2017-03-31

[] #20-2「帳尻クッキング

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我が家食卓では、料理ほとんど具たくさんである

なぜなら食材中途半端に余らせたくないので、一回の食事で使いきろうとするからだ。

このせいで汁物は、むしろ煮物といった様相を呈することもしばしばある。

かといって食材を余らせても、冷蔵庫の中で眠るのがオチだ。

それを何か上手いこと別の料理に使えばいいと思うかもしれない。

だが、我が家にどんな食材が余っているか把握し、それを献立にどう捻じ込むか、といったことを要求するのは酷というものだ。

じゃあ、この冷凍された野菜はその名残なのかというと、ちょっと事情が異なる。

もとから保存前提で加工されたものなのだ


料理好きを自称するタイナイが言っていたことだが、「野菜は大量に買って加工だけしておき、後は冷凍しておけば利口」らしい。

やたらと熱弁するのでやってみたのだが、そもそも俺とタイナイでは“前提”が違う。

料理好きな輩の言う利口な、上手い料理法ってのは、他人環境スペックライフスタイルを一切考慮しないからアテにならないのだ。

だがタイナイだけではなく、俺もその“前提”の重要性をまるで分かってはいなかったのだからお互い様である

こうして冷凍した野菜活用の機会に恵まれず、冷凍庫に眠り続けた状態だった、というわけだ。

だが、今こそ本領を発揮するときだ。

俺は、スープ野菜冷凍したまま入れた。

解凍したら水分と一緒に野菜の旨味的な成分が出て行ってしまうと、どこかで聞いたのを思い出したからだ。

このスープだけでは食べられたものではないので、野菜から滲み出る成分に期待しようという算段だ。

しかし、思っていた以上に野菜が多く、鍋から溢れそうだ。

仕方がないので大きい鍋に移し、更に追加でコンソメと水を投入する。

すると、スープだけでお腹一杯になりそうな量になってしまった。

不味かったら大事だぞ、これは……。

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