一生懸命恋愛しようとした。オシャレの勉強もした。女子が好きそうなカフェも探した。一生懸命LINEのやりとりしたりして、頑張ってアタックした。デートにこぎつけた人もいた。
なけなしの勇気を振り絞って告白もした。だけど、どの人もダメだった。自分を恋人として、異性として見てもらえなかった。
そんなこんなで童貞のまま25になった。
このまま死んでしまうんじゃないか。誰にも求められないまま、誰かと愛し合う喜びを知らないまま、死んでしまうんじゃないか。そんな気がした。一人ぼっちの未来が見えて、苦しかった。
友人に童貞であることを話した。そうしたら、風俗で童貞を捨てることを勧められた。とりあえず、一回女の子の身体を知ることは悪いことじゃないと思う、と言われた。
ものは試しだ。もうこの際、体裁なんて気にしていられない。ともかく、愛し合う喜びを、バーチャルな恋愛ごっこでもいいから知りたいと思った。
Googleで検索して出てきたソープに予約の電話を入れた。年上のお姉さんを指名して、当日をまった。怖かったけど、決めたことだからやりきろうと思った。
当日。東京の某所で待ち合わせて、車でドライバーさんにピックアップしてもらって、吉原の遊郭に行った。
お店に入って、お金を払って、アンケートを書いて、自分の名前が呼ばれるのをまった。
名前を呼ばれて、部屋に行った。
自己紹介をして、自分が童貞であることを、風俗が初めてであることを伝えた。そうしたら、リードしてくれた。どうしたらよいのか、一から丁寧に教えてもらった。
自分で服を脱ぐように言われて脱いだら、今度は、お姉さんの服を脱がせるように言われた。
恐る恐る、お姉さんに触れた。まるでガラス細工に触るかのように。ゆっくり、丁寧に、一枚一枚脱がせた。
下着姿になった。アダルト雑誌の表紙とかでしか見たことがない女性の下着姿。それが目の前にあることが信じられなかった。下着もとってほしいと言われた。
恐る恐る、ブラを外した。パンツも恐る恐る下げた。
お姉さんが裸になった。
美しい、と思った。不思議と興奮はしなかった。ただ、美しいと感じた。女性の身体ってこんなにきれいだったんだって思った。
胸のふくらみも身体のクビレも、局部の花びらも、脚の曲線も、全部が美しくて、愛おしかった。
気がついたら、ベッドでお互い横になって思わず抱きしめあっていた。
キスをした。その優しい微笑みが愛おしくてキスをした。女の人の唇ってこんなに柔らかかったんだって思った。
身体をなでるように触った。胸の膨らみも初めて触った。やわらかくて、すぐにとろけてしまいそうだった。
いい匂いがした。星野源は「くびすじのにおいがパンのよう」と歌ったが、そんな感じだった。甘い、優しい香りだった。
胸をしゃぶった。ガラス細工のように繊細なこの女性を乱暴にしてはいけない、と思った。だから、愛おしむようにしゃぶった。
気持ちよさそうに喘いでくれた。お芝居だったのかもしれないけれど、それでも嬉しかった。
お姉さんは僕の息子に触ってくれた。こんなクソ童貞の局部なんて大した価値もないだろうに、まるで子どもを愛おしむ母のように優しく触ってくれた。
僕の息子をしゃぶってくれた。舌触りでわかる。本当に、大切にしてくれた。とても気持ちがよかった。
綺麗だった。全てを包み込むような、そんな感じがした。
「指をいれてみて」と言った。入れてみたら、中は暖かかった。ここに僕の息子が入るのかと思うと不思議だった。
お姉さんは「舐めてみてほしい」と言ってくれた。やり方がよくわからないから、恐る恐るだったけど、舐めてみた。舌使いは下手くそだったろうけど、できるだけ丁寧に、目の前の人を愛おしむように、花びらが痛くならないように一生懸命舐めた。
「優しくしてくれて嬉しい」と言ってくれた。
僕の息子が勃起して固くなっていたので、「中に入れてみる?」とお姉さんは言った。
本当はそのままの衝動に駆られていれたい気持ちでいっぱいだったけど、星野源が「セックスするときはちゃんとゴムつけろ」って言ってたから、ちゃんとゴムをつけた。
恐る恐るいれた。お姉さんが花びらの奥に導いてくれた。
腰を一生懸命動かしたけど、うまくいかなかったから、お姉さんに動いてもらうことにした。
すごく興奮した。気持ちよかった。一人でしごいていたのなんて、比にならないくらい心地よかった。
動きながら、キスをした。胸のふくらみもなでた。愛し合うってこういうことなんだって実感がもてた。
今までずっと空っぽだった心が満たされた気がした。
興奮が最高潮に達して、イッた。お姉さんの中に(いや、厳密にはゴムの中にだけど)僕の白いカルピスが出てきた。
イッたあとにお姉さんが察してか、キュって締め付けてくれた。僕の息子のカルピスを求めるかのように。
カルピスが出終わった時、お姉さんの外に出た。
「たくさん出たね。興奮してくれたんだね。ありがとう。」と言ってくれた。
またキスをした。バーチャルな恋愛なのはわかっている。わかっているけれど、目の前の人が愛おしくてキスをした。
「ありがとう」と僕も言った。
その後も、あんなことやそんなことをしながら、イチャイチャしてすごした。愛し合って、お互いを愛おしんだ。
終わってほしくなかった。こんなにも愛しあった人と離れてしまうのが苦しかった。
手を繋いで出口にむかった。
「初めての体験に私を選んでくれてありがとう。優しくしてくれてありがとう。」とお姉さんはいってくれた。
「僕の初めてになってくれてありがとう」と僕は言った。
そして別れた。
自分の人生で一番濃密な100分だったかもしれない。こんなにも愛おしい気持ちになったのは初めてだと思う。
バーチャルな恋愛ごっこなのはわかっている。だけど、間違いなく愛し合っていた。求めあっていた。本当の恋人と求め合うのはこんな感じなのかなと思った。
そうして、僕の100分間は終わった。
そして日常へと帰った。
これからどうしたらよいのか、わからない。だけど、一度でも「愛し合う」という経験をしたことは無駄じゃないと思った。
世の中の童貞諸君。一度、体験するのは悪くないと思いますよ。僕はバーチャルな恋愛ごっこであっても、「愛し合う」という行為は尊いものだと思った。
今は恋がしたい。バーチャルなものじゃなくて、本当の恋。そうして、本当に好きな人と肌を重ねたいと思った。
できるかな。できたらいいな。
底辺高齢童貞が底辺高齢前科者童貞へとより終わったゴミに進化できたようでなにより。
いいなあああ 初めての体験にケチらなくて正解だったよ。 安いところだと、おばさんが出てきて 「なんだ、こんなのか、べつに恋愛なんていいや」 ってなったと思う。 ほんとにその辺...