はてなキーワード: 一六本舗とは
愛媛県人にとって、タルトとは黒くて渦巻き状の紋様を見せるロールケーキに似た菓子のことを指す。
もしあなたが愛媛県人に「タルトの絵を描け」と命じたら、間違いなくそのような物体が描かれるはずだ。
であれば、クッキー風の記事にクリームのフィリングを詰めフルーツや飾りクリームを乗せたあの菓子は愛媛県人の中でどう処理されるのだろうか。
その解は、「そもそも知らない」である。
そう、愛媛県人は、西洋菓子の、いわゆる「タルト」を知らない。
二十代以下であれば八割ほどは知っている。外界への興味が強いからだ。
しかし三十代以上となるととたんに「一般的なタルト」の知名度が下がる。
六十代以上ともなると、「タルト=断面図が渦巻き状の巻物」で概念が固定される。一般的なタルトについて教え込んでも一週間もすれば記憶から消される。タルトは、渦巻きである。
そもそもなんなのか。
愛媛のタルトは「あんこを巻いたロールケーキ」と称されることもあるが、それは正確ではない。
きめ細かく、大粒の砂糖が光る記事。それはロールケーキというよりもカステラのそれに似ている。
あんこは柚子の風味が漂い、メーカーによっては栗が混ぜ込まれる。
たびたび比較される関東の菓子シベリアはあんこ部分が羊羹状となっているが、愛媛タルトはあくまでもあんこはあんこである。柚子フレーバーのあんこである。
昨今ではメーカー間の開発競争の結果、スポンジ生地に「さくら」「抹茶」「ごま」などを練り込んだ季節限定タルトも確認されている。
愛媛県人も所詮は日本国民の一部分でしかないので、季節限定商品には弱いのだ。
スポンジだけでなくあんこにも抹茶が練り込まれ、口に含まれた瞬間に噛みごたえのあるスポンジの甘さと鮮やかに練り込まれたあんこの重い甘み、さわやかな柚子の香り、それらの奥から抹茶の風味が感じられる。
ここまで説明しておいて難だが、愛媛のタルトは愛媛限定商品ではない。
四国四県の土産物屋であればどこでも買えるし、瀬戸大橋を渡った山陽でも買える。山陰で売っているかどうかは知らない。
愛媛県人はタルト(うずまき)の魅力を伝えるため、近隣の県から浸食を始めているのだった。
ここまでタルトについてながながと説明したが、タルトが食べたくなっただろうか。なったよね? なったよね???
しかし、臨場感のある、愛媛感のあるタルト体験を味わえるのはタルト県もとい愛媛県のみである。
ぜひ一度愛媛に遊びに来てほしい。
そしてタルトを味わってほしい。
さっくりした生地にあまーいクリームが詰まりみずみずしいフルーツが乗っているあの菓子ではなく、
ちょっと硬めのざっくりふんわりとしたスポンジ、押し寄せてくるあんこの甘さ、鼻を抜ける柚子の風味。
一六タルトは売れ線であるが、味がジャンクであるという評判もついている。
栗タルトを食べたいならばハタダのものを買うといいだろう栗が大粒であんことスポンジとの調和がとれている。
初心者によく勧められているのは六時屋である。スポンジが柔らかめで、あんこがそこまで主張してこない。やさしいテイストである。
あわしま堂のタルトは食したことがないが、あわしま堂の菓子は美味しいのでタルトもきっと美味しいはずだ。
亀井製菓は変わり種のタルトを数多く製作している。普通のタルトに飽きたらぜひおすすめしたい。
愛媛よいとこ、一度はおいで。
来たらば、レッツタルト。
黒い渦巻きに、あなたはもう抗えない。