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2016-04-19

近所の保育園迷惑」6%はほんとうに少数派なのか

世論調査: 近所の保育園迷惑だと思わない」86%

http://mainichi.jp/articles/20160419/k00/00m/040/009000c

この記事では、全国世論調査で「近所に保育園ができるのを迷惑だと思うか」という質問に対し、「迷惑だと思わない」という回答が86%を占め、一方で「迷惑だと思う」という回答が6%にとどまったことをうけて、「保育園を『迷惑施設』と考える人は少数派」と結論付けています

最初に断っておくと、単純に数字だけの比較でいえば、保育園迷惑派が全体に対する少数派であることは客観的に明らかであると言えますしかしながら、この質問は、保育園が実際に近所にある状態経験している人/したことのある人と、そうでない人では結果の絵姿は変わってくるだろうと思うのです。

では、保育園が近所にある状態経験している人々は、全国にどの程度存在するのでしょうか。簡単な分析をしてみました。

保育所が近所にあることの定義

保育園が近所にあることにより、何らかの不利益をこうむる場合保育園ができることは迷惑であるということになります。ここでは、この不利益を、子どもの声・お遊戯音楽等による騒音に的を絞って考えます

資料1によれば、日常生活で「静かだ」と感じるのは45db(デシベル)以下とされています。対して、「うるさい」と感じられるのは、60~70dbを超えたあたりです。70dbはどのくらいかというと、騒々しい街頭やピアノの音にたとえられていますから保育園騒音はだいたいこの程度のものと考えておくと良いかと思います。また、同資料による「音の距離減衰」をみると、70dbの音源からだいたい50mほど離れれば、静かだとされる45db以下におさまることがわかります騒音防止法の規定により、そもそも保育園で何らかの防音対策を試みているものと考えられますが、ここでその対策無視すると、少なくとも保育園から半径50mの範囲内では騒音による何らかの影響を受けやすいと考えることができます。本分析では、多めに見積もって保育園から半径100m(約0.03平方キロ)の範囲を「保育園が近所にある」状態と考えることにします。

日本にある保育所の数

資料2(厚労省調査)によれば、全国に公営私営を含めた保育所は22,992件あります

半径100m内の人口密度

日本人口(およそ1億3千万人)を総面積(およそ38万平方キロ)で割った人口密度(約340人/平方キロ)に0.03平方キロをかけると半径100mあたりの人口10.18人)が算定できます

これに日本保育所数を乗ずると、保育所の近所にいる人口は約23万人となります。これを日本人口に対する割合で示すと約0.18%となります

都市部限定した場合

この計算では、保育所を新設するにあたり十分なスペースを確保できる(つまり実質的保育所騒音影響が無視できる)いわゆる過疎地についても考慮に入れてしまっているため、上と同じ計算を密集地域である東京都指定都市(※)に限定して行った場合保育所の近所にいる人口は約91万人と計算できます。これを日本人口にたいする割合で示すと約0.7%(当該地域人口比に対する割合は約2%)となります。こちらのほうがより実態に近い数字と言えるでしょう。

簡単な四則演算に基づいたもので、実際の数値とは乖離が認められると思いますが、それでも当初言及した「保育所が近所にある状態経験している人々」は、どれだけ多く見積もっても日本人口に対してたかだか一桁パーセントしかないことがわかります保育所に類する存在である幼稚園を含めても、一桁パーセントからそこまで大きなずれはなさそうです。

6%の内訳を知り得ない以上、保育所の近所に住んだことのある人の多くが保育所迷惑さを感じていると簡単に結論づけることはできませんし、それが本エントリー趣旨というわけでもありません。しかしながら、「迷惑たりうる事象経験した可能性のある人口」が全体の数パーセントである限り、この世論調査ほとんど意味をなさないのではないかと思います

そもそも環境権騒音から守られる権利を含む)は国民権利としてひとしく認められるものであり、多数決的に解決されるものではありません。保育所迷惑がり建設に反対する人々のなかには、もちろんノイジーマイノリティというか、理不尽に声を荒げるような人もいるにはいると思います。その一方で本当に保育所存在騒音に対する無対策特定の人々に身体的・心理的な苦しみを与えうる可能性は排除できません。こういった人々が存在する限り、保育所を望む人々がいるからといって何らの検討なく設立してよいという結論にはなりません。(もちろん、逆に保育所をこれ以上増やすべきではないという結論もあってはなりません。)

権利権利対立は、そう容易な善悪対立として解決できるものではないので、メディア中の人は地に足つけてじっくりとものを考えて、慎重な報道をしてほしいです。

資料1: http://www.toho-seiki.com/info04_e.htm

資料2: 平成26年社会福祉施設等調査http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001141016&disp=Other&requestSender=dsearch

※「指定都市」の定義資料2に基づくもの札幌仙台さいたま千葉横浜川崎相模原新潟静岡浜松名古屋京都大阪、堺、神戸岡山広島北九州福岡熊本)。

なお、計算中の各人口・面積等の数値は以下資料を用いた。

住民基本台帳に基づく人口人口動態及び世帯調査 2014年

https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001119758&disp=Other&requestSender=estat

 
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