかる音がした。
「いいぞ! やれやれ!」「口にしろよ!」「もっとくっつけ! 抱きつけよ!」男子たちがXの顎を掴むと、彼の口を私の口元へ近づけた。彼の鼻水のこびりついた顔面が目の前にあった。彼の唇が私の口元に張り付いた。唾液の酸っぱい匂いと味が伝わってきた。
「やったー、キスしたぞ、キス!」「増田はXとキスしましたー!」「X、おめでとー、これで将来、増田と結婚だな!」「これで、増田は『X・○○子』になるんだな」「きっと、キチガイ同士だから、キチガイの子供ばっかり生まれるんだろうなー、面白そうじゃん」「そしたら、また、からかってやろうぜ」「でも、キチガイの子供って、長生きできないらしいよ」…解放された私はふらふらと水飲み場に向かった。必死に口をゆすいだ。水道水の錆びた味で唾液の臭さは消えた。何度もこすり洗いしたので頬がひりひりした。
教室へ戻ると、女子たちがにやにやしながら私に話しかけてきた。「増田さん、Xくんとキスしたんだー!」「違うよ! 男子達が無理矢理…」私の答えには彼女たちは耳を貸さず、「増田さん、やっぱりXくんが好きだったんだね」「ファーストキスじゃん! まだ小学生なのに!」「気持ち悪ーい、私はXくんとなんてぜったい嫌、近づくのもいやなのに。よくそんなこと出来るね。増田さん、やっぱり変だよ。変態だったんだね!」「そうだよ。変態だよ。だから、誰にも相手にされないんだよ。私たちも嫌だからねー!」「ずっと、Xくんといればいいよ。どうせ、他には誰にも相手にされないんだから。変態同士、お似合いだよー!」
私は黙って席に戻った。不思議にも涙は出てこなかった。周りの景色が浮き上がり、自分の周りだけが見えない膜で覆われているように感じられた。Xは何もなかったように席に座り、爪を弄っていた。すべて消えてしまえばいい、早く終わってしまえばいい、と考えていた。
まず小中学校には「退学」や「停学」という制度自体が無い(学校教育法施行規則第26条第3項:義務教育における懲戒退学の禁止、同4項:学齢生徒への停学の禁止)だから何をしても学校は「放り出し」たりしないしできない。
高校における停学は、停学にあたる行為をした、という事実を認識させ、出席できることが当たり前のことでないことを今一度思い起こさせるための「処分」である。二度と復活が無いというものでない以上、学校は生徒を「放り出し」ているわけではないし、むしろ再び抱え込むために指導している。(ちなみに「停学」が「懲戒」として行われることは、まず無い。なぜなら正式の懲戒として停学を行うとそれは生徒の履歴として残さなくてはならないし教育委員会にも報告とかしないといけないので厄介。なので、あくまでも自主的な「謹慎」「出席停止」という形を取るのが普通。)
それから、親には養育『義務』があるけど、学校に課せられる『義務』とは『(望む者に、教育を受けられる)機会を与える義務』であって、自ら拒否する人間に無理矢理機会を与えるというのは基本的にサービス部分に過ぎない。馬を水飲み場に連れて行っても、無理矢理水を飲ませることはできない。学校は工場ではない。右から原料(児童)を入れれば左から製品(卒業生)が出てくるような装置ではないし出す義務が学校にあるわけではない。
さらに、普通に選択される多くの公立学校は教育のセーフティネットではない。小中学校に関しては退学という制度自体が無いから、極論言えば一日も通わなくても教師が出張してきたりして形だけ無理矢理「卒業」させるが、高校に関しては私立という選択肢もあるし中退者向けの私立単位制高校、フリースクールなどもある。大学へ進みたい人向けには、高認(旧大検)がありその予備校がある。現在、多くの場合通信制・定時制の高等学校がその受け皿になっているが、都市部では大抵キャパシティを超えかけているし、そもそも本来それは受け皿のための課程ではない。
個人的には、一度公教育を自ら「放り出し」た人間であっても、望めば再度公教育が受けられるように門戸を広くすべきだと考える(たとえば中学校で不登校になったのに「卒業」させられた生徒が、望めば再度公立中学校に通えるように。)が、許容量や指導上の問題、対応の難しさ(18歳以上が通学する場合喫煙を許可すべきか?、学生を狙った犯罪を企図する大人を排除できるか?、一般の大人に対して『校則』を適用することの問題、など)からほとんど実現していない。
市原さんを送れと言われたものの部屋の場所を知らないわけで本人の横を歩いてついて行くほかなくその本人がどうみても飲み過ぎでふらふらとしているという状況でこれは帰り着けるのかなあと心配したのですが案の定コンビニ脇の小さな公園にさしかかったときに立っていられなくなって入り口の看板にすがりつきええとね増田君言いたい事があるんだけどという市原さんの台詞の続きを待っていたらええとええとと繰り返した後にごめんやっぱり気持ち悪くなったと言って公園の脇の公衆トイレへ突進して行ったのでこりゃ大変だと追いかけるとバッグやら上着やらが滑り落ちて転々としていたので拾い集めつつトイレへ行くとけろけろと戻しておりしばし背中をさすって助けていたのですが充分に戻しきったらしく落ち着くと水で口をゆすぎたいというので水飲み場へ行ったのですが出てきた水が非常にカビ臭く悪いけどミネラルウオーター買ってきてと息も絶え絶えに言うので目の前のコンビニへ行って買ってくると象をかたどった滑り台の根本で膝を抱えて座り込んだ市原さんがごめんねありがとうと言って受け取った水をごくごくと飲み干しているときにそういえばさっきの言いたいことってなんですかと聞いてみたら盛大にむせたのでああすいません後で良いです後でといったらとてもほっとした顔をして立ち上がり歩き出したので荷物を持ってついて行くとええとあのことだけどやっぱり今日は言うのをやめとくわ気にしないでといわれてはあわかりましたとか言いまたしばらく行くとふと立ち止まって空を見上げるので何かと思ったら月が出ており二人で数分眺めていた後で私の部屋ここよとその背後のアパートを指さされたので玄関までついて行ってああ荷物ここに置いておきますねと顔を上げた瞬間スリッパを履き損じた市原さんが前から振ってきて後頭部がこちらの額にしこたま当たったかと思うとさとこちゃんが悲鳴を上げており落ち着いて落ち着いてどうしたのさとこちゃんと声を掛けたらあーあーだいじょうぶまた怖いおじさんに首しめられるのかなとおもったのというのであまりの境遇に大丈夫ですよ今は安心して良い場所なのですご飯食べますかと聞くと食べる食べると元気な声になったのでほほえむとインタホンが鳴ってまたびくりと体をこわばらせたので私もおっかなびっくり玄関へ出て行くと両隣の住人が心配そうな顔でどうかしましたかというので困るとさとこちゃんが私の陰から顔だけ出してごめんなさい転んじゃって大声出したのとさらりと嘘で説明しあらこの子はどなたという話に当然なったのですがええと僕の彼女の娘なんでそのうち娘になりますが訳あって匿っているのでできればここにいる事はご内密にというとまあよくわからんけどあんたの頼みならねえと納得してくれたので普段の近所づきあいは大事だよねえと思いながらお騒がせしました失礼しますとほほえみながらドアを閉め私の袖をつかんでいるさとこちゃんをそのままキッチンへ誘導して箸を渡して袖を放してもらいご飯を食べさせたところ少し野菜炒めが塩辛いとクレームを出されたもののたくさん食べてくれたので安心してソファーで食休みをしていると目の前にしゃがみ込みじいっと私を見るのでどうしましたと聞くとなんでもないと言ってベッドへ行きど真ん中で毛布をかぶって丸くなってしまった。つまりソファーで寝るわけですね私。