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2022-12-23

沖縄モービル天ぷらについて

日本返還占領中の沖縄米軍放出品のオイルを使った天ぷらがあったっていうのは結構有名なトリビアなんだが、これが「モービル1を使った」って変換されて流布されてるのをよく見るのだ。例えばこの増田ブクマとか。

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20221221194930

 

自分モービル天ぷら見た事もないんだけど、この正体は判るのでちょっと解説したいあるよ。

因みにモービル1は沖縄返還後の1974年市販開始された化学合成油で、鉱油が基油なので摂取すると死んでしまう。

 

モービル天ぷらの油の正体は(恐らく)「ひまし油

結論から言うとモービル天ぷらに使われたのはひまし油であると考えられる。

実はこれは高性能機械油であり、薬品でもあるし、毒でもある。

 

ひまし油の超高性能油膜特性

一般的機械潤滑油というのは石油蒸留して作られる「鉱油」だ。原油蒸留すると上の方からガソリン(の気化ガス以下同じ)-灯油-軽油-重油-鉱油-アスファルトという風に分離するのでそれを冷やして液体として回収する。

ガソリン灯油軽油を燃料として使うと鉱油も沢山出来るのでこれをエンジンオイルに使う訳だ。こういう風に出来た鉱油をそのまま使う時代原油の産地によって鉱油の質が違った。

この方式で格段に質が良かったのが米国ペンシルバニア産で、例えばPennzoil(ペンゾイル)っていうオイルブランドなんかはペンシルバニア産を誇った名前なんである黄色地にヒビが入った黒い鐘のポップな意匠ナスカーレースとかで見た事ある人も居るかもしれない。あの割れた鐘は有名な「リバティベル」で、ペンシルバニアシンボルで、アメリカ独立奴隷解放シンボルなんであるな。

 

ペンシルバニア鉱物油の油膜特性は優れていた。油膜特性とは、高温で金属同士が擦り合わさっても油分が残り続けるって事だ。

だが、植物油であるひまし油の油膜特性もっと優れている。エンジンが高温になってぶん回されるレース航空機レシプロエンジンターボエンジンなどではひましじゃなきゃダメ、ていうシーンが多かったのだ。

 

因みに他の植物油ではダメである。例えばサラダ油である大豆油中華料理屋のキッチンを見れば判るが、料理程度の温度(200~300°)で酸化重合してしまう。固まってしまうのだ。亜麻仁(アマニ)油は常温でも酸化重合する。オリーブ油サラサラし過ぎて機械の油膜保護は無理。菜種油(キャノーラ油は菜種油を品種改良で毒性を除去したものだ)は安い機械油であって飛行機などのエンジンに入れるのはもってのほか

 

この高性能っぷりにあやかったオイルメーカーが「カストロール/Castrol」でcastor oilの事である

どんだけ高性能かというと、1995年頃までレースに使われるのはひまし油一択という感じですらあった。カストロールR30というオイルが有名だ。

 

ひまし油は寒さと酸化に弱い

こんな高性能ひまし油だが、植物油である為に弱点もあり、寒くなると固まってしまう。だから使用前に保温が必須で、冬にエンジンに入れっぱなしで冷えたエンジン始動するみたいな使い方は出来ない。固まっているのでオイルが流れずに焼付き事故になってしまう。

次に、酸化し易い。脂肪酸なので酸素と結びついて重合し、固まってしまう。

から缶詰に入れて保管し、使用直前に缶切りで開封して入れるという使い方になる。使用後、レース終了後や飛行機の着陸後はそのままにしておけず、抜き取りと洗浄が必須だ。でもレース車はレースごとにエンジンオーバーホールするし、飛行機特に軍用機は飛行ごとに重整備もするのでこれもさして問題が無い。B29なんてフライトごとに全エンジンを新品かオーバーホール済み品に交換していた。

こういう感じなので街乗りの車などに使うのは難しい。

 

そしてオイル缶詰も未開封であっても酸化重合で粒状の塊が出来てしまうから製造から数年の「消費期限」がある。戦時なら飛行機がどんどん飛んで消費されるが、平和になれば消費量は減る。

でも有事に備えて備蓄必要から期限切れのオイルが沢山出る→放出品になるという訳だ。

から鉱物油の放出品というのは余り無かったが(消費期限なんてほぼ無いに等しいから)、ひまし油の方は未使用品がどんどん出てきたはずだ。

 

ひまし油薬局にもある

薬局でほう砂とかクレゾールとかグリセリンとか塩化ベンザルコニウム液とか古いアイテムを置いてある所にはひまし油も置いてある。

これはひまし油が昔から便秘の薬として利用されてきたからで、日本薬局方に収録されている。

日本薬局方ってのは漢方とか蘭方とかと同じで、薬のレシピを国が指定してあるもので、同名称品ならどの会社のものでも同じ内容のもの流通している。

日本人と言わず世界中文明ではひまし油便秘薬であって、摂取すれば下痢しまくるというのは常識として共有されていた。

そしてそれは毒性があるからなのだが(タンパク質毒)、その毒性はちょっとぐらいじゃ死にゃしねぇってくらいって事も共有されてきた。

 

って事で、米軍オイル缶を頻繁に放出して、castor oilと書かれていたら、「これってひまし油じゃけん。天ぷら油が無いが、これで天ぷらしたらどうか?下痢しまくるが死にゃあせんべ。」と沖縄人が考えたに違いない。自分沖縄人ならきっとそう考える。

 

モービル天ぷらは多分サーキット匂い

前述のように25年前まではレースひまし油(というかカストロールR30一択みたいな感じがあったんだが、今ではR30ディスコンになってしまってサーキットで使ってる人もいなくなった。

だがその前の時代サーキットは独特な香ばしい匂いがする場所で、それがひまし油R30燃える匂いであった。

今この匂いを嗅ぎたいと思ったら、河原模型飛行機遊びしてる人が多い場所や、カートサーキットミニバイクレースサーキットお勧めだ。

後者サーキット東京北部だと埼玉県の秋ヶ瀬公園隣にある秋ヶ瀬サーキットなんかが近い。浦和所沢バイパス通称浦所の隣にあるのでちょっと道を外れて河原下りると灼けるような匂いがしてくると思う。

因みにレンタルカートは4ストロークで遅い上にあの匂いがしないので注意が必要だ。これは本物のレーシングカートは2ストで、潤滑に使うオイルガソリンに混ぜて燃やしてしまう為だ。だから灼ける匂いがするのだね。

 

そしてこれがおそらくモービル天ぷら匂いである

焼きおにぎり小海老天とエビフリャーお好み焼きごま油多めチャーハンビーフステーキと新品のオーブンに火を入れた時の匂い混ざったような香ばしい匂いだ。

結構いい匂いだが天ぷら匂いとしては正直どうなのか。

 

再現してみたいモービル天ぷら

今はカストロR30も無くなってしまったが、薬局に行けばひまし油は売っているし、amazonドラッグストアでは500mlや1Lのものも売っている。こういう大きいのは自家製化粧品で使うようである

ひまし油100%であれば用途外使用だが2ストエンジン潤滑油として使っても大丈夫なはずだ。

また、azという潤滑油メーカーMEG-004 Circuitというレース潤滑油をだしている。

また、広島高潤というメーカーは「ひましじゃけん」というひまし油ベース化学合成油を出している。なんだその商品名は。高い商品なのに…

http://www.kz-hiroko.com/?pid=98820823

 

このうちひましじゃけんは化学合成で成分をいじってあるので危険だが、残りはひまし油100%なので、こいつらでモービル天ぷら再現することは可能だ。

ここまで詳細に解説すると再現したくなるのが人情である

なので、次はモービル天ぷら体験リポート投稿したいと考えているが、激しい下痢やばらむつ油の無意識漏出のような社会的死を賭してのチャレンジになるので慎重に行きたい。

モービル天ぷら趣旨を考えると日本薬局方のひまし油じゃなくてAZ MEG-004 Circuitの方でやるべきだろう。

もし「食用ではない油で天ぷらして死亡」のようなニュースが流れたら、量を食べ過ぎるほどサーキット天ぷらは美味かったのだな、とか、あれほど自分で書いてたのにひましじゃけんでやっちまったんだな、と思って頂けたら幸甚である

2016-08-22

辻斬に切られて幕府すごいと思ったでござる。

http://anond.hatelabo.jp/20160822143611

先日、回向院のあたりで辻斬に腕を切られたときの話をするでござる。

(※清河八郎殿の事件とは別件です)

まりに突然なことだったのでもちろん驚いたでござるし、

下手人への怒りの感情もあるでござるが、

なによりこの件で一番強く思ったのが、

幕府すごい」

ということで候。

…拙者の語彙力のなさはさておき、

地方ではアンチ幕府的な噂が目立つ中、

幕府は良いところもあるよ、ということをまとめたくてこの武露愚に筆をとった次第。


【その1】捕方すごい

まず事件当日

詳しくは伏せますが、とにかく回向院で知らない人に刀で腕を切られましたでござる。

下手人から逃げつつ、番所へ駆け込み、場所や状況などを説明しつつ…

と、番所へかけこんでから2〜3分経ったところで後方から

鬼平犯科帳でお馴染みのテーマソングが聞こえてきたでござる。

まりの迅速さに、

拙者の事件とは無関係たまたま火附盗賊改方が通りがかっただけかと思ったでござる。

しか長谷川殿はすぐに近くに止まり

別方向から忍者と来た旗本の若殿?と共に犯人を捕まえてくれたでござる。

もしあの時、すぐに来てくれなかったら

第2、第3の被害者が出てもおかしくござらぬ。

また、長谷川殿の後追いでやってきた同心たちも、刃物を持っている下手人に対しても怯むことな

しっかりと取り抑えてくれ候。

町方にはなかなかできないことです。

本当にすごいでござる。


【その2】藩の同輩すごい

下手人が捕まりほっと一安心

間もなく拙者の忠勤する藩から同輩も到着し、

すぐに拙者の腕を何かで包んでくれ候。

その時の拙者は呑気に、

「とりあえずなんか包んでくれたし、医者のところへ行かなくても良いんじゃないかな」

なんて思っていたのでござるが、

周りの人達必死町医者を探してくれているので

余計なことは言わず大人しくしていたでござる。

何件かの医者に断られ、

やっと受け入れてくれる養生所外科先生が不在と由。まあ小石川療養所には本道(内科)の医者しかおらぬとは聞いた話ではござる。

とりあえず診てもらえるだけありがたいので、そこにお願いすることにしたでござる。

後になって分かることでござるが、拙者の傷はそれなりの深さがあったため

縫わないと血が止まらないような状況だったそうでござる。

藩の方がそこまで分かってくれていたかどうかは分かり申さぬが、

拙者はただぼーっとしていただけで、

色んなところへ早馬を飛ばし必死に受け入れ先を探してくださったり、

本当にすごいと思ったでござる。

また、養生所へ向かう最中に、同乗した鬼の平蔵がわたしの気を紛らわせようと

色々と話しかけてくださり、それもとてもありがたかったでござる。


【その3】小石川養生所すごい

養生所へ到着すると、本道の先生

自分は専門ではないので、明日また専門の先生に診てもらってください」

と前置きした上で、診てくれたでござる。

とりあえず血止めしようとしたようでござる、

血が止まらないので縫うことになったでござる。

今まで体を縫ったことがない拙者は驚き申したが、

なにより先生自身が、覚悟を決めたような神妙な雰囲気を出していたので

拙者は「先生がんばれ」とだけ思ってかしこまってござる。

先生は、慣れていないのが拙者でも分かるぐらい

一生懸命に、丁寧に、一針一針確認しながら縫ってくれたでござる。

時間ほど経ち、なんとか縫い終わって

誰よりも安心しているのは先生のように見えたでござる。

慣れないながらもしっかり対処してくれた先生すごい。

そして、終始汗だくで目が泳いでいた拙者に、優しく話しかけてくれた蘭方医さんすごい。


【その4】再び捕方すごい

治療が終わり、今度は奉行所へ移動し事情聴取でござる。

みんなが想像するあの御白州

子どもの腕を引っ張るところでござる(違います)。

担当のお奉行が、事件の様子を細かく文章でまとめてくれるでござる。

時々質問されるので、できるだけ的確に答るでござるが

(こんなことを申すのも何でござるが)

基本的被害者は暇でござる。

でももしお奉行がいなかったら?

自分自分の状況を、矛盾がないようにまとめるのはとても難しいでござる。

およそ二刻ほどかかり、まとめられた文書(もんじょ)と証拠物件

事件概要が的確に抑えてあり、

第三者が見ても状況がわかるものとなったでござる。

詳しくはよく分からぬでござるが、この証拠たちをもとに

今後、下手人の罪を裁いていくことになるようです。

下手人を捕まえ、事実関係を明らかにし、もろ肌を脱いで桜吹雪を見せることまでやってくれる

奉行すごい。本当にすごい。


【その5】三味線屋すごい

翌日、外科先生の代わりということで紹介された三味線屋へ行ったでござる。

三味線屋は傷口を見てすぐ、

「縫い直しだね」とおっしゃっていて

せっかく前日に一針一針一生懸命縫ってくれた糸を切るのは小川先生申し訳が立たない気持ちになったでござるが

糸の専門家が言うことなので素直に従って候。

そして三味線屋は、さすが専門なだけあって

こちらが心配する暇もなく、手際よく糸を張っていくでござる。

結果的に、三味線屋曰く「数えきれないぐらい」縫ってくれたでござる。

首も吊った(テレビ用の糸なので来週には消えているらしい)

ので、傷口はおそらくほぼ残らないだろうとのことでござった。

前日の本道の先生には充分感謝しつつも、

やっぱり仕事人はすごい。


【その6】江戸すごい

以上のように、たくさんの方々、たくさんの江戸の仕組みによって

拙者は事件以外の不満を感じずに、傷を塞ぐことができたでござるが、

1つ気がかりなのが、治療の費えについてでござる。

下手人へは怒りもあるでござるが、

拙者は死んだり不便が残ったりした訳でもないので

そこまでの恨みはないでござる。

ただ、もう、本当に大した額ではないのでござるが

治療金子ぐらいは払って欲しい…と思っていたでござる。

すると、そのことを話した訳ではないのに、、

お上の方から

拙者の治療費を上様が払ってくれるという話を聞いたでござる。

どういう流れでそうなるのかは不明でござるが、

徳田新之助なる旗本の正体を口外しないとかの条件があるらしいでござるが)

こちらはまったく刀を抜かないのに一方的にケガをさせられて

治療費まで被害者が払うのはおかしい、ということで払ってくれるそうでござる。

吉良殿をよってたかって惨殺した赤穂のテロリストどもに聞かせてやりたいでござる

そのような仕組みがあることは全く不案内でござったし、

そのような仕組みがなければ本当に被害者は損ばかりでござる。

僅かな金子でござる、そのおかげで拙者の心は大分軽くなり申した。

江戸すごい。

そしてそんなお金があるのはもちろん、

普段からお国のために尽くしてくれる幕府の皆様のおかげです。

本当にありがとうございまですでござる。

普段奉公していると気付かないことばかりでござるが、

江戸にはこんなにたくさんの仕組みがあり、うまく機能しているでござる。

中には問題があることもあるかもしれない、それでもなんとかうまくいくように

今日自分の知らないところで誰かが尽力してくれている。

そう思うと、幕府ってすごいでござる。

 
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