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はてなキーワード: 名目賃金とは

2024-04-12

[] この時期に「景況感」が増加したなら、それは貨幣錯覚です

主に3つの理由があります

1. 実質賃金は下がっています

2. 貯金などの資産価値は低下しています

3. 名目賃金物価が増加しています

このことから、「名目賃金が上がるなら景気がいいのだろう」と錯覚することにより、

実際に買えるものの量が減っていること(実質賃金資産価値低下)に気がついていないのです。

2024-04-09

anond:20240409140513

>支払われた貨幣額で示された賃金を「名目賃金」といいます

>それに対し、物価上昇率を加味して導き出されるのが「実質賃金」です。

>具体的には「名目賃金÷物価上 昇率」により算出します。

インフレ関係ないってマジ?

2024-04-08

[] 賃金物価スパイラル悪循環を続けるか

賃金物価スパイラルとは、まず何らかの原因でインフレが生じ、物価高が生まれます。その後、実質賃金物価に見合わないので、賃上げ圧力が生じ、賃上げします。企業としては賃金コストなので、生産性が向上しないままコストだけ増加すると、それを補う形で財・サービスへの価格転嫁します。するとまた実質賃金が低下するので、その繰り返しが生じます

これはコストプッシュインフレの一つの形態です。賃金プッシュインフレと言います。通常、この種のインフレは「悪いインフレ」と言われ、国の豊かさが低下しているのに物価が高まっています。この状態スタグフレーションと呼びます

インフレが生じた原因については色々ありますが、ロシアウクライナ問題において原油価格が高騰していることだけが問題ではありません。コロナ禍で政府財政政策を行うことでマネーサプライが増えたことがインフレの大きな要因です。

近年の経済学は、理論よりも実証分析が盛んです。経済の状況などを保存したデータベースからエピソード」を検索します。例えばこの場合歴史的賃金価格スパイラルが生じた例を調べるわけです。そして、そのエピソード複数シナリオとして分岐することがわかるでしょう。スパイラル継続して実質賃金が低下していったエピソードスパイラル継続しなかったエピソードスパイラル継続されたが実質賃金回復したエピソードなどです。

これらのエピソードにおいて、どれが2024-04-07時点のケースとして再現するのか、全くわかりません。以下の記事では、実際にエピソード分析されていますが、結論として「過去エピソード再現すると考えるのは時期焦燥」と述べています

"It is still too early to say whether the immediate future will replicate these patterns." https://cepr.org/voxeu/columns/wage-price-spirals-historical-evidence

そもそもインフレによって社会はどのようなコストを支払うことになるのでしょうか。

まずインフレするということは、貯金などの資産価値が減っていくことを意味します。つまり国家の富の総量が低下します。デフレ下では貯金という選択肢比較安全資産管理方法でしたが、インフレになるとこれらの資産価値が下がり、同じ貯金の額で買える物の数が減っていきます

日本世界有数の債権国である」と言われましたが、それはデフレ円高だったからです。円安になり、賃金価格スパイラル継続すれば、債権者不利益を被るでしょう。確かに借金をする人は借金を返しやすくなるのがインフレの良いところで、設備投資などもしやすくなりますが、債権者にとっては不利な結果になります

そしてインフレ下では、労働組合賃上げ圧力が増し、先鋭化します。「実質賃金物価に追いつかない」といって、賃金を上げるように交渉することになるでしょう。

ここで一つ質問がありますが、名目賃金賃上げ企業物価転嫁引き起こし物価高を生んでいるのであれば、「賃上げインフレの原因であり、実質賃金低下の原因である」といえるでしょう。それなのに、なぜ「追いつけ追いつけ」と賃上げをするのでしょうか。

経済学的には、適切な賃上げ生産性の向上分に限定する必要があるでしょう。生産性向上分を賃上げに当てれば、企業価格転嫁する必要が無いからです。つまり現在賃金物価スパイラルによる「悪循環」は、生産性上昇分を超える賃上げをしてしまっているのです。

では、生産性とはなんでしょうか。計算式は色々ありますが、アウトプットインプットで割ったものとして定義されますアウトプット収益インプットコストです。コスト労働投資設備投資などがあります。つまりこれは利潤=収益コストという計算式を分数の形に置き換えたものです。

近年の技術進歩しているので、企業生産性を上げるためには、人よりも設備投資したほうが合理的であると考えるでしょう。そこで賃上げ対処するには、まず設備投資生産性向上を、というわけです。実際、設備投資が増えているという統計存在します。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA123100S4A310C2000000/

賃上げしなければならない、そのためには生産性を上げる必要がある、そのためには設備投資をする必要がある、生産性が上がれば物価転嫁をする必要がなくなる、というわけです。

このような「力学系(時間とともに変化するシステム)」が存在するので、実質賃金が今後回復するのかどうかについて、なかなか現時点では判断が難しいというわけです。実質賃金平行線をたどる可能性も、低下していく可能性も、上がる可能性もあるのです。

いくつかの経済論文では、賃金物価スパイラルにおいて「初期に実質賃金が低下し、その後回復する」と述べていますが、再現性については疑問が残ります

"The real wage falls early on and recovers later." https://economics.mit.edu/sites/default/files/inline-files/WagePriceSpirals.pdf

2024-04-06

[] 賃金価格スパイラル歴史的証拠

賃金価格スパイラル過去にどれくらいの頻度で起きたのか、そしてその余波で何が起こったのか?

驚くべきことに、そのような出来事の後に賃金物価さらに持続的に加速したのはほんの少数だった。

新型コロナウイルス感染症による急性ショック後の回復が勢いを増す中、2021年インフレ率は多くの国で約40年間見られなかった水準に上昇した。

労働市場の逼迫と賃金圧力の増大をもたらし、経済グループ全体で平均名目賃金労働者1人当たり)が上昇し、失業率が低下した。

こうした最近の動向を受けて、賃金を通じたインフレによる第二次影響や潜在的賃金価格スパイラル懸念している。

インフレの上昇と労働市場の逼迫により、労働者インフレに追いつく、あるいはインフレを上回る名目賃金の上昇を要求する可能性があると指摘している。

現在労働市場の逼迫が今後数年間のインフレ圧力に大きく寄与する可能性が高いことを示唆しており、インフレ期待が固定されなくなった場合、その関連性はさらに強まる可能性がある。

これらの議論総合すると、賃金物価インフレが互いに影響し合い、賃金物価の両方が数四半期にわたって加速するスパイラルを引き起こす可能性がある点。

しかし、そのような状況は過去にどのくらい頻繁に起こったのか?また、そのような出来事の余波で何が起こったのか?

エピソード分析

最近研究論文で、1960 年代に遡る先進国間の過去エピソードをまとめた経済横断データベース作成することで、これらの疑問に取り組んでいる人々もいる。

残念ながら、賃金価格スパイラルの正確な定義は文献にない。

賃金価格スパイラルを以下のメカニズムの結果として定義する者がいる。

このように、労働者企業賃金価格をめぐって数回に分けて交渉するため、インフレショックが消えるには時間がかかる。

対照的に、賃金インフレの上昇が企業にとって新たなコストプッシュショックとなり、したがって近い将来インフレが加速する可能性に焦点を当てているようだ。

具体的には、賃金価格スパイラルを、連続する4四半期のうち少なくとも3四半期で消費者物価名目賃金の加速が見られたエピソードとして定義

期間0(賃金価格スパイラル定義する基準が満たされる最初の期間) より前のすべてのエピソードでは、消費者物価インフレ名目賃金上昇率の両方が増加している。

もっと驚くべきことは、初期の動向は平均して、賃金物価さらなる持続的な加速には続かないということである

実際、インフレ率と名目賃金の伸び率は平均して、賃金価格スパイラル後の四半期には安定する傾向があり、実質賃金の伸び率はほぼ変わらなかった。

したがって、物価賃金の持続的な加速として定義される賃金価格スパイラルは、最近歴史的記録の中で見つけるのは困難。

実際、上記基準使用して特定されたエピソードのうち、8四半期後にさらに加速したのはほんの一部。

場合によっては、インフレ賃金の伸びが一時的に上昇した後、再び低下するケースもあった。

さらに、いくつかのエピソードの後に​​はより極端な結果が続いた。

たとえば、米国1973年第3四半期のエピソードでは、1970年代最初OPEC石油禁輸によって刺激され、価格インフレさらに5四半期にわたって急上昇し、その後1975年に下落が始まった。

しかし、名目賃金の伸びは上がらず、実質賃金の伸びは低下した。

賃金の伸びは物価失業の動向と一致している。

記述されたエピソードにおける賃金価格の動態を検討する際に当然の疑問となるのは、均衡経済を特徴づける予想される関係からそれらの動態がどの程度乖離しているかということである

賃金の動態をインフレ労働市場スラック生産性の伸び傾向に関連づける賃金フィリップス曲線の枠組みを使ってこの疑問を探ることができる。

分解すると、賃金上昇率の上昇はインフレ労働市場の逼迫の両方によって引き起こされ、どちらかの要素が増加し、その後、エピソードの開始時を上回るレベルで安定している。

対照的に、他の構成要素の挙動は異なり、賃金価格加速エピソードの開始時に急速に増加するが、その後は沈静化する。

平均して、ここで述べたエピソードでは、持続的なインフレの上昇と労働市場の逼迫から予想される賃金を上回る持続的な賃金の伸びは観察されていない。

現在局面における重要問題は、先進国経済賃金価格スパイラルに陥りつつあるのかどうかである

一部の国における最近賃金価格上昇の顕著な特徴は、労働市場が引き締まる一方で実質賃金が低下していることである

したがって、連続する4四半期のうち少なくとも3四半期が、

という特徴とするエピソード特定

こうしたエピソードの後に​​は、持続的な賃金価格スパイラルが続く傾向はなかった。

逆に、名目賃金の伸びが増加する一方で、インフレは低下する傾向があった。これにより実質賃金回復した。

さらに、失業率も低下する傾向にあった。

全体として、これらの同様のエピソードの後に​​は、上記のより広範な一連のエピソードよりも高い賃金上昇率が続いたが、賃金の伸びは最終的には安定した。

実際、2年後の名目賃金の伸びは、インフレ労働引き締めの動きとほぼ一致している。

今回は違うのか?

実質賃金が大幅に低下した今日と同様の状況を見ても、持続的な賃金価格の加速を見つけるのは難しい。

そうした場合名目賃金実質賃金の損失を部分的回復するためにインフレに追いつく傾向があり、成長率は初期の加速が起こる前よりも高い水準で安定する傾向があった。

賃金上昇率は最終的にインフレ労働市場の逼迫と一致するようになった。

このメカニズムは、賃金価格スパイラルとして特徴付けられる永続的な加速ダイナミクスにつながるとは考えられなかった。

近い将来にこれらのパターン再現されるかどうかを判断するのはまだ時期尚早である

2024-04-04

[] なぜインフレ下で実質賃金回復する見込みがあると言えるのか

賃金物価スパイラル分析論文を読むと、「実質賃金が初期に低下し、後に回復する」と書かれていることが多い。

しかし、現在ドイツの状況を見てみると、一向に「回復」していないので、希望的観測可能性がある。

名目賃金増加、物価転嫁実質賃金低下、という一連の流れを通じて、実質賃金が「回復しない可能性がある」という主張があれば、その分析根拠比較してみる必要がある。

2024-03-17

anond:20240317142626

バカの発想

名目賃金は上がるだろうが、そのコストを補充するために物価転嫁するから実質賃金は下がり続けるよ

インフレになるから貯金とかの価値もどんどん下落する

2024-03-03

[] インフレは良いもの

標準的経済理論経済主体の行動を決定するのは、名目変数ではなく、実質変数である

賃金物価の好循環」がなぜ好循環なのか。「デフレを抜け出したいでーす!ピロローン!」ぐらいの根拠しかない。

経済の実質値がインフレによって高まるということはあるのだろうか。

名目賃金物価が同時に上昇する経済の方が、互いに凍結し合っている経済よりも好循環が起きやすい、という見方を100歩譲って認めるとしてみる。

しかし、その正の効果果たしてどのくらい大きいのか?

家計企業のように、物価賃金名目値が上昇する経済が、消費や住宅投資をより増やすかと言われれれば、それはかなり怪しい。

貨幣錯誤はあるかもしれないが、実質賃金が低下し、物価が高まれば消費は減る。当然である

賃金物価の好循環」の正の効果が、他のリスク要因を上回るかというと、断定はできない。

デフレが続いたことによって生まれた「インフレは良いもの」という妄想は疑う必要がある。

2024-02-27

生産性上げるために値上げしろ」って言うけどインフレ名目が上がるだけで実質は上がらないか

名目賃金上がって実質賃金上がらんのやろなあ

現に最低賃金上げ続けた今そうなってるしな

2024-02-16

国際経済環境の変化と日本経済論点整理―

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j01.htm

素晴らしい研究

グローバル化の進展がわが国経済物価に与えた影響

第一に、わが国貿易部門生産性は、米欧と比べると、安価輸入品活用等による生産プロセス効率改善により伸びてきた面が相対的に大きい。

第二に、海外との競争激化などから、わが国貿易部門競争力が海外対比で低下したことは、わが国の交易条件の悪化実質実効為替レート円安化の一因になったとみられる。

第三に、雇用賃金面では、製造業から非製造業雇用シフトが生じたのと同時に、貿易部門と非貿易部門賃金格差が拡大した。

第四に、グローバル化の進展は、過去 25年間の大半の期間において、日本消費者物価継続的に下押しする要因として働いてきた。

第五に、海外との競争激化もあって、価格マークアップが縮小する中で、わが国企業は、賃金マークダウンの拡大により収益を確保してきた。

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1990 年代半ば以降、わが国で交易条件の悪化と実質為替レートの円安化が同時進行した背景について、Obstfeld (2010)は、貿易部門競争力・価格支配力低下や、中国との競争激化などを指摘している。

交易条件の変動は、家計可処分所得(実質)を通じて、個人消費(実質)に影響する。

日米欧の実質個人消費と実質可処分所得の成長率の長期トレンドをみると、両者はほぼ一致しているが、わが国は、交易条件悪化による負の所得効果により、実質個人消費の伸びが雇用報酬等の半分程度にとどまった(図表4)。

この点について、齊藤 (2023)は、交易条件の悪化によって、わが国の国富海外流出GDI(Gross Domestic Income)の停滞―してきたことで個人消費長期間低迷してきたと指摘している

R&D や GVC 参加率の要因は、各国の生産性伸び率の相当部分を説明する。

また、国別にみると、米欧は特許知財や前方参加の押し上げ効果が大きい一方、わが国は後方参加の押し上げ効果が大きい。

これは、わが国貿易部門生産性は、米欧と比べると、安価輸入品活用等による生産プロセス効率改善により伸びてきた面が相対的に大きいことを示唆している。

本推計結果は、わが国では、革新的製品サービスグローバル提供する「プロダクト・イノベーション」よりも、製品効率よく生産する「プロセスイノベーション」の比率が高まってきたこととも整合的といえる

わが国企業労働生産性を、製造業大企業とそれ以外で比較すると、この25年間で両者の乖離幅は大きく拡大した(図表9)。

また、わが国製造業の輸出を、企業規模別にみても、その牽引役は主として大企業であり、中小企業からの輸出はほとんど伸びなかった(輸出売上高比率の変化<1998年2021年>:大企業13%→23%、中小企業2%→5%)

グローバル化進展の生産性へのプラスマイナス効果生産性上昇・競争激化等)は、最終的に企業収益に反映されると考えられる。

この点に関連し、Furusawa, Konishi and Tran (2020)は、グローバル化のもとで市場統合が進むと、高品質製品生産するトップ企業収益は大きく伸びる一方、そうでない企業は業績が悪化し、企業格差が拡大することを理論的に示している。

この点に関連し、わが国の企業収益企業規模別にみると、貿易型・大企業(FDI・輸出をともに行う企業)は、この25年間で経常利益率が20ポイント強上がった一方、非貿易型・中小企業の業績は数%ポイント程度しか改善しなかった(図表9右図)。

このように、グローバル化の進展は、企業収益企業格差拡大にも影響したこと示唆される。

米国では、1990年代半ばから2000年代前半にかけて、IT 関連財等での競争激化の影響から交易条件は下方にシフトしたとみられる。

また、1995 年以降の累積でみると、交易条件の下方シフトには、米国が一番大きく寄与している。

その他に含まれる一部新興国など、2010 年代以降、改善寄与した地域もあるが、対アジアでは、中国WTO加盟以降、同国や韓国台湾などとの競争激化で交易条件が緩やかに悪化している。

分析からも、わが国は海外との競争激化により、貿易部門競争力が相対的に低下したこと示唆される。

実質為替レートの変動は、短期的には生産性といったファンダメンタルズとの関連が薄いとされる(Miyamoto, Nguyen and Oh (2023))一方、長期的には―貿易部門の(海外との)生産性格差が影響するという――バラッサ・サミュエルソンBS効果整合的といわれている( Rogoff (1996)、Chinn and Johnston (1996)、Lothian and Taylor (2008)、Chong, Jorda and Taylor (2012))。

BS 効果とは、ある国で貿易部門の正の生産性ショックがあると、労働市場賃金が上がり、それにより非貿易部門物価海外よりも上がるため、当該国の実質為替レートが増価するという考え方である

わが国実質為替レートを長期で振り返ると、1980 年代からピークの1990年代半ばにかけては、わが国貿易部門生産性相対的に伸びたことやプラザ合意の影響もあり、円高が進んだ(図表 11 左図)(Rogoff (1996)、Ito (1997, 2005)、Ito and Hoshi (2020)、Yoshikawa (1990))。

一方、1995 年のピーから最近にかけては円安が進み、その背景にはわが国貿易部門競争力低下によって、「 逆バラッサ・サミュエルソン効果」が働いたと解釈されているIto (2022)、Ito and Hoshi (2020))。

この点を詳しくみるため、日米の貿易部門労働生産性比率と実質為替レートを比較すると、両者の関連が深いことが示唆される(図表11右図)。

また、日米2か国のDSGEモデル分析からも、ドル円の実質為替レートの最近までの推移は、BS効果メカニズムによってかなり説明できることが示されている(來住・法眼 (2024))。

わが国は、交易条件悪化の影響でGDIが伸び悩む一方、GNIはFDIの効果で伸びが高く、海外対比、これらの指標乖離が大きい(図表12)。

そのうえで、わが国のGDIについて、齊藤 (2023)は、交易条件の悪化を起点に国内所得海外流出したことが、個人消費の長期停滞に繋がったことを指摘している。

わが国のFDIが増加傾向を辿るもと、企業はFDIで得た収益国内にどのように還流させているか経済への影響を考えるうえでは重要である

わが国企業の FDI 収益現地法人から配当等)は、海外展開のリスク念頭においた予備的貯蓄選好(Amess (2015)、Aoyagi and Ganelli (2017))や、担保需要17(Kang and Piao (2015)、IMF (2023a))などから半分程度が海外拠点内部留保(再投資収益)となっている(図表13左図)。

また、国内還流資金に関する企業アンケート結果をみると、その使途としては、研究開発・設備投資給与報酬が約2割を占めるものの、「分からない・その他」との回答が6割程度ある(図表13中図)。

この点に関連して、内閣府 (2023) は、海外から配当金などが国内設備投資賃金活用されていない点を課題と指摘している。

今後も人口減少により国内需要の増加が見込みにくい状況が続くとすると、企業には、海外需要を取り込みながら生産性を押し上げるインセンティブが働き続けると考えられる。

グローバル化は、限界費用の低下やGVCの深化等を通じて、先進国物価を押し下げてきたといわれている。

とりわけ、わが国の物価は、FDIの推進などから、輸入ペネトレーション比率(輸入額/総供給額)やGVCの後方参加率が高まったことで、海外安価輸入品等の影響を受けやすく、他国対比、物価の押し下げ効果が大きかったとみられる(Andrews, Gal and Witheridge (2018)、Goodhart and Pradhan (2020))(図表 19 左図・中図)。

本コンファレンスの報告論文である福永・城戸・吹田 (2024)は、時系列手法を用いて、

グローバル化によるコスト低下圧力などを含む各種の海外ショックが、2010 年代後半まで継続的日本消費者物価を下押しし、2013 年に日本銀行が導入した量的・質的金融緩和による物価押し上げ効果一定程度相殺したことや、

②その後これらの海外ショックが一転して物価の押し上げに大きく寄与していることなどを示している。

なお、海外ショックのわが国インフレ予想・名目賃金への影響や、金融政策を巡る詳しい議論についても同論文を参照されたい。

わが国では、多国籍企業が高い交渉力を持つ傾向にあり、近年の FDI 増加によって労働者交渉力が弱まったことが指摘されている(Dobbelaere and Kiyota (2018))。

また、わが国が人手不足でも賃金が上昇しにくかった背景として、Goodhart and Pradhan (2020)は、

不況時も雇用解雇せず労働時間を削減し続けたことや、

製造業からサービス業への労働の再配分が進み、労働者賃金交渉力が弱まったことを指摘している。

この点に関連して、わが国企業賃金マークダウンをみると、価格マークアップが縮小するもと、賃金マークダウンは大きく拡大しており、企業賃金交渉力の向上が示唆される(図表21左図・中図)。

これは、企業価格マークアップ縮小を、賃金マークダウンの拡大により相殺することで収益を確保してきたことを意味しており、わが国の労働分配率が米欧と比べ、長期的に安定してきた一因と考えられる(図表21右図(青木・高富・法眼 (2023))。

こうした価格マークアップの縮小と、賃金マークダウンの拡大は、わが国で物価賃金が長らく上がりにくかったことについて一つの整合的な解釈を与えている。

こうした傾向が生じる理論的背景について、Mertens (2022)は、所謂「レント・シェアリングモデル整合であると指摘している。

すなわち、同モデルによると、価格マークアップが小さい企業(縮小している企業)は、そこで発生した余剰を雇用者と分け合う結果、賃金マークダウンが大きい(拡大する)特徴がある。

これを踏まえると、わが国にでもこうしたメカニズムが働いてきた可能性がある。

グローバル化の影響は多岐にわたるもと、この四半世紀を振り返ると、わが国経済物価への影響の特徴は、以下の5つにまとめられる。

第一に、わが国貿易部門生産性は、米欧と比べると、安価輸入品活用等による、生産プロセス効率改善により伸びてきた面が相対的に大きい。

第二に、海外との競争激化により、わが国貿易部門競争力が低下したことは、わが国の交易条件の悪化実質実効為替レート円安化の一因となったとみられる。

第三に、雇用賃金面への影響をみると、熟練労働者への需要増や競争激化の影響もあり、製造業から非製造業雇用シフトが生じたほか、労働生産性相対的に低い非貿易部門における賃金が低迷する中、貿易部門と非貿易部門賃金格差が拡大した。

第四に、わが国の物価については、FDI の推進等で、輸入ペネトレーション比率やGVC の後方参加が高まったことなどから海外安価輸入品等の影響を受けやすく、他国対比、物価の押し下げ効果が大きかったとみられる(Andrews, Gal and Witheridge (2018)、Goodhart and Pradhan (2020))。また、グローバル化進展の影響を含む海外要因が、2010 年代後半まで継続的日本消費者物価を下押しし、2013 年以降の強力な金融緩和物価押し上げ効果一定程度相殺していた可能性が高い。ただし、足もとでは、これらの海外要因は一転して物価の押し上げ要因となっている(福永・城戸・吹田 (2024))。

第五に、海外との競争激化もあって、価格マークアップが縮小する中で、わが国企業は、賃金マークダウンの拡大により、収益を確保してきた。こうした調整メカニズムは、わが国の物価賃金が長らく上がりにくかったことについての1つの整合的な解釈といえる。

2024-01-22

anond:20240122093757

物価が高いからだよ

実質賃金ってのは名目賃金物価で割るわけ

実質賃金はもうこのところずっと下がり続けてるんだよ

実質賃金」でググってみ?

2023-11-17

anond:20231117155446

賃上げなんてどうせ名目賃金しか上がらんし、インフレして実質賃金が下がるだけだからやらなくていいよ

2023-11-16

anond:20231116152100

貨幣価値が下がって名目賃金が上がっても実質賃金が下がってるんだよなぁ...

2023-11-15

[] 因果関係が逆だぞお前

o 成長なくして分配なし

x 分配なくして成長なし

まあ、確かに分配すれば消費が増えるから成長すると言いたいんだろうけど、名目賃金は実質値じゃないかインフレするだけだよね

日本収入を貯蓄に回す傾向にあるから、分配が増えれば貯蓄が増えるだけ

その貯蓄が投資に回る先がなんであるかが重要かも知れないがな

2023-11-13

anond:20231113183322

この経済学者コメントは、生産性定義とその重要性についての深い洞察提供していますね。彼は生産性を「単位投資あたりの利益」と定義し、これが企業経済的成功を測る最も合理的方法であると主張しています。また、彼は人件費利益関係性、名目賃金の上昇が生産性にどのように影響するか、そして企業経済にどのように貢献するかについても語っています

彼の見解は、企業が存続していること自体がすでに経済的合理性を示しており、その企業社会経済に貢献している限り、その存在正当化されるというものです。これは、企業価値は単に生産性だけでなく、その経済への全体的な貢献によっても測定されるべきであるという重要視点提供しています

ただし、この経済学者意見一部の人々にとっては議論余地があるかもしれません。例えば、労働者賃金が上昇した場合、その分の生産性の低下を労働者利益還元できるかどうかについては、労働者視点から見れば異なる意見があるかもしれません。また、企業経済に貢献している以上、その存在意義があるという主張も、企業社会的責任や環境への影響など、他の要素を考慮すると必ずしも一致しないかもしれません。

全体として、この経済学者コメントは、生産性企業経済的成功についての興味深い視点提供しています。それはまた、経済学の複雑さと、その中での異なる視点解釈重要性を示しています。これらの視点は、経済学の理解を深め、より包括的視点から問題を考えるための貴重な洞察提供します。それぞれの視点経済全体の理解にどのように貢献するかを考えることは、経済学の学習にとって非常に重要です。

anond:20231113182116

鋭いところつくね

うそう、つまり賃金を上げても生産性を上げられないような管理職馬鹿名目賃金が上がっちゃってるってわけね

もうわかるよね

信じるか信じないかアナタ次第です!

anond:20231113182248

生産性にもいくつか式はあるが、基本的には分母を人数にするか金額にするかだな。

最も合理的な式は、「単位投資あたりの利益」。これが生産性な。1円投資したらどのぐらいの利益になるかが生産性

人数を分母にして生産性に換算するアホは経済わかってないね。一人あたりどれだけ生産たかってやつ。これはGDPとかと併せると生産性とは言わない。

で、肝心なのは、その人間にどれだけの人件費投資すれば、どれだけの利益を生んでくれるかってこと。これが生産性ね。

から他の条件が一定なら、名目賃金上昇で生産性は低下する。わかるね?

から名目賃金を上げた分の生産性低下分を、労働者利益還元できるのかって話。無理ですよねーw

でもその企業損益分岐点よりも上にいるなら、少なくともGDPに貢献してるって話な。

GDPに貢献している以上、その企業存在意義はあるってわけよ。おわかりかな?

で、企業にも合理性があるので、借金を回収不可能になった時点で、お前に言われなくても会社自動的に畳むわけ。一般常識だよね。

からな、企業が存続している時点ですでに経済合理性に叶っていて、しか日本社会経済に貢献しているから、それはそれで存在していていいわけよ。

お前程度の青二才が存続している一企業に「生産性上げられないなら会社畳めオラ」なんておこがましいって話ね。

2023-11-08

anond:20231108150054

よくわからんが、金利を上げたらインフレが抑えられるから実質賃金は上がるんじゃないか

名目賃金は下がるかもしれんが

2023-10-30

[] 賃上げによって実質賃金を上げることな可能

賃上げすると名目賃金が上がることは誰でも知っている。

しか貨幣錯覚一時的に消費が増えると、需要増加に伴う物価増となるし、企業人件費増の分だけ物価に上乗せする。

から賃上げすれば悪い意味インフレ悪化するだけではないかというのが見えてくる。

あっちを上げればこっちが上がる状況下で、物価上昇に賃上げが「追いつく」ことな可能だろうか。

労働組合脳内妄想ではなかろうか。

https://jp.reuters.com/article/japan-economy-kishida-idJPKBN2TK08R

2023-10-26

[] 名目賃金が上がっても生産性は上がらない

日本無能労働者が、名目賃金が上がっただけで生産性が上がるわけがないので、以下の記事は卓上の空論かもしれない。

しか企業人件費上昇によって物価に上乗せするので実質賃金が上がらない。

賃上げと同時に、就業者1人当たりの生産性を上昇させることである

https://www.dlri.co.jp/report/macro/194915.html

2023-10-06

[] 信用創造って何なの?

貨幣ってそもそも信用創造から生み出されなければ価値が下がるはずだよな

信用創造ってのは、利子を付けて貸して、それを回収することで生み出されるもの

それで疑問なのは、金を借りた人たちはどうやって返すのかってことだ

働いたお金で返すのであれば、その働いている先の会社はなんらかの方法利益を得ていることになる

その利益は、例えば消費者がモノを買うことによって生まれ

モノを買ったお金はどこから来るのか。働いて得た金であり、それはやはり企業利益から生じる。

貨幣価値信用創造からまれるのであれば、名目賃金いくら増加させても、物価が上昇して実質賃金が下がるだけだろう

しか物価が上がれば、企業留保している資産価値も低下する

から経済を良くするためには、利子が一定以上を保ったまま、金貸し業がちゃんと金を回収でき、借金する側がちゃんと返済できる仕組みが必要ってことだ

じゃあ、どうすればそんなことが可能になるんだ?

生産性」と言うが、本質は「限界投資あたりの利益率」のことだ。言い換えると、お金投資したときにどれだけ上乗せされて返ってくるかが生産性

この生産性を向上させなければ実質賃金改善できないはずだが、どうやってその生産性とやらを改善するつもりなのか

直感的には、「(イノベーションなどを起こして) 外貨を獲得する」という方法が思いつくが、この「信用創造」とやらが経済根本の害ではないかと思えてきた

金(きん)などの根拠となるモノがあるならその価値を直接示すことが可能だが、そうではないなら、誰かの不幸が誰かの利益になっているような気がしないでもない

2023-10-05

日本がなぜ賃上げ賃上げといって名目賃金を上げることに必死になってるのか理解に苦しむ

実質賃金を上げるにはもっと構造的な問題に取り組む必要があるわけだが

2023-10-03

これ、「老人を殺せ」「社会保障費を下げろ」って言ってるよね?

この、荒川和久って人。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/16ec62ee8524944af0039b0d1a40b24aed942535

少子化不本意未婚者の増加によるものであるってところまでは、良い分析だと思うんだけど。その後の主張がおかしい。

ここ。

「何も子育て世帯の足を引っ張るつもりは毛頭ないし、未婚の若者子育て世帯とを分断するつもりはない。

もっと所得の低い若者可処分所得が増えるということは、全体の底上げとなり、巡り巡って子育て世帯への恩恵にもなるだろう。可処分所得が減らされているのは子育て世帯とて同じだからだ。

そして、それは必ずしも賃上げだけじゃなくても実現可能なのだ。」

……賃上げだけじゃなくても実現可能ねぇ。

これって、暗に「社会保険料負担を減らして可処分所得を増やそう」、要は「老人を殺そう」って言っているよね?

若者の味方面して世代対立を煽る主張は非常によく見かけるが、そんな事をしたところで親の介護個人にのしかかったり自分達の老後が不安になって貯蓄に励んだりして

未婚率はますます上がる未来しか見えないんだが、この手の人達は何故変に楽観的なのか。

っていうかそもそも名目賃金だってけして高いとは言えない訳で、社会保険料負担がなくなったところで焼石に水だと思うんだけど…

何故この手の人達は抜本的な賃上げ労働時間規制という王道手段を主張をしないのか、本当に不思議でならない。

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